過疎地域の中小病院では研究活動に関する実践知の継承が困難であり,前報では公立南砺中央病院診療技術部職員の97.4%が研究活動に不安を抱えていること,また研究計画書作成や倫理審査対応など,薬剤師が研究遂行に必要な実践知の継承・共有に寄与し得る領域が存在することを示した.これらを踏まえ,当院では大学と協働し,薬剤師主導の多職種リカレント教育を試験的に導入した.本研究ではその効果を検証するため,研究計画,データ収集,統計解析,発表準備を段階的に支援する研修会を実施し,前後でアンケート調査を行った.研修前に職員の半数以上が挙げた6つの不安要因のうち4項目が有意に軽減し,学会発表回数は2022年の11回から2025年には16回へ増加した.薬剤師主導の多職種研修は,職員の不安要因の軽減と研究活動への関心を高める行動変容を生むことから,教育資源の限られた中小病院の研究支援方策としての有効性が期待される.
Sharing practical research knowledge is challenging in medium-sized hospitals, where individual professions often struggle to maintain research expertise. A previous report by the authors (in 2025) described how pharmacists can contribute to research by using their experience in protocol development and ethical review. This conclusion suggested that pharmacist-led cross-professional collaboration may sustain more research activities. A pilot cross-professional recurrent education program was established with a university. The program provided stepwise support for research planning, data collection, statistical analysis, and presentation preparation. Questionnaires were administered before and after training. Four of six major anxiety sources reported were significantly reduced, and conference presentations increased from 11 in 2022 to 16 in 2025. These results confirmed that pharmacist-led recurrent education can reduce staff anxiety, promote behavioral change, and establish a sustainable research support system in medium-sized hospitals.
近年,医療現場では医療専門職が互いの専門性を理解し,協働して患者中心の医療を提供するチーム医療の重要性が強調されている.この社会的ニーズを背景に,学生教育では多職種連携教育が導入されており,薬学生が他学部学生と協働して模擬患者を多角的に評価する学習方略1) や,医学部・薬学部・看護学部の学生がチームを形成して患者面談やアセスメントを行う体験型教育2) などが報告されている.さらに実践的な学生教育では,臨床現場でのチーム医療を体験的に学ぶ機会を設けるため,医療系大学と医療現場(病院)との連携が進みつつある.こうした多職種連携教育の考え方は卒前教育にとどまらず,卒後の医療専門職にも継続的な能力向上を求めており,とりわけ臨床で生じる未解決課題に対処するため,臨床研究の立案から発表までを含む研究的アプローチの重要性が高まっている.実際の医療現場では,患者情報が不十分で判断が難しい場面や,既存の知見だけでは対応が困難な課題に直面することも多く,こうした課題に対処するためには,多職種が研究的アプローチを共有し,研究活動を継続的に実践できる体制を構築することが重要となる.
薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)3) では,「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」として,多職種連携能力に加え,研究活動の実践を通じて課題を発見し,解決へ導く能力が明記されている.薬剤師は医療チームの一員として,また教育的リーダーとして,多職種と協働しながら臨床上の未解決課題に取り組む役割が期待されている.実際に公立南砺中央病院(以下,当院)では,薬剤師が中心となり,医師・看護師・介護福祉士と連携して高齢患者の排便困難に対し,適切な便秘治療薬の選択と排便コントロールの改善に取り組んだ事例を報告している4).このように,薬剤師が多職種と協働して臨床課題の解決に寄与した経験は,研究的アプローチを共有しながら多職種で課題解決に取り組むことの重要性を示唆している.
これまでに我々は,当院の医療専門職による研究活動の活性化に向けた課題を把握するため,診療技術部職員(薬剤師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,診療放射線技師,臨床検査技師,管理栄養士,臨床工学技士)の38名を対象に研究活動に関するアンケート調査を実施した5).その結果,97.4%の職員が研究活動に何らかの不安を抱えていること,また研究計画書作成や倫理審査対応など,薬剤師が他職種と比較して相対的に研究経験を有し研究遂行に必要な実践知の継承・共有に寄与し得る領域が存在することが明らかとなった5).一方,すべての医療専門職が研究経験を有しているわけではなく,研究活動に対する不安や課題は多職種に共通する構造的問題であると考えられる.こうした課題に対し,薬剤部内で大学教員が研究支援を行う取り組み6) や,病院内に研究相談窓口を設置し外部教員が継続的に支援する事例7) などが報告されている.しかし,過疎地域に位置する中規模病院(病床数104床,介護医療院45床併設)である当院では,各部署の人数が限られているため,特定職種を対象とした研究支援体制を個別に整備することは現実的でない.このような状況を踏まえると,研究活動に関する課題を多職種間で共有し,共通の基盤を形成する教育的アプローチは,当院のような小規模医療組織における現実的かつ有効な選択肢の一つと考えられた.
そこで当院では,大学のリカレント教育担当者と協働し,研究活動に関する基礎的知識や実践的視点を多職種で共有することを目的とした多職種横断型の研修会(以下,研修会)を試験的に実施した5).本研究では,この研修会が診療技術部職員にどのような影響を及ぼしたかを明らかにすることを目的とし,研修会前後(プレ・ポスト)でアンケート調査を実施した.
