薬学教育
Online ISSN : 2433-4774
Print ISSN : 2432-4124
ISSN-L : 2433-4774
特集:COVID-19パンデミック下での薬学教育~レジリエントな教育システム構築に向けて~
参加型演習科目「臨床心理学の活用」の遠隔授業での実施
~オンラインを活用した教育システムの構築~
田中 佐知子加藤 里奈小林 如乃小林 文山本 仁美
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 5 巻 論文ID: 2020-073

詳細
抄録

本学の5年次演習科目「臨床心理学の活用」は,患者とのコミュニケーション能力向上を目指して構築されたが,新型コロナウイルス感染症拡大により対面でのロールプレイング実施が困難と判断し,令和2年度はオンライン上の演習として再構築した.オンライン講義後,教員がロールプレイを実施している動画を学生が評価・考察してレポートとし,それを教員が評価した.演習終了後にアンケート調査を実施し,オンライン講義が有効かとの質問に95.5%の学生が有効と評価した.また,ロールプレイ動画を見て考える学修方法は有効かとの質問に91.5%の学生が有効と回答した.理論に裏付けされたコミュニケーション事例の視聴と考察は,遠隔授業においても,患者との良好な関係を構築するスキルの学修方法となり得ることが示唆された.本演習に学生自身のロールプレイング実践を加えることにより理論の理解と,パフォーマンス修得を可能にするものと思われた.

Abstract

This study examined an online educational system for pharmacy students. We hold an advanced clinical psychology class for 5th year students to gain competency in communication skills through normal in person classes. However due to the COVID-19 pandemic, we were unable to hold normal in person classes to practice role-play exercises and had to adjust to online classes in 2020. In these sessions, students participated in online psychology lectures, and examined videos of role-play exercises, which included videos about patients’ care, demonstrated by faculty members, and reported their opinions. The reports were then evaluated by faculty members. A questionnaire survey was conducted to determine whether online classes were useful. The results indicated that 95.5% of 176 pharmacy students answered positively and 91.5% of them found it useful to watch the role-play exercise videos and provide feedback. We believe that it is possible to change the learning methods of role-play exercises for students to gain competency in theoretical communication skills to build a good relationship with patients as pharmacists. Further, we think that it is possible to understand patients’ psychology and gain competency in performance, through these online learning tools, in addition to students’ role-play exercises.

はじめに

今般,新型コロナ感染症拡大により,対面講義は密を回避することが出来ないため,文部科学省は遠隔授業の活用推進を大学に求めた1).遠隔授業は,オンライン上で講義や演習を提供することができるため,学生はストリーミング再生で繰り返し視聴可能で,自分のペースで学修を進めることができるのが利点である.またウェブ上でのライブ講義は,リアルタイムで学生へのフィードバックが可能である.スモールグループ討議や,チャットルームの活用などの共同学修も可能で,双方向性のe-ラーニングは,これまでの対面講義の可能性を拡げるものである.これまで日本の薬学教育においては伝統的な対面講義が多かったが,コロナ禍において世界の潮流に追いつけるかもしれない.

平成25年に改訂された薬学教育モデル・コアカリキュラム2)「A基本事項」においては,薬学生が薬剤師として身につけるべき生命・医療の倫理,コミュニケーションとチーム医療,患者中心のチーム医療,医療安全,薬学の歴史及び生涯学習などを学ぶ領域であり,プロフェッショナリズムの醸成に重要な領域となっている.これらの領域は単なる知識教育で修得できるものではなく,アウトカム基盤型教育(OBE)によって確実に涵養されると考えられる.本学では改訂モデル・コアカリキュラムに基づき,医療人である薬剤師としての理解を深め態度を醸成する科目の1つとして,実務実習直前の学生を対象とした演習科目「臨床心理学の活用」を令和元年より新たに開講した.本演習では,臨床心理士の講義の後に,学生同士が交互に薬剤師役および患者役となってロールプレイングを行い,学生同士や教員からフィードバックするという方略で実施していた.しかしながら,新型コロナウイルス感染症拡大により対面でのロールプレイング実施が困難と判断し,令和2年度はオンライン上の演習として再構築した.「A基本事項」領域の科目におけるオンライン演習授業の工夫とその成果,そして今後のより良い演習実施の示唆となる方向性も見えてきたので報告する.

