薬学教育
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実践報告
薬学生における微生物学実習の技能習熟度と座学科目への興味に対する実習の効果
市川 智恵湯本 哲郎小田中 啓太木村 聡一郎石橋 芳雄
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電子付録

2026 年 10 巻 論文ID: e10001

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抄録

本学の微生物学実習は,薬学教育モデル・コアカリキュラム(コアカリ)平成25年度改訂版におけるSBOsの「技能」項目に,大学独自の項目を加えて作成されたカリキュラムである.そこで本稿では,学生の技能習熟度および実習が座学科目へ与える影響を調べ,令和4年度改訂コアカリ下でも本実習が適するか検討した.微生物学実習後の学生に対して質問紙調査を行い,学生は技能項目の習熟度の申告とともに実習への取り組み姿勢や実習の感想などを回答した.その結果,およそ9割以上の学生が,コアカリの「技能」項目を補助があれば1人でできる程度に習得できていることが明らかとなった.また67.8%の学生が実習後に座学科目に対する興味が増加していた.本研究から,現行の実習内容は薬学生に必要な内容を網羅しつつ学修にはポジティブな影響を与えていることが示され,改訂コアカリ下においても十分に有用な実習であると考えられた.

Abstract

Our university’s microbiology laboratory (lab) course is designed by incorporating institution-specific items into the “skills” component of the 2013 revised version of the Model Core Curriculum for Pharmacy Education (MCC). This study aimed to evaluate whether the current practical training remained effective for students following the 2022 revision of the MCC. After completing the course, students participated in a questionnaire survey to assess their perceived proficiency in the skill items, their engagement during the practical, and their overall impressions of the experience. The results showed that approximately 90% of students were able to master the “skills” items from the 2013 revised version of the MCC to a level that enabled them to perform the practical tasks independently, with minimal assistance. Additionally, 67.8% of students reported an increased interest in their classroom courses after the lab activities. These findings supported the hypothesis that the current microbiology labs adequately addresses all essential requirements for pharmacy students while fostering greater interest in classroom learning. Therefore, the practical lab training remains a valuable component of the curriculum under the revised MCC.

 序論

わが国では,6年制薬学教育において卒業時までに学ぶ薬学の知識や技能を修め,薬剤師として社会で活躍できる能力の修得を目的に薬学教育モデル・コアカリキュラム(コアカリ)が作成されている.コアカリは平成25年に改訂されたのち,令和4年にさらに改訂され現在に至る.平成25年度版では「基本的な資質」を身に付けるための一般目標(GIO)と,GIOを達成するための到達目標(SBO)が明示され,「知識」・「技能」・「態度」といった評価項目も示されていた1).技能が付されている項目は,知識や態度は当然含まれるが,技能が主に評価の対象となる項目であった.令和4年度改訂版では,各大学の責任あるカリキュラム運用のための自由度の向上が掲げられ,平成25年度改訂版で網羅的に記載されていたGIO-SBOsが概念化した学修目標に改められるとともに,「知識」・「技能」・「態度」の項目も廃された2,3)

湘南医療大学(以下,本学)薬学部では,微生物学とその関連科目は第2,3,6学年と複数の学年にわたって段階的に行われる.微生物学は第2学年前期・後期にそれぞれ微生物学IおよびIIが,免疫学は第2学年後期・第3学年前期にそれぞれ免疫学IおよびIIが開講されている.また,微生物学実習は,座学科目である微生物学I・II,免疫学I終了後の第3学年前期に実施される.