当院が所在する富山県南砺市は,「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に基づく過疎地域に指定されており,人口45,061人で高齢化率40.45%と過疎化と高齢化が進行している地域である(令和8年1月末現在,南砺市統計資料).本研究は,当院診療技術部職員を対象に,富山大学薬学部のリカレント教育を活用して表1に示す研修会を企画・実施した.富山大学薬学部では,2022年に地域の病院薬剤師および薬局薬剤師を対象とした薬物投与設計と薬物定量・解析演習を含むリカレント講習会8) を実施し,2023年から研究支援を目的に月1回のリカレント教育を継続的に開催している.当院薬剤師はこれらのリカレント教育に参加し,研究計画の立案,統計解析,研究結果のまとめ方,学会発表への助言および臨床研究の論文化支援などに関する研修を受け,大学教員の監修のもと本研修会の企画・実施を主導した.研修会は2023年8月から2025年3月までの期間に,2か月ごとに計10回(各回60分),業務時間外に実施した.研修会の満足度は,各回の研修会終了後に無記名方式のアンケートを配布し,「満足・やや満足・普通・やや不満・不満」の5段階で評価した.
薬剤師主導による多職種連携研修内容と研修評価
| 研修内容(下線は薬剤師以外の職種が担当した内容) | 参加人数 | アンケート回答人数 | 研修会評価 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 満足 | やや満足 | 普通 | やや不満 | 不満 | |||
| 1回目:事前アンケート結果報告,学会参加の必要性,臨床研究開始前の準備①(クリニカル・クエスチョンの見つけ方,文献検索) | 30 | 28 | 18 | 6 | 4 | 0 | 0 |
| 2回目:臨床研究開始前の準備②(リサーチ・クエスチョンの作り方,研究計画書作成,倫理審査申請書作成),臨床研究の進め方 | 30 | 30 | 25 | 3 | 1 | 1 | 0 |
| 3回目:学会参加・学会誌投稿の感想,統計解析の基本 | 20 | 19 | 15 | 3 | 1 | 0 | 0 |
| 4回目:学会参加・専門誌投稿の感想,統計解析の実際 | 28 | 26 | 24 | 2 | 0 | 0 | 0 |
| 5回目:アンケート調査の進め方,学会発表時の注意点 | 28 | 27 | 24 | 2 | 1 | 0 | 0 |
| 6回目:学会発表スライド修正前後の比較,学会発表スライドの修正方法 | 27 | 25 | 23 | 2 | 0 | 0 | 0 |
| 7回目:学会発表5演題の予演会,スライド修正箇所の検討 | 24 | 24 | 23 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| 8回目:富山大学薬学部教員講演「研究の種の見つけ方と研究を通じた多職種連携の質的向上」 | 25 | 25 | 23 | 2 | 0 | 0 | 0 |
| 9回目:本研修会受講の感想,臨床研究を論文にするには | 20 | 17 | 15 | 2 | 0 | 0 | 0 |
| 10回目:事前・事後アンケート結果報告,本研修結果を学会発表および論文化する方法 | 16 | 14 | 13 | 1 | 0 | 0 | 0 |
研究活動に関するアンケート内容を表2に示す.事前アンケートは2023年6月に実施し,診療技術部職員38名(薬剤師7名,理学療法士11名,作業療法士6名,言語聴覚士2名,診療放射線技師5名,臨床検査技師4名,管理栄養士2名,臨床工学技士1名)を対象とした.事後アンケートは2025年1月に実施し,管理栄養士1名を追加した39名を対象とした.なお,事前・事後アンケートの対象者は,管理栄養士1名の追加を除き,産休・育休および退職・入職等による人員の入れ替えはなかった.アンケートは無記名方式で配布し,各部署に設置した回収箱に提出を依頼した.事前アンケートは,学会参加に関する5項目と髙武ら9) のアンケートを参考にした臨床研究の実践に関する10項目の計15項目で構成した.事後アンケートは,研修会に関する3項目を追加し計18項目とした.選択式回答は単純集計を行い,事前・事後アンケートの結果を比較した.事後アンケートの自由記述回答はテキストマイニングで分析した.