演習の概要

「臨床心理学の活用」の一般目標は,「人の行動や心の状態を多面的および分析的に捉え患者に寄り添いつつ治療に必要な偏りのない情報を十分に得る信頼関係を構築できる様になるために,痛みをはじめとする様々な症状を抱える患者の心理に関する基礎的知識と実践的スキルを修得する.」である.

演習は1コマ90分を2コマずつ計5回,全10コマを令和2年4月27日から5月14日の約2週間に集中して実施した.遠隔授業はGoogle Classroomを用い,繰り返し受講可能な形式でストリーミング配信を行った.表1に本演習の概要を示した.第1,第3および第5回目の内容は前年度と同様であったが,対面授業ではなくオンラインのストリーミング配信となった.前年度は第2および第4回目で学生同士が薬剤師役と患者役になってロールプレイング演習を実施した.しかし本年度は,教員が薬剤師役と患者役としてロールプレイングしているコミュニケーション事例動画を学生がルーブリック評価表(表2)を用いながら評価し,考察をレポートとして提出した.本評価表は,3年次「高齢者コミュニケーション演習」「調剤・患者対応入門実習」,4年次「実務実習事前学習」で使用しており,臨床心理学で用いられる[Ask-Tell-Ask]や[NURSE]等3) の技法を網羅しており,患者のナラティブを引き出すためのパフォーマンス目標が段階的に示されている.レポート課題は表3に示した.

表1 「臨床心理学の活用」の演習概要
演習日 コマ 令和2年度 令和元年度
学修方略 概要
1 1・2 臨床心理学講義
オンライン
・患者・家族対応に活用できる諸理論
・信頼関係構築のスキル向上に関するテクニックの基礎知識
対面講義
2 3 臨床心理学講義
オンライン
・薬剤師が対患者コミュニケーションで意識すべきポイント
・コミュニケーション技法
 [Ask-Tell-Ask:感情表出の誘導]
 [NURSE:良好な関係構築・表出された感情の処理や操作]3)
・対面講義
・ロールプレイング
 学生が,薬剤師役,患者役,観察者となる.患者役は,自分で設定したがん患者像を演じ,薬剤師役は患者のナラティブを引き出す対応を行った.
 ロールプレイング実施後に薬剤師役の感想,ルーブリック評価表(表2)を用いた観察者のフィードバック,患者役のシナリオを共有し,患者対応の改善についてSGDを行った.
4 課題1
コミュニケーション事例動画の視聴と評価
・コミュニケーション事例動画AおよびB(がん患者と薬剤師)を視聴し,薬剤師役についてルーブリック評価表(表2)を用いながら評価・考察する(レポート1,表3
3 5・6 臨床心理学講義
オンライン
・レポート1のふり返り
・がん患者の心理状態の変化
・心理療法の基礎理論
・精神障害の基本事項
対面講義
4 7 臨床心理学講義
オンライン
・コミュニケーション事例観察において意識するポイント
・ケアする人の対話スキルABCD4)
・対面講義
・精神障害患者の患者設定を学生が事前に作成し,その患者役を演じる学生と薬剤師役の学生がロールプレイングを実施した.実施方法は上述と同様である.
8 課題2
コミュニケーション事例動画の視聴と評価
・コミュニケーション事例動画CおよびD(精神障害患者と薬剤師)を視聴し,薬剤師役について評価・考察する(レポート2,表3
5 9・10 臨床心理学講義
オンライン
・レポート2のふり返り
・薬剤師が対患者コミュニケーションで意識すべきポイント
・オンライン試験(知識)
・レポート
対面講義

 

