抄録
症例は在胎36週3日, 日齢43男児で, 両親はバングラデシュ人.重症感染症で入院したが, 抗生剤等の治療により改善した後にも小球性低色素性貧血が進行し, 日齢48にはRBC265×104/dl, Hb6.6g/dl, Ht 19.6%, MCV 74.0fl, MCH 24.9 pgとなった.出生時よりRBCは小球性低色素性 (MCV 94.0H, MCH 30.8pg) であり, 母親も小球性低色素性を呈していた.βグロビン鎖遺伝子の遺伝子解析の結果, codon26でGAG (Glu) がAAG (Lys) に置換されていることが判明し, ヘモグロビンE症 (HbE症) と診断された.母親にも同様の遺伝子置換がみられた.HbE症は東南アジアに多く認められるヘモグロビン異常症であり, 近年同地域からの在日外国人も多く, 貧血の診断には人種的考慮が必要であると思われる.