薬学教育
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誌上シンポジウム:事前学習・実務実習のアウトカムを測る
「事前学習・実務実習のアウトカムを測る」序文
鈴木 匡安原 智久
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2018 年 2 巻 論文ID: 2018-005

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平成25年に改訂された薬学教育モデル・コアカリキュラム1) の「F薬学臨床」は,医薬品の知識を習得し,薬物療法の理論を理解するという「モノ」を学ぶことが主体であった旧来の薬学部臨床教育から,「ヒト」に対応する薬剤師の実践的な臨床能力修得に向けさらに大きく舵をきった内容で構成されている.「薬剤師として求められる基本的な資質」 1) を身につけ実際の社会で医療や介護・福祉等に貢献できる薬剤師育成を目指した薬学部教育が全国の大学で行われてきている.

薬学部の医療人教育も医学部などを手本にここ数年で非常に進歩している.しかしながら,その「成果」はどのように担保されているのだろうか.薬学部で新しい医療人教育が広がっていく中で,その教育手法の開拓は進んできたが,その効果の評価はこれから本格的に行われなければならない.改訂モデル・コアカリキュラムは「学習成果基盤型教育」を掲げ,卒業時の目標も掲げられているわけであるが,その目標にどこまで到達したかを測定する方法はどうしたら良いのか.特に知識だけではない,実践的な臨床能力がどこまで身についたかを測定するには多くの課題が残っている2)

コアカリの改訂に伴い,大学から病院,薬局と連携して学習する薬学実務実習,その準備としての事前学習については,薬学実務実習に関するガイドライン3) が示され,その評価について,今まで薬学部では馴染みの無い「総合的なパフォーマンス評価」を導入して学生の能力向上を測定することとなっている4)

事前学習では実習生が参加・体験型の実務実習にすぐに対応できる状態かの評価を行い,実習施設に伝達していく必要がある.実務実習では先に実習を行う薬局での実習生の評価を,次に実習する病院に伝達して効果的な実習を行う必要がある.また学生個々の継続的な評価から実習方略の見直しも必要となる.実務実習ならびに事前学習に大きな影響を与える新しい評価方法については,その評価指標,評価方法,評価の妥当性などを順次検討していく必要があるが,それが進んでいるとは言い難い現状である5)

本シンポジウムでは,薬学臨床教育の重要なカリキュラムである事前学習,実務実習の新しい評価の様々な試みを紹介いただき,その効果や妥当性などを検討した結果を持ち寄ることで,改訂コアカリに準拠した事前学習,実務実習の評価について具体的に考察することを目的とした.

本シンポジウムで発表された事前学習での「薬剤師としての実践的な臨床対応能力」の習得について学習効果を測定し,実務実習での検証を進めた試み,薬局実務実習での具体的な「ルーブリック評価」の導入検証,そして病院実習での「パフォーマンス評価」の導入検証の事例は,今後の薬学実務実習における新しい評価の効果と課題を提示している.

本シンポジウムを通して,さらに具体的な検討を重ね,薬学臨床の実践的な臨床能力を評価し,アウトカムを測定するためのより良い方向性を見出して行く必要があると考えている.

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© 2018 日本薬学教育学会
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