本学の微生物学実習は,コアカリ平成25年度改訂版におけるSBOsの「技能」項目を満たすように作成されたカリキュラムである.さらに本学では,薬剤師としての研鑽継続の基盤形成に必須と考えられる項目(医療現場で必要となる抗原検査や薬剤感受性試験など)も独自に盛り込んでいることから,本学実習はコアカリ令和4年度改訂版に基づき実習を行う学生にとっても有益な実習内容であると考えられる(図1).しかしながら,本実習で行う技能の習得の程度や,実習参加が学生の学修へ与える影響については本学ではこれまで解析されていなかった.コアカリ令和4年度改訂版に準拠して実習を行う学生に対しては大学独自のカリキュラムを増やすことも可能であるが,その一方で,SBOsで示された技能には,独自項目を行う上でも必要な技能が複数含まれる.また,コアカリ令和4年度改訂版で示される「学修事項」の各項目は実習を必須としないものの,総合的な学修を進めるには,実習と座学科目の学修が相乗的な効果を与えることが望ましい.そこで本研究では,微生物学実習後の学生に対し技能習熟度,ならびに学修効果について質問紙調査を行い,実習後の座学科目への興味の変化を解析した.

図1

コアカリ平成25年度改訂版における微生物学分野の技能項目と微生物学実習項目.A:本学微生物学実習に該当するコアカリ平成25年度改訂版の技能項目(左)と,それに相応するコアカリ令和4年度改訂版の学修事項(右).C-6-3は全項目を示した.B:本学の微生物学実習項目.太字は微生物学分野の技能項目を,下線を付与した項目は免疫学あるいは衛生分野の技能項目を示す.実習内容のうち,太字・下線以外の項目は SBOには対応あるが技能項目には該当しない大学独自の項目である.

 方法

1. 質問紙調査

本学薬学部医療薬学科において,2024および2025年度第3学年前期に行った微生物学実習試験の後にマークシート方式による質問紙調査を行った.各設問の概要を図2に示す.座学科目である微生物学IおよびIIの成績との関連を解析することから,本論文では実習本試験を受験後に学籍番号を記載して質問紙調査に回答した学生のうち,その前年度(それぞれ2023あるいは2024年度)にあたる第2学年前期・後期にそれぞれ微生物学I・IIの定期試験(本試験)を受験した学生を解析対象とした.

図2

質問紙調査の項目の概要.全17問についてマークシートにより回答を得た.問9~13の技能項目のうち,問9~12がコアカリ平成25年度改訂版の技能項目に該当する.*:どちらでもないを中間とした5段階の尺度の選択肢をもつ設問.

成績には,微生物学I・IIで行った定期本試験の総合点に基づいた学年順位を用い,同一点数の場合は同一の順位とした.成績上位群を上位から30%未満,成績下位群を下位から30%未満,その他を成績中間群とし,質問紙調査の結果と層別成績を比較した.

本研究は本学倫理委員会の承認を得て行われており,学生には参加は任意であること,成績には影響しないことなどを口頭で説明の上,説明文書を開示してオプトアウト方式で同意を得て行われた(医大研倫第24-002号,24-049号).質問紙調査の回答と層別成績の連結と匿名化は実習には関与しない微生物学分野以外の教員が行った.

統計解析にはJMP(SAS Institute Japan株式会社)を用い,成績順位および各質問回答間の相関はSpearmanの順位相関係数(ρ)を算出した.実習後の座学科目への興味の増減を目的変数とし,順序ロジスティック回帰分析により各要因の寄与度を導出した.回帰分析には無回答・誤回答のあった学生は除外して解析した.各統計の有意水準はP < 0.05とした.

