抄録
乳児白血病が, 胎生期にMLL遺伝子が変異を受けておこる可能性が示唆されている.今回われわれは, 九州地区における1990~1994年の乳児白血病の実態と母親の妊娠中の危険因子を検討した.また比較のため, 京都地区と北海道でも調査を行った.九州地区における小児白血病に対する乳児白血病の割合は7.5%で, ALLでは5.0%, AMLでは13.1%であった.またその頻度は乳児10万人につき3.96人であった.日本における他の地区では, 乳児白血病の割合は北海道では6.9%と, 九州地区と差がなかったが, 京都地区では全体で12.8%, ALL9.4%, AML22.7%と高かった.また乳児白血病の頻度も乳児10万人につき5.60人で, 他の地区より高頻度であった.九州地区の乳児白血病38例の解析では, 11q23/MLL異常を認めた症例は1例を除き, 全例10カ月以下の乳児であった.11q23/MLL異常を認めたALLは予後が不良であった.妊娠中の危険因子の解析では母親の職業および父親の職業歴のオッズ比が有意であった.一方, 乳児白血病の頻度が高かった京都地区では, 母親の感染歴や漢方使用, 喫煙歴のある症例が多かった.以上より, 乳児白血病は妊娠中の複数の危険因子による被曝, 特に有機溶媒, 抗生剤や漢方, 放射線などの被曝により発症する可能性が示唆された.