卒前医療者教育ではProblem-Based Learning(PBL)等の学習者のアクティブ・ラーニングを促す教育手法が広く導入されてきた.これまでは,その教育効果を測定するために量的研究が多くなされてきたが,そこでの学生の学習経験や学びを深めていく過程を探索した質的研究は十分に実施されていないのが現状である.質的研究の目的は,現場や当事者内で実際に「何が」「どのように」「なぜ」起こっているのかを深く理解することにあり,その研究の視座は対象となる事象のプロセスにある.つまり,学習プロセスの検証において,学習者や教育者の個々の気持ちや認識,信条,価値観に加えて,学習者間や学習者-教育者間の動的で相互作用的な関係性を捉えることが重要になる.本稿では,教育現場の参与観察やインタビュー調査によって得たデータを分析した質的研究の紹介を通して,質的研究が目指すものやそれによって見えてくるものを考察していく.