研究活動に関するアンケート内容
| 1.学会に参加したいですか |
| 積極的に参加したい,できれば参加したい,できれば参加したくない,参加したくない |
| 2.1で「積極的に参加したい」「できれば参加したい」を選択された方にお尋ねします |
| 参加したい理由は何ですか(複数回答可) 自己研鑽,認定・専門・指導等の資格取得,業務上必要,学会員のため,その他 |
| 3.1で「できれば参加したくない」「参加したくない」を選択された方にお尋ねします |
| 参加したくない理由は何ですか(複数回答可) 必要性を感じない,時間がない,お金がかかる,参加しなくても業務に支障がない,その他 |
| 4.1年間に何回くらい学会に参加していますか |
| 0回,1回,2回,3回以上 |
| 5.学会参加についてあなたのご意見を教えてください(自由記述) |
| 6.現在,臨床研究を計画もしくは実施していますか |
| はい,いいえ |
| 7.臨床研究を実施した経験が何回ありますか |
| 0回,1回,2回,3回以上 |
| 8.7で臨床研究を実施した経験がある方にお尋ねします |
| 臨床研究を始めた動機を教えてください(複数回答可) 先輩・上司に指示された,業務上発表が必要だった,興味があるテーマだった, 学会で発表したかった,新規性・独創性のあるテーマだった, 認定資格を業務に反映させるため,その他 |
| 9.7で臨床研究を実施した経験がない方にお尋ねします |
| 臨床研究を行っていない理由を教えてください(複数回答可) 臨床研究テーマがない,臨床研究の方法がわからない,通常業務が忙しい, プライベートが忙しい,臨床研究に興味がない,できるだけ臨床研究したくない,その他 |
| 10.臨床研究を実施することは必要だと思いますか |
| 必要,やや必要,やや不要,不要 |
| 11.10で「必要」「やや必要」を選択された方にお尋ねします |
| どのような理由で必要と思われますか(複数回答可) 自己研鑽,専門職としての業務に必要,医療の発展,認定・専門・指導資格の取得,その他 |
| 12.10で「やや不要」「不要」を選択された方にお尋ねします |
| どのような理由で不要と思われますか(複数回答可) 給料に反映されない,業務評価に反映されない,自分の業務に必要ない, 他の病院が実施している,その他 |
| 13.臨床研究を実施するうえで不安な点や不明な点はありますか |
| ある,ない |
| 14.13で「ある」を選択された方にお尋ねします |
| 不安な点や不明な点を教えてください(複数回答可) 統計解析,クリニカルクエスチョン(CQ)の立て方,データの取り方,研究結果のまとめ方, 研究計画書の作成,プレゼンテーションの方法,学会発表スライドの作成, 倫理審査委員会への対応,文献検索の方法,その他 |
| 15.臨床研究についてあなたのご意見を教えてください(自由記述) |
| 16.研修会は参考になりましたか |
| 参考になった,やや参考になった,あまり参考にならなかった,参考にならなかった |
| 17.特に参考になった研修会を2つまで教えてください |
| 18.研修会についてあなたのご意見・ご感想を教えてください(自由記述) |
*学会参加に関する設問1~5,臨床研究の実践に関する設問6~15,研修会に関する設問16~18
選択式回答の統計解析には,JMP Pro 18(SAS Institute Japan(株),東京)を使用した.群間の値の比較にはχ2検定を行い,期待度数が5未満のセルを含む場合にはFisherの正確確率検定を用い,p < 0.05を有意差ありとした.設問5,15,18の自由記述回答には,KH Coder(ver.3,Beta.07e)を用いてテキストマイニングの手法である共起ネットワーク分析を行った.共起ネットワーク分析では,自由記述文中の出現頻度が高い語ほど大きな円で描画され,抽出語同士の共起関係に基づき線で結ばれたサブグラフとして図示した10).
4. 倫理的配慮本研究は,公立南砺中央病院倫理審査委員会の承認(承認番号:2023-05)を得て実施した.アンケート調査は無記名方式で行い,対象者には回答しないことによる不利益がないことを説明した上で,アンケート調査紙の提出をもって研究への同意取得とした.
研修内容と研修会評価を表1に示す.研修内容は,1~2回目に臨床研究開始前の準備,3~4回目に統計解析,5~6回目に学会発表に関する知識習得,7回目に学会発表の予演会による多職種間フィードバック,8回目に大学教員による講義,9~10回目に本研修成果を学会発表および論文化する内容とした.講師は主に薬剤師が担当し,多職種からも学会参加や学会誌投稿の体験談,今回のアンケート結果などの報告を行い,多職種参加型の研修とした.研修会への平均参加人数は24.8名であり,参加回数は5回未満が25.6%(10名/39名),5~7回が20.5%(8名/39名),8~10回が53.8%(21名/39名)であり,8回以上参加した職員は半数を超えていた.各回の研修会の満足度は「満足」「やや満足」を合わせて85.7~100%と高かった.
2. 研究活動に関するアンケート(選択式回答)アンケート対象者の背景を表3に,事前・事後アンケートの選択式回答結果を表4に示す.事前・事後アンケートの回答率はいずれも100%であった.学会参加に関して,設問3で学会参加の必要性を感じないと回答した職員は,事前10.5%(4名/38名)から事後0%に減少した.設問4では,学会参加回数2回以上の職員が事前42.1%(16名/38名)から事後51.3%(20名/39名)に増加した.臨床研究の実践に関して,設問8で臨床研究を始めた主な動機は,事前・事後ともに「先輩・上司に指示された」「業務上発表が必要だった」が多く,職員の自主的な動機は限定的であった.設問13で臨床研究の実施に不安要因を抱える職員は,事前・事後ともに90%以上であった.一方,設問14では,事前に半数以上の職員が不安要因として挙げた6項目のうち,「クリニカルクエスチョンの立て方」「研究結果のまとめ方」「研究計画書の作成」「プレゼンテーションの方法」の4項目で有意な軽減が認められた.「統計解析」「データの取り方」の2項目には有意な変化がなく,研修方法の改善が必要な項目であると考えられた.研修会の評価では,設問16で「参考になった」「やや参考になった」を合わせて92.3%(36名/39名)と高い評価を得ており,設問17で特に参考になった研修会の上位4つは,1~2回目の臨床研究開始前の準備と5~6回目の学会発表に関する知識習得であった(表4).