2. 実習項目

実技項目(問9~13)の実施内容は以下の通りである.2024年度は1班あたり6人,2025年度は1班あたり7~8人の学生で実施した.問9のグラム染色では,プレパラートの作製は各人で行い,染色工程は複数人で分担して実習期間内に5回実施した.問10の培地作製では,10枚の平板培地を作製する実験を班で1回実施した.操作は班員で分担・交代して実施した.問11の細菌・真菌の分離培養では,画線培養によるコロニー分離実習として,各人が実習期間内に2024年度は6回,2025年度は7回行った.問12の細菌の同定は,「手指から分離される黄色ブドウ球菌の同定」,ならびに「患者検体を模した試料由来の細菌の同定」の両実習項目が該当した.前者では各人が手指から細菌を分離し,ブドウ球菌が観察された学生は黄色ブドウ球菌の同定実験を行った.後者では,各人が1菌種を同定し,班として3菌種に対する同定手法と結果を共有する内容であった.問13の真菌の同定は2024年は3人グループで2菌種の同定を,2025年は3~4人グループで3菌種の同定を分担して行う内容で実施した.各人で行う実験以外の操作は班員で分担して行った.班内での分担については教員から大まかな指示は与えるが,分担の程度や交代の頻度は学生間で相談して決定された.

 結果

1. 座学科目試験順位と実習試験順位との相関

実習後に実習本試験を受験し,氏名を記載してアンケートに回答した学生のうち,実習前年度の微生物学IおよびIIの定期本試験を受験した学生は115名で,該当者の全員から回答を得ることができた.内訳は,2024年度履修学生50名,2025年度履修学生が65名である.各学年で試験内容が異なることから,同一学年内で順位を付け,その順位を使用して成績を層別化した.座学科目である微生物学I・IIの本試験総合点数をもとに算出した学年順位と実習試験の学年順位に対してSpermanの順位相関係数を求めた結果,相関係数は0.6794(P < 0.001)で良い相関を示した.

本研究では,個人が特定されないようアンケート結果には座学科目の層別成績を付与して解析した.各年度で成績上位群を1(上位30%未満),成績中間群を2,成績下位群を3(下位30%未満)として3群に分類した.上位群および下位群は各33名,中間群は49名であった.

2. 実技項目の習熟度

図2に設問の概要を,付表1に全設問と回答者数(%)を示す.選択肢に対する回答者の比率(%)は無回答および誤回答も含めて算出した.全17問のうち,問9から問13までの5項目が実技の習熟度に関する自己判定の項目である.そのうち問9から問11までの3問がコアカリH25改訂版における微生物学の実技項目に該当する.問12は,薬学アドバンスト教育ガイドラインにおいて,C8生体防御と微生物の【⑤検出方法】で技能項目として示されている「代表的な細菌を同定できる.(技能)」に該当する4).問13は真菌の同定技能に関する内容であり,コアカリの範囲には入らないが,問12の発展内容として質問項目とした.

各技能を「一人で行える・補助があれば一人で行える」すなわち1人で実施できると回答した学生は,問13は85.2%であったものの,コアカリH25年度改訂版の技能項目4項目は89.6%から96.5%であった(表1).

表1

技能項目の習熟度

技能項目:人数(%),n = 115
問9 問10 問11 問12 問13
グラム染色 培地作製・無菌操作 菌の分離培養 細菌の同定 真菌の同定
1人では実施できない 選択肢 1.全く覚えていない 0 0 1(0.9) 2(1.7) 1(0.9)
選択肢 2.よく覚えていない 4(3.5) 9(7.8) 11(9.6) 10(8.7) 15(13.0)
1人で実施できる 選択肢 3.補助があれば1人で行える 39(33.9) 59(51.3) 47(40.9) 57(49.6) 62(53.9)
選択肢 4.1人で行える 72(62.6) 47(40.9) 56(48.7) 46(40.0) 36(31.3)
誤回答 0 0 0 0 1(0.9)

