日本小児血液学会雑誌
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寛解導入療法中にall-trans retinoic acid (ATRA) による頭蓋内圧亢進症状 (pseudotumor cerebri) を呈した急性前骨髄球性白血病 (APL) の1男児例
海老原 康博田中 竜平村岡 健司梅本 有美辻浩 一郎中畑 龍俊
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1997 年 11 巻 6 号 p. 445-449

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抄録
All-trans retinoic acid (ATRA) による寛解導入療法中に頭蓋内圧亢進症状を呈した急性前骨髄球性白血病 (APL) の1男児例を報告する.症例は12歳男児.貧血, 血小板減少を主訴に入院.入院時骨髄検査で異常前骨髄球の増加およびPML-RARαキメラmRNAの存在によりAPLと診断され, ATRA45mg/m2/dayの投与を開始した.DICの合併が認められた.入院2日目に激しい頭痛・頻回の嘔吐が出現したため, 頭蓋内出血を疑ったが, 頭部CTでは所見は認められなかった.以後もATRA投与後に同様の症状が出現したが, 濃厚血小板輸注時にアレルギー予防の目的でハイドロコーチゾンを使用したときに頭蓋内圧亢進症状が著明に改善されることが判明したため, 今回のエピソードはATRAの副作用のpseudotumor cerebriであると考え, 以後, 予防的にプレドニンの投与を行い, 症状は消失した.ATRAのdose limiting factorであるpseudotumor cerebriのコントロールにステロイド剤の併用は有用であり, APLのATRAによる寛解導入療法にとって, ステロイド剤を併用することは有効な治療戦略になるのではないかと考えられた.
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