薬学教育
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誌上シンポジウム:ろう者・難聴者に対する無意識的なバリアはどこから作られているのか?
なぜ“障害の社会モデル”の視点が 重要なのか
―公正な医療にむけた薬学教育とは―
大熊 理恵子
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2021 年 5 巻 論文ID: 2020-030

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抄録

手話を母語とする聴覚障害者(以下,ろう者)と医療者との間のコミュニケーションはほとんど成立していない.医療者は通じたと思っていても,実際は違うケースが多数存在する.そのため服薬アドヒアランスの低いろう者の患者さんは多い.彼らの多くは,医療者側への疑問や不安を抱えたままである.そして,ろう者の患者さん本人を置き去りにし家族や通訳者らとだけで話を進めてしまうケースも多い.障害者をどこか劣った者と見なし,本人との意思疎通は難しいと決めつけ放棄してしまうのではなく,障害者の「障害」は「社会的障壁」であることを踏まえて,どんな人とでも直接,意思疎通をもつことは可能と考え,実践してゆかねばならない.国連から提示された障害の「社会モデル」と合理的配慮を念頭に,その視点を持つ薬剤師を育成してゆく中で,障害当事者の話を聞き,かつ,ろう学生が共に学べる大学のバリアフリーを徹底させてゆくことが求められているだろう.

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© 2021 日本薬学教育学会
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