表2 コミュニケーションルーブリック評価表
ナラティブを深めるためのルーブリック評価表(学生パフォーマンスの目標)
教科名:2020年度臨床心理学の活用  出席番号  氏名
  月  日
高い     低い ロールプレイ
AorCの観察後
ロールプレイ
BorDの観察後
4 3 2 1
態度
(姿勢,距離感を含む)
□相手が心地よく感じる態度で接する(相手を尊重する姿勢,気持ちに寄り添う,言葉使い) □相手に不快感を与えない態度で接する(威圧的,腕を組む,自分本位,失礼な振舞い) □目的を述べることができる
□挨拶や自己紹介が適切にできる
身だしなみが整っている(髪,爪,貴金属,服装など)
(悪い第一印象を与えない)
表情
(顔の動き,目線を含む)
心境に合わせて表情を変えながら対応できる □適度なうなずき
□適切なアイコンタクトを用いながら対応できる
□相手の目を見て
やわらかな表情で対応できる(緊張コントロール)
相手の目を見て対応できる(同じ目の高さなど)

(大きさ,トーン,抑揚)
□状況に応じて大きさ,トーン,抑揚を変えながら話すことができる(相手と自分の感情に合わせて) □明瞭に話すことができる(丁寧でわかりやすい言葉で話すことができる) □相手が聞き取りやすいスピードと大きさで話すことができる 聞きやすい大きさで話すことができる
傾聴 □自分の解釈を相手に伝えることで,相手の言葉にしきれない気持ちや思いを引き出すことができる(期待・本音・葛藤など) □相手に興味を持って話が深まる質問ができる(事柄の明確化)(感情の明確化) うなずきやあいづちを入れながら相手のペースに合わせて聞くことができる(相手に関心を持って受け入れられる) □相手の話を遮らずに聞くことができる(相手に関心を持てる)
共感
(共感的理解)
□相手のナラティブと自分の解釈をすり合わせて,相手のこれまでの背景,本音までを理解することができる □相手の感情・思い,事柄を明確化して,自分の解釈を相手に伝えて確認できる(すり合わせることができる) □相手の話しを要約して
感情・思いを確認することができる(共感的要約)
□相手の思いや感情をキーワードとして捉え,繰り返すことができる(共感的繰り返し)

 

表3 「臨床心理学の活用」レポート課題
レポート1
「がん患者」のコミュニケーション事例を見た上で,薬剤師が患者のナラティブを引き出すという視点について,以下の設問に答えてください.
【動画A 視聴後】
①上手にナラティブを引き出せたのはどこの部分であったか述べてください.
②自分なら,さらにより良くするため,どう工夫できるか述べてください.
【動画B 視聴後】
①患者のナラティブを引き出す機会を作れなかったのはどこの部分であったか述べてください.
②自分ならそれをどう工夫できるか述べてください.
レポート2
「閉所恐怖症」のコミュニケーション事例を見た上で,薬剤師が患者のナラティブを引き出すという視点について,以下の設問に答えてください.
【動画C 視聴後】
①上手にナラティブを引き出せたのはどこの部分であったか述べてください.
②自分なら,さらにより良くするため,どう工夫できるか述べてください.
【動画D 視聴後】言語および非言語的な視点も入れて考えてみよう
①患者のナラティブを引き出す機会を作れなかったのはどこの部分であったか述べてください.
②自分ならそれをどう工夫できるか述べてください.

1.課題1(動画AおよびB):女性がん患者と薬剤師

患者背景:ステージIIの胃がんを告知されたばかりの患者.医師からは,「手術をしてまずは胃がんを切除しましょう,転移はしてないと思うが,もし手術をしてリンパ節等に転移があれば,抗がん剤による治療も行います」と言われた.家族は夫,子供3人(大学生,高校生,中学生).パートの仕事あり.家事一切をやっており,子供達の食事や世話が心配.実家の母に応援を頼んだが,既に75歳で無理はできない.加療目的で本日入院.薬剤師は,持参薬確認のためベッドサイドで面談することになった.