アンケート調査の対象者背景1)
| 事前(2023年6月n = 38) | 事後(2025年1月n = 39) | |
|---|---|---|
| 部署人数 | 薬剤科:7名(研修生2) 1名含む) リハビリテーション室:19名 放射線室:5名 検査室:4名 栄養管理室:2名 臨床工学室:1名 |
薬剤科:7名(研修生1名含む) リハビリテーション室:19名 放射線室:5名 検査室:4名 栄養管理室:3名 臨床工学室:1名 |
| 性別 | 男性18名 女性20名 | 男性18名 女性21名 |
| 業務経験年数 | 1~5年:7名 6~10年:9名 11~15年:11名 16年以上:11名 |
1~5年:7名 6~10年:8名 11~15年:13名 16年以上:11名 |
1) 管理栄養室の1名増員を除き,退職・入職による人員入れ替えはなかった
2) 地域薬学ケア専門薬剤師研修生
研究活動に関する事前・事後アンケート結果(選択式回答)
| 学会参加についての設問 | 事前(n = 38) | 事後(n = 39) | p値 |
|---|---|---|---|
| 1.学会に参加したいですか | |||
| 積極的に参加したい | 6(15.8%) | 9(23.1%) | |
| できれば参加したい | 26(68.4%) | 27(69.2%) | |
| できれば参加したくない | 5(13.2%) | 3(7.7%) | |
| 参加したくない | 1(2.6%) | 0 | |
| 2.1で「積極的に参加したい」「できれば参加したい」を選択された方にお尋ねします 参加したい理由は何ですか(複数回答可) | |||
| 自己研鑽 | 31(81.6%) | 34(87.2%) | 0.498a) |
| 認定・専門・指導等の資格取得 | 14(36.8%) | 14(35.9%) | 0.931a) |
| 業務上必要 | 11(28.9%) | 10(25.6%) | 0.745a) |
| 学会員のため | 5(13.2%) | 6(15.4%) | 0.780a) |
| その他 | 1(2.6%) | 1(2.6%) | 1.000b) |
| 3.1で「できれば参加したくない」「参加したくない」を選択された方にお尋ねします 参加したくない理由は何ですか(複数回答可) | |||
| 必要性を感じない | 4(10.5%) | 0(0%) | 0.055b) |
| 時間がない | 2(5.3%) | 1(2.6%) | 0.615b) |
| お金がかかる | 2(5.3%) | 1(2.6%) | 0.615b) |
| 参加しなくても業務に支障がない | 1(2.6%) | 1(2.6%) | 1.000b) |
| その他 | 1(2.6%) | 1(2.6%) | 1.000b) |
| 4.1年間に何回くらい学会に参加していますか | |||
| 0回 | 4(10.5%) | 2(5.1%) | |
| 1回 | 18(47.4%) | 17(43.6%) | |
| 2回 | 10(26.3%) | 12(30.8%) | |
| 3回以上 | 6(15.8%) | 8(20.5%) | |
| 6.現在,臨床研究を計画もしくは実施していますか | |||
| はい | 19(50.0%) | 18(46.2%) | 0.736a) |
| いいえ | 19(50.0%) | 21(53.8%) | |
| 7.臨床研究を実施した経験が何回ありますか | |||
| 0回 | 11(28.9%) | 12(30.8%) | |
| 1回 | 12(31.6%) | 10(25.6%) | |
| 2回 | 5(13.2%) | 7(17.9%) | |
| 3回以上 | 10(26.3%) | 10(25.6%) | |
| 8.7で臨床研究を実施した経験がある方にお尋ねします 臨床研究を始めた動機を教えてください(複数回答可) | |||
| 先輩・上司に指示された | 15(39.5%) | 15(38.5%) | 0.927a) |
| 業務上,発表が必要だった | 12(31.6%) | 17(43.6%) | 0.277a) |
| 興味があるテーマだった | 11(28.9%) | 12(30.8%) | 0.861a) |
| 学会で発表したかった | 8(21.1%) | 4(10.3%) | 0.192a) |
| 新規性・独創性のあるテーマだった | 4(10.5%) | 3(7.7%) | 0.712b) |
| 認定資格を業務に反映させるため | 2(5.3%) | 3(7.7%) | 1.000b) |
| その他 | 2(5.3%) | 1(2.6%) | 0.615b) |
| 9.7で臨床研究を実施した経験がない方にお尋ねします 臨床研究を行っていない理由を教えてください(複数回答可) | |||
| 臨床研究テーマがない | 6(15.8%) | 5(12.8%) | 0.710a) |
| 臨床研究の方法がわからない | 5(13.2%) | 0(0%) | 0.025b) |
| 通常業務が忙しい | 4(10.5%) | 7(17.9%) | 0.352a) |
| プライベートが忙しい | 3(7.9%) | 3(7.7%) | 1.000b) |
| 臨床研究に興味がない | 3(7.9%) | 3(7.7%) | 1.000b) |
| できるだけ臨床研究したくない | 0(0%) | 2(5.1%) | 0.494b) |
| その他 | 2(5.3%) | 1(2.6%) | 0.615b) |
| 10.臨床研究を実施することは必要だと思いますか | |||
