日本小児血液学会雑誌
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15 巻, 5 号
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  • 中野 重行
    2001 年 15 巻 5 号 p. 345-351
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 松崎 彰信, 岡村 純
    2001 年 15 巻 5 号 p. 352-366
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    予後因子による患児の層別化とリスクに応じた治療強度の選択により, 小児急性リンパ性白血病 (ALL) では70%以上, 急性骨髄性白血病 (AML) でも50%前後の患児において長期生存が可能となった.しかし, ALLでは低危険群の約15%は再発し, 超高危険群であるPhl陽性ALLの一部は化学療法のみで治癒するなど, 従来の予後因子では十分に説明できない要素も残されている.最近, 初期治療に対する反応性や治療開始後の微少残存病変 (MRD) の測定によって, より正確な予後予測が可能になりつつある.一方, AMLでは染色体異常の有無が最大の予後因子であり, t (8;21) やinv (16) を有する症例では造血幹細胞移植を回避し, 晩期障害を軽減することが可能となった.今後は, 薬剤感受性や遺伝子多型による薬物動態の個人差, 白血病に特異的な発現を示す遺伝子の同定などにより, 予後をさらに正確に予測し, より個別化された治療法が選択されるであろう.
  • 廣田 貴久, 藤本 孟男, 岩田 敦子, 堀 壽成, 松下 竹次
    2001 年 15 巻 5 号 p. 367-371
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性リンパ性白血病の維持療法に6-mercaptopurine (6-MP) は必須の治療薬である.今回われわれは, 6-MP投与量を175mg/m2/日5日間から250mg/m2/日5日間に増量し, その臨床的検討を行った.経口6-MP 175mg/m2/日投与はCCLSG ALL874,911研究で治療した10例, 6-MP 250mg/m2/日投与はCCLSG ALL 941研究で治療した9例である.2群で投与後の白血球数, ヘモグロビン値, 血小板数に差はみられなかった.6-MP 250mg/m2/日投与例にGPT値が有意な上昇がみられたが, 予定治療の遷延傾向は認めなかった.またGPT値の上昇は6-MPの治療を繰り返すごとにピーク値の低下傾向がみられた.6-MP投与量を175 mg/m2/日5日間から250mg/m2/日5日間に増量しても副作用の増強はなく, 耐えうる投与量と考えられた.
  • 治療終了後の身長・体重の推移
    廣田 貴久, 鶴澤 正仁, 藤本 孟男, 小泉 晶一, 浅見 恵子, 駒沢 勝, 百名 伸之, 松本 和博, 関根 勇夫, 西川 健一, 柳 ...
    2001 年 15 巻 5 号 p. 372-376
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    治療終了1年以上初回完全寛解を維持している小児急性リンパ性白血病215例 (男児140例, 女児75例) の成長障害について検討した.平均初発年齢は4.2歳, 観察期間は平均6.0年で, 治療は小児癌・白血病研究グループALLプロトコールに準じて行った.成長障害は, 身長および体重を診断時から治療終了10年目まで観察し, 標準値からZscoreに変換し検討した.身長は治療終了時は-0.36 SD, 終了5年目で-0.59 SDであった.治療終了7年目の身長は男児で0.16SDに対し, 女児は-1.32 SDと抑制を認めた (p<0.01).体重は治療終了時は0.36SD, 5年目で-0.36 SD, 肥満が治療終了時7.9%に認めた.頭蓋放射線照射と成長障害の関係は認めなかった.急性リンパ性白血病患児では治療終了後, 女児に低身長を認めた.
  • 大平 睦郎, 花田 良二, 西平 浩一, 松山 孝治, 河 敬世, 河野 嘉文, 岡村 純
    2001 年 15 巻 5 号 p. 377-387
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児がん患者15例における造血幹細胞移植時の前処置として, L-PAM注射用剤単独または全身放射線照射 (TBI) を併用した場合の有用性を検討した.骨髄生着は, 有効性評価対象14例全例に認められ, 生着日の中央値は16日 (11~67日) であった.抗腫瘍効果の評価対象5例の奏効率は, 著効 (CR) 1例, 良好部分寛解 (VGPR) 1例, 部分寛解 (PR) 1例, 不変 (NC) 2例で, 60% (3/5) であった.副作用は, 15例全例に認められ, その主な症状は, 下痢86.7%, 口内炎・粘膜炎80.0%, GOT・GPT上昇66.7%および悪心・嘔吐53.3%であった.急性移植片対宿主病 (GVHD) は同種骨髄移植を行った7例中3例 (42.9%) に発現したが, 慢性GVHDは観察されなかった.感染症あるいは感染症の疑いは86.7% (13/15) に発現した.移植関連死および重篤な有害事象はなかった.死亡は4例に認められ, その死因は, 原病悪化が3例, 敗血症・DIC (播種性血管内凝固症) が1例であった.Kaplan-Meier法にて推定した3年生存率は (観察期間中央値 : 1,135日) 71.4%であった.以上のことから, 本剤は造血幹細胞移植時の前処置剤として有効であり, 忍容性は比較的良好であることが示唆された.