2.課題2(動画CおよびD):閉所恐怖症の大学生と薬剤師

患者背景:閉所恐怖症の患者.最近,頭痛が続くため担当医師からMRI検査(脳腫瘍との鑑別診断)を勧められた.以前から,新学期等のように環境が変わると緊張型頭痛が頻回に出現する事があるが,これに対してはストレス性の症状(身体的ストレス反応としての頭痛)であるとの診断されている.親元から上京して一人暮らしを始めたばかり.閉所恐怖は,地下鉄に乗っていて地震が起き,電車に閉じ込められたことから始まっている.震えや冷や汗,声が出ないなどの症状が出る.MRIの検査は狭い空間に入ると聞き不安がある.薬剤師は頭痛薬の服薬指導をするところである.

3.動画内容の工夫

動画AおよびCは,薬剤師が傾聴の技法[Ask-Tell-Ask]および[NURSE]3),対話スキルABCD4) を活用し,共感的態度で患者対応をしている動画を作成した.一方,動画BおよびDは,傾聴や共感的態度が不十分な動画を作成した.各動画のパフォーマンス到達度は,表2で示したルーブリック表で評価すると以下の様になる.

動画A:態度,表情および声はレベル4,傾聴および共感はレベル3

動画B:態度,表情および声はレベル3,傾聴および共感はレベル2

動画C:態度,表情および声はレベル4,傾聴および共感はレベル3

動画D:態度および表情はレベル2,声はレベル3,傾聴および共感はレベル2

学生の遠隔授業に対する評価

1.アンケート調査の実施

今回初めてオンラインで実施した演習が有用であるか,学生アンケートにより明らかにすることを目的として,表4に記載した質問をGoogle formsを用いて行った.

表4 「臨床心理学の活用」演習をオンライン受講したことに対する学生へのアンケート調査
質問1-1 ネット配信講義は学修方法として有効だと思いますか.
質問1-2 上記質問に有効と回答した方に伺います.主な理由2つまで回答してください.
質問1-3 上記質問に有効でないと回答した方に伺います.主な理由2つまで回答してください.
質問2-1 ロールプレイング動画を見て考える学修方法は有効だと思いますか.
質問2-2 上記質問で有効と回答した方に伺います.その理由を教えてください.
質問2-3 上記質問に有効でないと回答した方に伺います.その理由を教えてください.

研究協力については講義中に説明し,ウェブアンケート上(Google forms)で同意を確認したところ,97.2%の学生より同意を得られた.同意を得られた学生176名のデータを解析に用いた.アンケート調査「ロールプレイング動画を見て考える学修方法は有効である」と回答したその理由(自由記述,150件)は,KH coder(Ver 3. Alpha. 17j)5) を用いてテキストマイニング解析した.アンケート調査に対しては共起ネットワーク分析を行った.

2.学生の遠隔授業に対する評価

「ネット配信講義は学修方法として有効だと思いますか」との質問には,「大変有効である」31.8%,「有効である」38.1%,「どちらかと言えば有効である」25.6%,「どちらかといえば有効でない」3.4%,「全く有効でない」1.1%と回答され,95.5%の学生がポジティブな評価をした(図1A).その理由について質問したところ,「何度でも視聴できる」85.9%,「集中して講義を受けられる」37.6%の回答であった.「有効でない」とした理由は,「授業を受けた気がしない(6名)」,次いで「学費に見合っていない(2名)」との回答であった.オンデマンド配信の授業は,学生の都合の良いタイミングで視聴する事ができ,また繰り返し視聴できる所が高く評価されたと考えられる.また,大学などの講義室での対面授業と異なり,自宅での学修となるので集中できることもメリットとして挙げられた.