| 必要 | 12(31.6%) | 17(43.6%) | |
| やや必要 | 19(50.0%) | 15(38.5%) | |
| やや不要 | 6(15.8%) | 7(17.9%) | |
| 不要 | 1(2.6%) | 0(0%) | |
| 11.10で「必要」「やや必要」を選択された方にお尋ねします どのような理由で必要と思われますか(複数回答可) | |||
| 自己研鑽 | 24(63.2%) | 28(71.8%) | 0.418a) |
| 専門職としての業務に必要 | 16(42.1%) | 17(43.6%) | 0.895a) |
| 医療の発展 | 12(31.6%) | 16(41.0%) | 0.389a) |
| 認定・専門・指導資格の取得 | 12(31.6%) | 10(25.6%) | 0.564a) |
| その他 | 1(2.6%) | 1(2.6%) | 1.000b) |
| 12.10で「やや不要」「不要」を選択された方にお尋ねします どのような理由で不要と思われますか(複数回答可) | |||
| 給料に反映されない | 4(10.5%) | 4(10.3%) | 1.000b) |
| 業務評価に反映されない | 2(5.3%) | 1(2.6%) | 0.615b) |
| 自分の業務に必要ない | 2(5.3%) | 3(7.7%) | 1.000b) |
| 他の病院が実施している | 1(2.6%) | 0(0%) | 0.494b) |
| その他 | 5(13.2%) | 4(10.3%) | 0.737b) |
| 13.臨床研究を実施するうえで不安な点や不明な点はありますか | |||
| ある | 37(97.4%) | 36(92.3%) | 0.615b) |
| ない | 1(2.6%) | 3(7.7%) | |
| 14.13で「ある」を選択された方にお尋ねします 不安な点や不明な点を教えてください(複数回答可) | |||
| 統計解析 | 30(78.9%) | 30(76.9%) | 0.831a) |
| クリニカルクエスチョン(CQ)の立て方 | 26(68.4%) | 15(38.5%) | 0.008a) |
| データの取り方 | 24(63.2%) | 21(53.8%) | 0.407a) |
| 研究結果のまとめ方 | 24(63.2%) | 15(38.5%) | 0.030a) |
| 研究計画書の作成 | 23(60.5%) | 13(33.3%) | 0.017a) |
| プレゼンテーションの方法 | 19(50.0%) | 11(28.2%) | 0.049a) |
| 学会発表スライドの作成 | 17(44.7%) | 12(30.8%) | 0.206a) |
| 倫理審査委員会への対応 | 15(39.5%) | 10(25.6%) | 0.195a) |
| 文献検索の方法 | 11(28.9%) | 12(30.8%) | 0.861a) |
| その他 | 1(2.6%) | 1(2.6%) | 1.000b) |
| 16.研修会は参考になりましたか | |||
| 参考になった | 25(64.1%) | ||
| やや参考になった | 11(28.2%) | ||
| あまり参考にならなかった | 2(5.1%) | ||
| 参考にならなかった | 0(0%) | ||
| 無回答 | 1(2.6%) | ||
| 17.特に参考になった研修会を2つまで教えてください | |||
| 1回目:事前アンケート結果報告,学会参加の必要性,臨床研究開始前の準備① | 9(23.1%) | ||
| 2回目:臨床研究開始前の準備②,臨床研究の進め方 | 9(23.1%) | ||
| 3回目:学会参加・学会誌投稿の感想,統計解析の基本 | 6(15.4%) | ||
| 4回目:学会参加・専門誌投稿の感想,統計解析の実際 | 4(10.3%) | ||
| 5回目:アンケート調査の進め方,学会発表時の注意点 | 14(35.9%) | ||
| 6回目:学会発表スライド修正前後の比較,学会発表スライドの修正方法 | 16(41.0%) | ||
| 7回目:学会発表5演題の予演会,スライド修正箇所の検討 | 1(2.6%) | ||
| 8回目:富山大学薬学部教員講演 | 8(20.5%) | ||
| 9回目:研修会受講の感想,臨床研究を論文にするには | 7(17.9%) |
a)χ2検定,b)Fisherの正確確率検定
設問5の学会参加についての共起ネットワーク分析では,10のサブグラフが形成された(図1).主なサブグラフに関連する自由記述回答の一部を表5aに示す.サブグラフ①「他施設,取り組み,取り入れる,新た,業務,モチベーション,得る,知識」,②「学会,全国,職種,視点,さまざま,発表,感じる」,④「認定資格,取得,更新」,⑥「専門,技術」には,自己研鑽や資格取得への意欲,専門性や技術の習得に関する前向きな抽出語が確認された.また,サブグラフ⑦「学会発表,意見,交換,日常業務,学ぶ,分野」,⑧「研究,活かす」には,学会発表や研究に関心を示す抽出語が確認された.自由記述回答例として,「他施設の取り組みを聞くことができ,悩んでいる手技のコツを知り得たり,新たな検査方法を業務に取り入れる時の参考にすることができる.」(サブグラフ①),「発表者やそのチームの方々の熱量を肌で感じることができ,改めて自分の専門職としての知識や技術を高めたいと思いました.」(サブグラフ②)など,学会参加に前向きな意欲が認められた(表5a).一方,⑨「開催,負担」,⑩「現地,Zoom」には,開催地による負担や参加形態の違いによる課題を示す抽出語が確認された.