  • 太田 秀明, 金 智裕, 澤田 明久, 時政 定雄, 藤崎 弘之, 松田 佳子, 大杉 夕子, 原 純一
    2001 年 15 巻 5 号 p. 388-395
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    同種造血幹細胞移植後の生着不全は, しばしば致死的となる重大な合併症である.免疫抑制を強化しての再移植を必要とするが, 非血縁者間移植や臍帯血移植後の自己造血を伴わない早期の生着不全では, 同一ドナーからの再移植は困難であり, 緊急を要する問題である.本論文では, 当施設で経験した再移植症例を検討した.1995~2000年に7例の生着不全に対し再移植を施行した.5例は非悪性腫瘍患者で, うち1例は頻回の輸血歴のある重症再生不良性貧血の患者であった.生着不全は, 6例が早期で, 1例が晩期 (晩期拒絶) であった.血縁者間移植後の4例は, 同一ドナーから再移植を行った.非血縁者間移植後の3例 (うち2例は臍帯血移植後) では, HLA2座あるいは3座不一致の血縁ドナーから再移植を行い, うち2例ではCD34陽性細胞末梢血移植を施行した.再移植時は, 主として全身放射線照射あるいはHudarabineを用い, 前処置を強化した.頻回輸血歴のある再生不良性貧血1例を除く6例で生着が得られた.結論として, 1) 生着不全に対して再移植は有効であった.2) 全身放射線照射あるいはHudarabineは再移植時の免疫抑制に効果的であった.3) 非血縁者間移植後の生着不全に対して, HLA不一致血縁ドナーからのCD34陽性細胞移植は有用であった.
  • 照井 君典, 小友 勇人, 北澤 淳一, 池田 保彦, 伊藤 悦朗
    2001 年 15 巻 5 号 p. 396-400
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病 (ALL) の15歳男児に対し, 第3寛解期に, 抗胸腺細胞グロブリンを含む前処置を用いて, HLA血清型一致, 遺伝子型2座 (B, DRB1) 不一致非血縁者間骨髄移植を行った.移植後59日に真菌性敗血症, 68日に皮膚の急性移植片対宿主病 (GVHD) を合併し, その後肝脾腫, 浮腫, 75日に頸部腫脹と喉頭浮腫による呼吸困難が出現した.単クローン性のEpstein-Barrウイルス (EBV) 関連リンパ増殖性疾患 (LPD) と診断したが, 急性GVHDの増悪のため, ステロイド剤の継続を余儀なくされた.アシクロビル, γ-グロブリン大量療法, ドナーリンパ球輸注は無効で, 移植後92日に敗血症のため死亡した.剖検にて広範な組織にリンパ腫細胞の浸潤を認めた.LPDには急速に全身に播種する例があるため, LPD発症のハイリスク例では, 末梢血中EBVゲノム量のモニタリングを行い, LPDの早期診断, 早期治療に努める必要があると考えられた.
  • 久保田 優, 濱畑 啓悟, 渡邊 健一郎, 林 英蔚, 宇佐美 郁哉, 中畑 龍俊
    2001 年 15 巻 5 号 p. 401-404
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血に全身の色素沈着を伴った12歳男児例を経験した.患児はビタミンB12の皮下注を受け, 貧血は約8カ月で軽快した.皮膚の色素沈着も徐々に軽快傾向を示し, 3年の経過でほぼ完全に消失した.自己免疫疾患や内分泌疾患の合併はみられず, 色素沈着はビタミンB12の欠乏によると考えられた.色素沈着は成書にも記載のないビタミンB12欠乏巨赤芽球性貧血のきわめて稀な合併症である.患児のように易疲労感を訴え色素沈着を呈する患者では, ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血をも考慮に入れて, 早期に血液検査を実施する必要がある.