3. 5段階評価で回答を得た実習・座学への関心に関する項目

問1「実習前の得意・苦手意識」,問2「実習への積極性」,問3「座学 “微生物学” への積極性」,問4「座学 “免疫学” への積極性」,問14「実習の楽しさ」,問15「実技試験の実施希望」,問16「実習後の座学に対する興味の増減」について回答比率を図3に示す(無回答・誤回答は%の算出には使用されているが,図には示されていない).実習前には微生物学実習に対し苦手意識や不安などネガティブな印象を持つ学生も41.8%と多かった一方(問1),実習には67.0%が積極的・どちらかといえば積極的に参加した学生が多く(問2),実習に対して得意・楽しいと感じた学生が多いことも示された(問14).問3・問4で示されたように,第2学年に受講した微生物学・免疫学の授業には消極的な学生が多く,関連科目ではあるものの座学と実習とでは積極性が異なることも明らかとなった.実技試験を望む学生は約3割であった.最もポジティブな回答が多かったのが問16の「座学への興味の増減」で,実習後に微生物学や免疫学の座学科目に対しても「興味が増加した・どちらかといえば増加した」と回答する学生が67.8%であり,実習が座学科目へ良い影響を与えていることが示された.

図3

実習・座学への関心に関する項目(%, n = 115).問1,2,3,4,14,15,16に対する選択肢比率をバタフライチャートで示した.選択肢3を「どちらでもない」として,選択肢1および2は否定的・ネガティブな回答を,選択肢4および5は肯定的・ポジティブな回答を示す.

4. 成績とアンケート回答との比較

実技項目の習熟度について,成績層別の結果を図4に示す.成績群別に見ると,「1人では実施できない」と自己評価している学生が多いのは成績下位群に多いことも示された.その一方で,問12(黄色ブドウ球菌の同定法)については成績とは弱い相関が認められたが(ρ = –0.2106, P = 0.0238),他の実技項目では成績とは相関は認められなかった.

図4

成績群別による実技項目の習熟度の比較(%, n = 115).成績群ごとにバタフライチャートを作成し,成績と各設問についてSpermanの順位相関係数を算出した.問13の成績中間群には誤回答が1例含まれ,%は無回答・誤回答を含めて算出した.

座学科目試験順位と他の質問紙調査の項目との相関を解析した結果,最も良い相関を示したのは問14「実習の楽しさ」であったが,ρ値は–0.3045(P = 0.0010)であった.ρの2乗値(ρ2値)が0.09を超える項目は問14のみであることから,実習を楽しく感じる要因に元々の座学科目への関心の程度も影響している可能性が示唆される一方,全体では実習への関心と成績との相関は低いことも示された.問2,14,15,16について成績を3群に分けて回答の分布を示したグラフを図5に示す.これらの項目のうち,問14に無回答が1名あった.問2「実習へ積極的に取り組めたか」(ρ = –0.1094, P = 0.2443),問16「座学への興味が増加したか」(ρ = –0.1245, P = 0.1849)という内容では成績との相関は認められなかった.問15の「実技試験実施の希望」と成績にも相関はなかった.

図5

成績群別による実習への関心の程度(%, n = 115).成績群ごとにバタフライチャートを作成し,成績と各設問についてSpermanの順位相関係数を算出した.問14の成績下位群には無回答が1例含まれる.%は無回答・誤回答を含めて算出し,選択肢比率を示した.

5. 実習に対する学生の気持ちと座学科目への興味の増減

問14で実習後に得意・楽しいなどポジティブな印象を回答した学生は57.4%,問16で実習後に「座学科目への興味が増加した・どちらかといえば増加した」と回答した学生は67.8%であった.実習後に座学科目への興味が増加することで学修効果が高まると考えられることから,問16「座学への興味の増減」と相関のある項目を抽出した結果,問1,2,5,6,11,12,13,14が該当した(問7および8を除く).説明変数間のSpearman順位相関係数ρは0.2から0.52であり,ρ2値が十分に小さいことからこれらの因子は共線性無しと判定した5).目的変数および,この8項目の説明変数に無回答または誤回答した学生を除外し,112名の回答について順序ロジスティック解析を行った.この結果,予測モデルの適合性に関してはP値が十分に小さく(P < 0.0001),目的変数を予測・説明すると考えられた.8項目のうち最も高いオッズ比を示すのは問14で,オッズ比5.36(95%信頼区間:2.73–11.03,P < 0.0001)で独立した説明変数として抽出された(表2).