設問5.学会参加についての共起ネットワーク分析
研究活動に関する事後アンケートの自由記述回答例
| 5a:設問5学会参加についてあなたのご意見を教えてください |
| サブグラフ① |
| ・他施設の取り組みを聞くことができ,悩んでいる手技のコツを知り得たり,新たな検査方法を業務に取り入れる時の参考にすることができる.(検査) ・学会参加することによって最新の医療の知識を得たり,他施設での取り組みを見聞きすることによって,自部署に新たな事柄を取り入れることができるため,積極的に参加するべきだと考えています.(工学) |
| サブグラフ② |
| ・発表者やそのチームの方々の熱量を肌で感じることができ,改めて自分の専門職としての知識や技術を高めたいと思いました.(リハ) ・今年初めて全国学会に参加しました.いろいろな職種が集まっており,さまざまなテーマ,視点の発表を聞くことができました.(栄養) |
| サブグラフ④ |
| ・新たな認定資格取得や認定資格更新のためにも学会参加は必要である.(薬剤) |
| サブグラフ⑥ |
| ・学会参加は,専門性を高めるだけでなく,今話題の技術や研究動向について触れられる貴重な機会だと思います. |
| サブグラフ⑦ |
| ・学会発表することで,日常業務の振り返りもできるし,学会参加者と意見交換することで,新しい知見を得ることができる.(薬剤) ・専門分野の学会参加により,最新の技術や知識について学ぶことができるので,日常業務に活かすことができます.(検査) |
| サブグラフ⑧ |
| ・私自身発表をして質問や意見を頂き,今後の研究や学会発表に活かしていきたいと思いました.(栄養) |
| サブグラフ⑨ |
| ・地方に住んでいるため,都市部での学会参加には時間的・金銭的負担が大きいことがデメリットだと思う.(薬剤) ・学会参加費だけでなく交通費などの経済的な面も負担に感じている.(リハ) |
| サブグラフ⑩ |
| ・Zoomだと手技や実技の研修は出来ないため,そのような場合は現地参加が必要となる.(リハ) ・時間やお金のことを考えると現地開催への参加は難しく,なかなか参加できていないのが現状です.(リハ) |
| 5b:設問15臨床研究についてあなたのご意見を教えてください |
| サブグラフ② |
| ・業務の見直しや効率化など,臨床研究により改善されることがあるため,積極的に取り組むのが良いと思う.(薬剤) |
| サブグラフ④ |
| ・日常業務に加えて臨床研究を行うことはとても労力がかかるが,それ以上に自分にとって知識や経験を得ることができ,利益になることが多いと思う.(リハ) ・業務改善の規模を問わず,改善の経験や内容をまとめて学会発表したり,論文執筆したりすることは他部署や他施設へ情報発信する有効な手段です.(放射) |
| サブグラフ⑤ |
| ・全体の構成を考える,得たい情報の検索(文献検索),統計解析,データのまとめ方,スライド作成,プレゼンテーションの方法など,一度の臨床研究で多くのことを学べ,研究以外でもちょっとデータをまとめたいときや情報を得たいときに役立つ.(放射) ・いかにして簡潔にわかり易く相手に伝えることが出来るかを考えながらスライドや原稿を作ることにより,プレゼンテーション能力が身につく.(検査) |
| サブグラフ⑥ |
| ・臨床研究は自己研鑽,自部署の取り組みのアピール,医療の発展につながると思います.(栄養) |
| サブグラフ⑦ |
| ・膨大な時間と強い忍耐力が必要で,日常業務と家庭の両立をしたうえで臨床研究を行うには,かなりハードルが高そうで不安がいっぱい.(栄養) ・研究方法が分からないことが臨床研究のハードルが高い原因ではないかと思う.(薬剤) |
| サブグラフ⑧ |
| ・日々の臨床の中からテーマを見つけ出し,それを臨床研究にする難しさを感じる.(リハ) ・臨床研究を行うまでにクリニカルクエスチョンの立案や研究計画といった,たくさんの行っていくことを考えるとなかなか動き出せずにいる.(リハ) |
| 5c:設問18研修会についてあなたのご意見・ご感想を教えてください |
| サブグラフ① |
| ・臨床研究するにあたっての進め方やテーマの見つけ方・スライド作成や学会発表の仕方など,参考になる点は多くあった.(検査) |
| サブグラフ③ |
| ・臨床研究というとハードルが高いイメージがあったが,この研修会で段階的に学習することにより,そのハードルが低くなった印象があった.(薬剤) ・学会発表のハードルは以前よりもかなり低くなったと感じましたが,論文執筆に関する話を聞き正直心が折れそうになりました.(放射) |
| サブグラフ④ |
| ・さまざまな文献にもっと目を配る必要があると感じた.普段からいろいろな研究を調べ参考にできるものを見つけるのも大切だと思った.(リハ) ・今回の研修会は,クリニカルクエスチョンの立て方,データの取り方,学会発表,スライド作成など,段階的に学習できたので分かりやすかった.(薬剤) |
| サブグラフ⑥ |
| ・本研修会で実例を交えて説明されていたため,とても分かりやすく,自分の研究内容や発表スライドに反映しやすいと思った.(薬剤) ・今まで臨床研究をしたくてもやり方が分からない部分が多かったので,今回の研修会で項目ごとに教えて頂くことができ,以前より取り組みやすくなったように感じる.(リハ) |
| サブグラフ⑧ |
| ・特に統計解析は研修を受けただけでは理解するのが難しいため,実際に自分のデータで統計解析を行うことが必要だと思った.(薬剤) ・研修会はどの内容も非常に興味のあるものばかりでした.個人的には統計解析についてもっと詳しく知りたいと思いました.(放射) |
*下線は共起ネットワーク分析で形成されたサブグラフの抽出語
*回答者は,薬剤:薬剤師,リハ:リハビリテーション職員,放射:診療放射線技師,検査:臨床検査技師,栄養:管理栄養士,工学:臨床工学技士
設問15の臨床研究についての共起ネットワーク分析では,8のサブグラフが形成された(図2).主なサブグラフに関連する自由記述回答の一部を表5bに示す.サブグラフ②「内容,改善,良い」,④「得る,経験,部署,学会発表,論文,自分,知識」,⑤「スライド,プレゼンテーション,文献,方法,研究」,⑥「自己研鑽,自部署,医療,発展」には,臨床研究による知識や経験の獲得,業務改善および医療の発展への貢献,プレゼンテーション方法の習得など,研修会が臨床研究に役立つことを示す抽出語が確認された.自由記述回答例として,「業務の見直しや効率化など,臨床研究により改善されることがあるため,積極的に取り組むのが良いと思う.」(サブグラフ②),「日常業務に加えて臨床研究を行うことはとても労力がかかるが,それ以上に自分にとって知識や経験を得ることができ,利益になることが多いと思う.」(サブグラフ④)など,積極的に取り組みたいという意識変化が認められた(表5b).一方,サブグラフ⑦「分かる,不安,高い,ハードル」,⑧「クリニカルクエスチョン,臨床,日々」には,臨床研究に伴う技術的な不安や心理的ハードルの高さを示す抽出語が確認された.