  • 川畑 建, 浅野 健, 藤田 敦士, 早川 潤, 植田 高弘, 右田 真, 前田 美穂, 太田 美紀, 松岡 和彦, 福永 慶隆
    2001 年 15 巻 5 号 p. 405-408
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は11歳男児.左鼠径部に径6cmの腫瘤を認めたため入院となった.各種画像検査にて腹腔内リンパ節腫大も認められたが, 横隔膜より上部のリンパ節の腫大は認められず, 発熱, 盗汗, 体重減少などのB症状もみられなかった.生検によりホジキン病, 結節硬化型と診断した.わが国の悪性リンパ腫は, ホジキン病の割合が少なく, さらに鼠径部リンパ節腫脹で発見される例はまれである.文献的考察を含め, 報告する.
  • 中村 昌徳, 天野 功二, 寺島 慶太, 高嶋 能文, 堀越 泰雄, 三間屋 純一
    2001 年 15 巻 5 号 p. 409-412
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    わが国では小児のHodgkin病 (HD) の発症頻度が低く, 治療法は統一されていない.1984~2000年までの17年間に当院で治療したHD7例の臨床経過および治療成績を検討した.発症年齢は中央値7歳5カ月 (3歳6カ月~13歳9カ月), 男女比は6対1であった.臨床病期は限局例が5例, 進行例が2例であり, 病理組織診断はリンパ球優勢型が4例, 混合細胞型が3例であった.初期の3症例はCOPP療法を第一選択とし, 放射線照射を併用した.治療中2例に重篤な感染症を合併した.後期の4症例はABVD療法単独で治療した.治療中に重篤な合併症はみられなかった.7例全例に晩期障害を認めず, 再発もなく無病生存中である.小児のHDに対する治療法としてABVD療法は副作用も少なく, より適切な方法であると思われた.しのかし今後さらに多数例での検討が必要であり, そのためにも全国規模の多施設共同研究が必要であると思われた.
  • 松平 朋代, 水嶋 一惠, 柴崎 三郎, 多田 達史, 今井 正, 伊藤 進
    2001 年 15 巻 5 号 p. 413-416
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は在胎36週3日, 日齢43男児で, 両親はバングラデシュ人.重症感染症で入院したが, 抗生剤等の治療により改善した後にも小球性低色素性貧血が進行し, 日齢48にはRBC265×104/dl, Hb6.6g/dl, Ht 19.6%, MCV 74.0fl, MCH 24.9 pgとなった.出生時よりRBCは小球性低色素性 (MCV 94.0H, MCH 30.8pg) であり, 母親も小球性低色素性を呈していた.βグロビン鎖遺伝子の遺伝子解析の結果, codon26でGAG (Glu) がAAG (Lys) に置換されていることが判明し, ヘモグロビンE症 (HbE症) と診断された.母親にも同様の遺伝子置換がみられた.HbE症は東南アジアに多く認められるヘモグロビン異常症であり, 近年同地域からの在日外国人も多く, 貧血の診断には人種的考慮が必要であると思われる.
  • 柳 貴英, 高橋 浩子, 加藤 博文, 成田 努, 鈴木 淳史, 太田 茂, 笹原 彰子
    2001 年 15 巻 5 号 p. 417-421
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性骨髄単球性白血病 (AMMoL) の治療経過中に白血病細胞の前房浸潤をきたした乳児の症例を経験したので報告する.5カ月女児, 上気道炎様症状を主訴に来院した.骨髄検査にてAMMoLと診断し, 寛解導入療法を行ったが, 寛解を得ることはできなかった.その後両眼に前房蓄膿が出現し, 前房穿刺により白血病細胞の浸潤と診断された.眼球に対する放射線照射を行い, 前房蓄膿は軽快した.治療経過中, 脳脊髄液検査上, 中枢神経系への白血病細胞の浸潤を認めなかった.しかしながら, 父親からのハプロタイプ一致選択的CD34陽性細胞同種末梢血幹細胞移植後も骨髄の寛解は得られず, 2回目の移植後4日目にthrombotic microangiopathy (TMA) によると思われる腎不全, 肝不全により死亡した.AMMoLによる前房蓄膿の合併症は非常にまれであるが, 白血病治療中の乳幼児においては定期的な眼科的検索が必要と考えられた.
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