表2

座学への興味の増減(問16)に対する各変数の寄与度(n = 112)

変数 オッズ比(95%信頼区間) P値(尤度比検定)
問1 1.006(0.63–1.59) 0.979
問2 1.060(0.65–1.73) 0.813
問5 1.421(0.70–2.91) 0.330
問6 1.226(0.78–1.95) 0.378
問11 1.053(0.52–2.13) 0.885
問12 1.271(0.64–2.51) 0.482
問13 1.002(0.50–2.01) 0.995
問14 5.356(2.73–11.03) <0.0001

6. 実習に対する予習・復習と使用した資料

実習を行うにあたり,問5「予習や座学の復習の程度」の結果から事前に実習書を読んでいない学生も22.6%いることが示された.また,61.7%の学生は実習書は読むが予習や座学の復習はしなかったと回答した.問6で実習後のレポートや実習試験のための自己学修について尋ねた結果,実習書のみを利用してレポートを作成し実習試験に臨む学生は29.6%で,多くの学生は実習書以外の情報を収集していることも示された.問7「予習や復習に最も多く使用した資料」では,「インターネットによる検索」が最も多く65.2%であり,次いで「座学科目の授業資料やノートを見返す」であった.問8で2番目に使用した資料を尋ねた結果,教科書・授業資料などの回答が増えた.問17の実習講義中の座学科目の復習時間では87.8%の学生が各項目につき5分から10分程度を希望していることが示された(表3,付表1).実習講義中に希望する座学復習時間は,成績とは相関がなかったが,復習は不要と答えた学生は成績上位群に多く(12%),下位群は6%であった.一方で,10分程度の復習を希望する学生が最も多いのも成績上位群であった.

表3

実習講義中の各項目における座学科目の復習量の希望(%)(問17)

不要 5分程度 10分程度 10分以上
成績上位群 12.1 36.4 48.5 3.0
成績中間群 8.3 43.8 45.8 2.1
成績下位群 6.1 54.5 36.4 3.0

 考察

本研究では,コアカリ平成25年度改訂版に示される微生物学範囲の技能項目について学生がどの程度習得できたかを調査し,本微生物学実習がコアカリ令和4年度改訂版に則って学修する学生にも有用であるかを検討した.技能の習熟度は学生の自己申告ではあるものの,89%以上の学生がコアカリ技能項目を「1人で行える・補助があれば1人で行える」と回答していた(表1).問9のグラム染色法および問11の菌の分離培養法は実習期間中に複数回行う機会があったことから,一人で行えると回答した学生が多かったと考えられる.実技5項目のうち4項目は成績とは相関がなく,また成績と実習への積極性にも相関が認められないことから,座学科目を苦手とする学生も実習には積極的に参加できたことが伺えた.問10の培地作製とその際の無菌操作は,複数人で構成される班で行い,かつ1回の実施であること,問12,問13は複数日にまたがり班員で分担する内容で回数も1回実施の項目であることから,「一人で行える」と自覚する学生の割合がやや少なかったと考えられた.コアカリ平成25年度改訂版では技能として「無菌操作を実施できる」の項目がある.無菌操作は微生物を扱う各操作で必要になる技能であることから,今回のアンケートでは単独の質問とはせず,培地作製とその時の無菌操作として尋ねている.菌の分離培養や菌の同定を行う際にも無菌操作は必要になることから,無菌操作自体も十分に習得できたと推察できる.実施回数が多い項目で「1人でできる」と回答した学生が多いことから,今回の自己申告の結果は実際の実技習得度をある程度反映していると考えられる.しかし,本研究では技能習熟度を客観的に教員が測定したものではないため,正確な習熟度の把握には及んでいない.基本的な手技であれば,実習途中に実技試験などの形成的評価を行うことで,実技の正確な習熟度を測るとともに学生の技能向上につながると考えられる.