設問15.臨床研究についての共起ネットワーク分析
設問18の研修会についての共起ネットワーク分析では,8のサブグラフが形成された(図3).主なサブグラフに関連する自由記述回答の一部を表5cに示す.サブグラフ①「テーマ,見つける,意識」,④「文献,調べる,研究,発表,スライド,作成」,⑥「自分,研修,今回,分かる,説明,教える」には,研究テーマ設定や文献検索,スライド作成,研修内容の理解など,研修会の具体的な学習成果を反映する抽出語が確認された.また,サブグラフ③「ハードル,高い,低い,以前」には,臨床研究への心理的障壁の低下を示す抽出語が確認された.一方,サブグラフ⑧「統計解析,特に,難しい」には,特に統計解析の難しさを示す抽出語が確認された.自由記述回答例として,「特に統計解析は研修を受けただけでは理解するのが難しいため,実際に自分のデータで統計解析を行うことが必要だと思った.」(サブグラフ⑧)という実際に統計解析を行う必要性についての意見が寄せられた(表5c).

設問18.研修会についての共起ネットワーク分析
部署別の学会発表回数を表6に示す.学会発表回数は,研修会前(2021~2022年)の平均11.5回から研修会後(2025年)には16回に増加した.研修会後に発表を行った部署は,研修前から発表を継続していた部署に加え,栄養管理室が新たに学会発表を行った.論文数は,薬剤科が2023年に1報,2025年に本研修に関連する1報を報告した.なお,研修会前後において2部署で職員の入れ替えがあった.すなわち,リハビリテーション室では,2021年18名,2022年以降は19名の人員構成の中,2023年に1名の入れ替えがあった.検査室では,2021年5名,2022年以降は産休・育休により1名減の4名の人員構成を維持する中,2022年に1名の入れ替えがあった.
研修会前後の部署別学会発表回数
| 部署 | 研修会前 | 研修会後 | |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 2022年 | 2025年 | |
| 薬剤科1) | 5 | 2 | 7(研修生2) |
| リハビリテーション室2) | 4 | 5 | 5 |
| 放射線室3) | 1 | 4 | 3 |
| 検査室4) | 2 | 0 | 0 |
| 栄養管理室5) | 0 | 0 | 1 |
| 臨床工学室6) | 0 | 0 | 0 |
| 学会発表回数合計 | 12 | 11 | 16 |
1) 2022年まで6名/2023年から研修生1名追加により7名,2) 2021年まで18名/2022年以降19名/2023年に1名の退職・入職による人員入れ替えあり,3) 2021年まで4名/ 2022年以降5名,4) 2021年まで5名/2022年以降4名/2022年に1名の退職・入職による人員入れ替えあり,5) 2023年まで2名/2024年以降3名,6) 1名
本研究では,過疎地域に位置する中規模公立病院において,薬剤師と大学リカレント教育担当教員が協働して薬剤師主導による研修会を実施し,その教育的効果をアンケート調査により検証した.研修内容は,診療技術部職員の研究活動に関する不安要因に対応した講義に加え,多職種による研究活動報告を組み合わせた包括的研修プログラムとした.その結果,臨床研究開始前の準備および学会発表に関する知識習得が特に参考になったと回答され,これらの内容に関連した臨床研究の不安要因4項目が有意に軽減した(表4).さらに,共起ネットワーク分析では,学会参加が自己研鑽や資格取得への意欲向上,専門性や技術習得に活用され,臨床研究が知識や経験の獲得および業務改善に役立つことが明らかとなった(図1,2).