図1

「臨床心理学の活用」アンケート調査結果

アンケートに回答した学生176名

「ロールプレイング動画を見て考える学修方法は有効か」との質問に「大変有効である」22.2%,「有効である」37.5%,「どちらかと言えば有効である」31.8%となり,91.5%の学生が有効だと回答した(図1B).「どちらかといえば有効でない」と回答した学生は8.5%であった.学生のレポート内容は,詳細にロールプレイングを評価し,「自分ならどうするか」という課題にも真摯に向き合っている姿勢が読みとれ,ロールプレイングを実施していた前年度のレポートよりしっかりと考察されていた.有効と回答した理由(短文回答の自由記述)150件をテキストマイニング解析した.自由回答の内容を特徴づける抽出語は「客観的」「ロールプレイ」「考える」「自分」「良い例」「悪い例」「動画」「比較」「観察」「患者」などであった.共起ネットワークの結果(図2)に基づく代表的な回答として,ロールプレイング動画は何度も視聴できるので,「客観的に観察することができ,患者の非言語メッセージを見落とさずに拾うことができた」や「ロールプレイングの良い例と悪い例を順に視聴できるので比較しやすかった」などが挙がった.またレポート課題に「自分ならどの様に改善するか」という問いをしたことも良かった様に思われた.「レポートを書くことで自分は患者さんとどの様に関わるかをイメージトレーニングできた」など,学生のアンケート自由記述から高評価となる理由が確認できた.有効でないと回答した理由は,実際にロールプレイングを体験しないと実践能力がつかないという理由であった.

図2

「ロールプレイングの動画を利用した学修方法は有効である」と回答した理由についての共起ネットワーク解析

前年度は,学生同士が患者役・薬剤師役としてロールプレイングを体験していたが,講義で学修した理論を実際のロールプレイングでどの様に表現したら良いかがわからないまま実践だけをしていた状態と考えられた.しかしながら本年度は,ロールプレイング動画の視聴により,理論に裏付けされたコミュニケーション事例を見ることで,どの様なパフォーマンスができれば患者との良好な関係構築につながるのかを深く学修することにつながった.ロールプレイングの実践は出来なかったが,レポート課題で「自分ならどの様に工夫できるか」を考えることで,実務実習で傾聴や共感的理解のパフォーマンスをどの様に実践するかをイメージできたようである.

今後の課題

1.オンライン(視聴型)授業の利点と課題

コロナ禍におけるネット配信の講義に関して,学生の95%は肯定的に捉えており,登校しての対面講義となれば密を避けられない本学にとっては,その回答は安堵できる結果となった.本科目の目標「人の行動や心の状態を多面的および分析的に捉え患者に寄り添いつつ,信頼関係を構築できる様になるために,患者の心理に関する基礎的知識と実践的スキルを修得する.」の基礎的知識の修得はオンライン授業でも十分可能であった.

2.コミュニケーション事例動画(ロールプレイング動画教材)を用いる利点と課題

本年度は学生同士のロールプレイングが実施できなかったことで,「臨床心理学の活用」は参加型とは言い切れない演習となった.しかしながら,「ロールプレイング動画を見て考える学修方法は有効か」との質問に対して有効と回答した割合は91%と高かった.ロールプレイング動画を教材として学生に評価させるという方法は,コミュニケーション技法の知識と薬剤師としてのパフォーマンスを結びつける学修方略としてその有効性が学生に認識されたと推察された.我々教員は,これまでロールプレイングを実践させることがOBEでは優先されると考えていた.しかし,学生のレポートからは,詳細にロールプレイングを評価し,そして自分ならどうするかという課題にも真摯に向き合っている姿勢が読みとれ,ロールプレイングをさせていた前年度よりしっかりと考察されていた.ロールプレイング動画の評価のみに留まらず,実務実習における患者対応を想定して自身が目指すべきコミュニケーション能力の目標を設定する姿勢がみられた.この演習は自己研鑽意識の向上にも寄与していると推察された.ロールプレイング動画教材を客観的に見て振り返る学修の有効性が明らかとなったので,これは今後も続けていくべき方略と考えられた.GIOに挙げていた「実践的スキルを修得する」の部分が今回実践出来なかったが,双方向性オンラインの学生ロールプレイング演習を組み入れることで,遠隔でも実践的スキルの修得も可能である.ロールプレイング動画の視聴による客観的なパフォーマンス評価を実施した後,学生自身がロールプレイングを行うことで,患者とのコミュニケーションスキルを具体的に捉えた上で,スキルを実践し修得する演習科目に再構築できると考えている.

今後,遠隔授業を当たり前とした教育改革が進む中でも,患者の気持ちにより添うことができる医療人教育をどの様に構築していくか,授業を振り返りつつ検討を進めていきたい.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

文献
 
© 2021 日本薬学教育学会
feedback
Top