実習前には実習を「不安に思う・苦手意識がある」とネガティブに考えていた学生が41.8%いたが,技能としては十分に習得できている自覚があり,本実習は薬学生の微生物学実習として適切に行えていたと考えられた.また実習書以外の学修のための資料として,教科書よりも授業資料やノートを利用する学生が多かったのは,座学科目履修時に教科書よりも授業資料を利用して勉強した経験によるものと考えられた.実習の予習や復習に関しては,まずはインターネット検索等を行い,その情報を捕捉あるいはインターネット検索で見つからない情報について教科書や資料にあたる様子が伺えた.

問17の実習中の復習講義について,「必要ない」と「10分程度の復習を希望」の両選択肢を最も多く選択したのは成績上位群であり,講義を不要と考える学生と,ある程度満遍なく講義を受けたいと考える学生に別れる傾向が認められた.成績下位群は半数以上が5分程度の復習講義を望んでおり,座学科目への苦手意識が本項目の時間に反映されている可能性が示された.座学へ時間を割くことを敬遠する学生に対しては,どの部分を自己学修すべきかを具体的に示すことも学修に有用と思われる.

本学では第2学年に微生物学の座学科目を,第3学年に微生物学実習を行う.看護学科で病原微生物学・免疫学の講義が開始される前に微生物を扱う実習を行った研究では,座学科目開始前の実習で学生のモチベーションが高まることが期待され,実際に実習は勉学への動機づけを喚起すると考えられた6).一方で,実習後に過剰な心構えや拒絶を示す学生がいることも報告され,座学科目受講前の実習では病原微生物と非病原微生物の区別が曖昧であるために過剰な反応を導く可能性が指摘された6).この先行研究で行った実習は2日間であるのに対し,本実習は8日間かけて実施しており,実習期間中にも十分に微生物についての説明がなされている.また,微生物学総論・各論の講義を終えている本学学生は実習前に一定の専門知識を持っていると考えられることから,知識を活かし自己学修の動機づけになっていると考察される.しかしながら,本研究では実習後の過剰反応等については調査をしておらず,実習後に微生物に対する心構えが過剰や拒絶に変化した学生が存在する可能性も否定できない.これは今後の調査の課題であるとともに,実習後あるいは上級学年での講義時にフォローアップする必要もあると考えられた.

座学科目や筆記試験を苦手と考える学生は実技試験を希望するのではないかと予想したが,全体としては実技試験を希望する学生と必要ないと考える学生はおよそ半々であり,成績とも相関はなかった(図5).しかし成績上位群と下位群を比較すると,「実技試験は必要ない」と強い否定を示した人数は成績下位群よりも上位群で多かった.さらに「実技試験はある方が良い」と回答した人数は成績上位群の方が少ない結果であり,成績上位群は筆記で行う実習試験を希望している割合が多いことも推察された.

次年度以降の実習に向けては,実習書を事前に読んでくるよう学生に指導すること,分担して行う実習ではなるべく少人数のグループで実施すること,個々人の結果を班内で共有する時間を多めに設けることで学生の技能習熟度・理解度をさらに向上できると考えられた.

同じ微生物学分野であっても,実習と座学科目では積極性が異なることから,積極的に取り組める実習において技能を習得することや楽しく取り組むことが座学への興味を増加させ,ひいては関連科目全体の学修効果増強へつながると期待される.本学では令和8年度からコアカリ令和4年度改訂版に準拠して微生物学実習が行われる.本実習が令和4年度改訂版の目指す医療人育成にどの程度貢献するかは更なる調査が必要であるが,現行の実習は薬学生に必要な内容を網羅しつつ座学の学修に対して一定の相乗的効果を与えていることが示され,改訂コアカリ下においても十分に有用な実習であると考えられた.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

この論文のJ-STAGEオンラインジャーナル版に電子付録(Supplementary materials)を含んでいます.

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