診療技術部職員には,臨床研究の経験や不安要因について職種間および個人差があることから,研修における教育ニーズの把握は重要である.中核病院職員に臨床研究関連の教育プログラム参加への関心を調査した報告11) では,臨床研究やデータ分析に関心のある職員は統計処理方法,論文の書き方,研究題材の見つけ方などの教育を望む一方,関心のない職員は論文検索や評価の方法,データ解釈などの教育を望んでおり,多様な教育ニーズがあることが示されている.また,薬学部教育において医療系3学部合同で医学部附属病院と連携し,臨床事例に基づく多職種医療コミュニケーション演習を行うことで,学生がプロフェッショナリズムを改めて自覚し,多職種連携の重要性を明確に認識したことが示されている12).さらに,卒後の医療現場・地域における継続的学修機会の確保が,医療現場や地域ニーズに応える多職種連携教育の実現に必要であると報告している12).これらの知見は,医療現場における教育ニーズが多様である一方で,多職種で学ぶこと自体にも教育的意義があることを示唆している.特に,教育資源が限られる中小病院では,職種別や関心度別に研修を細分化することは現実的ではなく,むしろ多様なニーズを一体的に扱える研修形態が合理的である.したがって,研究活動に関する研修を企画する場合には,薬剤師主導のもと研究遂行に必要な実践知を共有する多職種合同の包括的研修プログラムが,中小病院の状況に適した実践的アプローチとなり得る.
本研究の教育的意義は,地域薬剤師と薬学部教員の協働により,実践的な研究支援基盤の形成に資する枠組みを示した点にある.薬剤師主導による院内教育プログラムの構築にあたっては,臨床研究開始前の準備,統計解析,論文化の方法など,研究遂行に必要な基礎的知識を多職種で共有できるよう,実践的な教材を事前に整備した.これらの教材作成は大学教員の助言を得て進められ,薬剤師自身もリカレント教育を通じて臨床研究の実践知を体系的に習得していた.なお,富山大学のリカレント教育には保険薬局および病院を問わず地域の薬剤師が継続的に参加しており,受講者は増加傾向にある.このような協働は,地域医療に関わる専門職の学修基盤を強化し,過疎地域にある中規模病院内の研究支援の枠を超えて地域全体における継続的な教育機会の創出へと発展しうると期待される.
薬剤師が多職種に対して教育的リーダーシップを発揮し得ることは先行研究でも示されている.すなわち,Ismailら13) は,米国臨床薬学会(ACCP)の基準・提言を指針とした三次医療機関のクリニカルパスの開発において,臨床薬剤師が文献レビュー,疾患別オーダーセットの作成,多職種チーム内でのエビデンス評価に関与したことを報告している.また,臨床薬剤師は患者教育用薬剤情報リーフレットの作成や退院前の薬剤情報整理および服薬指導を実施しており,多職種連携の中でリーダーシップを発揮し得ることが示されている13).なお,Ismailらの報告は海外の臨床薬剤師を対象としたものであり,日本の薬剤師とは役割や裁量に違いがあるものの,教育的場面において薬剤師が多職種に対して実践知を共有し,学習を支援する役割を担い得る点は共通している.これらの知見は,薬剤師が多職種連携において教育的リーダーとしての役割を担い得ることを支持するものであり,本研究で実施した薬剤師主導の研修会が多職種に良い影響を及ぼした理由を一部説明可能であると考えられた.
本研修の実施後においても改善が十分でなかった不安要因として「統計解析」「データの取り方」の2項目が挙げられた(表4).統計解析については,臨床研究に取り組むうえで多くの医療専門職にとって障壁となっている.実際に病院薬剤師を対象とした統計解析に関する調査では,77.1%が統計解析を臨床研究の障壁として挙げている14).また,医療専門職を対象に実施された医療統計研修会(基礎I~IV)の報告では,医療統計に対する理解度は全体として低く,その理解には臨床研究や論文作成の経験が影響することが示唆されている15).これらの知見は,統計解析に関する不安が講義中心かつ短期的な研修では解消しにくい構造的課題であることを示している.したがって,実際の臨床研究や論文執筆を通じた継続的かつ実践的な学習機会が不可欠であると考えられる.
本研究の限界として,中規模公立病院診療技術部職員を対象とした単施設研究での実践報告であり,本研究の成果を他施設へ一般化するには注意が必要である.また,研修会導入前(2021~2022年)はCOVID-19の流行下であり,感染症流行前後の社会的情勢の変化が本研究結果に一定の影響を及ぼした可能性は否定できない.さらに,教育的介入期間が約20か月であったことから,教育効果の持続性や病院全体への波及効果については十分に検証できていない.しかしながら,栄養管理室が初めて学会発表を行うなど,診療技術部における研究活動の質的変化が認められた点は特筆すべきと考えられた.一方で,大学との協働により,研修会の企画・運営を担った薬剤師自身にとっても,教育プログラムの設計や多職種への指導的関与を通じて学術的視点が強化され,研究活動への動機づけが高まるという副次的効果が得られた.この点は,地域医療機関における大学との連携が,受講者のみならず研修主導者側の能力向上にも寄与し得ることを示唆している.今後は中長期的なフォローアップや研究成果の質的評価を行い,教育的介入の効果をより精密に検証する必要がある.
以上のことから,薬剤師主導による多職種連携研修は診療技術部職員の研究活動への関心を高め,不安要因の軽減に加えて,学会参加や発表といった行動の促進や臨床研究への参画部署の拡大など,研究活動の広がりが認められ,本取り組みの有効性を支持する知見が得られた.本研究は,地域的制約や教育資源が限られた中小病院においても,大学のリカレント教育を活用した多職種合同による包括的研修プログラムにより,継続的な研究支援体制を構築し得ることが示唆された.今後は大学との連携を継続し,新たな教育プログラムおよび共同研究の機会を創出することで,診療技術部全体の学術的基盤の向上や研究活動の活性化に繋がることが期待される.
発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.