抄録
輪血歴のある小児血液・悪性腫瘍疾患患児130例についてOrtho社のHCV抗体ELISA systemを用いてHCV抗体価を測定し, 陽性例23例 (17.7%) について臨床的に検討した.11例 (8.5%) はHCV抗体が8から18ヵ月間持続的に陽性を示し, 肝障害は慢性に経過し, 初回の輸血後, 3-56カ月のうちに非A非Bに罹患していた.他の12例は経過観察中にHCV抗体が陰性化し, 肝障害も一過性であった.前者の11例はC型肝炎と診断したが, 後者の12例のHCV抗体は臨床経過から偽陽性の可能性も考えられた.HCV抗体持続陽性例の2例では化学療法により肝障害が軽快し, その内1例でHCV抗体の陽性化が肝炎発症後28ヵ月と著しく遅延した.これらの結果から輸血歴を有する血液・腫瘍疾患患児ではC型肝炎のリスクが高く, 治療による免疫抑制が肝機能の一時的な正常化やHCV抗体の出現の遅延などC型肝炎の自然経過を修飾する可能性が示唆された.