日本小児血液学会雑誌
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肝腺腫を発症した再生不良性貧血の2例
和田 恵美子後藤 佳子田村 まり子加藤 文代鶴田 敏久村田 光範
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2001 年 15 巻 3 号 p. 178-186

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抄録

蛋白同化ステロイド (AS) により誘発された肝腫瘍の2例を報告した.症例1は20歳男性.13歳のとき重症再生不良性貧血の診断をうけ, オキシメトロン (OXY) の投与をうけた.約6年後, 肝内に多発性腫瘤を認めた.OXYの総量は125gであった.薬剤中止により, 腫瘤は消失または一部退縮したが, 敗血症のため死亡した.部検により肝腺が確認された.症例2は22歳男性.6歳時再生不良性貧血と診断され, OXYの投与をうけた.約14年後の腹部超音波検査にて, 肝左葉のモザイク様変化と右葉に2個の腫瘤を認めた.OXYの総量は226gであった.肝生検にて肝腺腫が疑われた.薬剤の中止により退縮傾向にある.同胞ドナーから骨髄移植を行い, 血液所見も回復した.ASによる肝腫瘍発生例のおもな死亡原因は, 敗血症と出血および腫瘍破裂であった.画像検査にて経過観察するとともに, 薬剤中止後の原疾患のコントロールが重要である.

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