従来,青年期の人格形成にとって,発達の観点からアイデンティティが注目されていた.それは,薬学教育においても例外ではない.高等教育機関にとって学生の人格形成支援は大きな役割の一つであり,社会からは学生に対してアイデンティティの視点から総合的な援助を行うことが求められている.本シンポジウムは「学生のアイデンティティ発達に大学はどこまで関われるのか」というタイトルで,大学が教育的な学生支援としてアイデンティティをどうとらえればいいか検討した上で,学生との向き合い方について,学生支援の現場にいる専門家に発表してもらい議論を深めた.そこでは,主体性の視点,自己受容,気づきのプロセスに寄り添う,関わり続ける,安全な空間と時間を作り上げることの重要性が指摘された.議論のなかで,支援者は主体性を育む方法を模索し,自身が安心して振り返る機会を提供し,その方法を模索し続けていく必要性が確認された.