論文ID: 2024-012
大阪市北区薬局実務実習では,全指導薬剤師によって,将来の地域包括ケアシステムの一員となるべく薬局薬剤師を育成するためにどのように実習期間を有効に使うか協議を重ねてきた.各薬局施設で実習内容の濃淡があるため,実習生も実習内容の偏りがありがちになっていた.それらを解消するために,受け入れ薬局指導薬剤師は当然のこと,他の指導薬剤師ではない薬局にも要請をかけている.それはOTC販売・学校薬剤師・在宅医療等多岐に渡る.又その他にも,企業勉強会への参加の際にMRさんや地域内にある薬品卸会社の勤務薬剤師との懇談,薬品物流センターの見学等地域一体になり実習を有意義に進めるように努力している.今後も地域薬局のあらゆる役割を感じてもらうために,指導薬剤師同士で協議を進めたいと考える.
In the practical training in pharmacies in Kita-ku, Osaka City, all supervising pharmacists have repeatedly discussed how to effectively use the training period to foster pharmacy pharmacists who will become future members of the community comprehensive care system. Since each pharmacy has its own practice content, practice students also tend to be biased in their practice content. In order to resolve these issues, we are requesting not only the supervising pharmacist of the receiving pharmacy, but also other pharmacies that are not supervising pharmacists. This includes OTC sales, school pharmacists, and home healthcare. In addition, when participating in company study sessions, we also meet with MRs and pharmacists who work for drug wholesalers in the community, tour drug distribution centers, and make other efforts to unite the community and make the training meaningful. In the future, we would like to continue discussions with pharmacist advisors to have them understand the various roles of community pharmacies.
関西圏で薬学部を擁する大学は,国立・私立で15大学に及ぶ.そのうち令和5年度大阪市北区薬剤師会には10大学25名の薬学実習生を13薬局・4病院で受け入れた.
従来より(一社)大阪市北区薬剤師会の学生実習担当の役員一人が,近畿調整機構や大阪府薬剤師会からの受け入れ学生のリストを受け取り,大阪市北区内での割り振りや,実習期間中の学生の修学手続き等を担ってきていたが,その業務は多岐に渡り,通常業務まで謀殺されている状況であった.そこでその業務の一部を,(一社)大阪市北区薬剤師会の事務局に委託する型を取った.その対価として,学生受け入れ薬局から負担金を徴収し,手数料として事務局に支払っている.それにより,担当役員の仕事量も減り,平常状態に戻る事となった.徴収金額については協議により,当面学生一人当たり3,000円とする事とし,状況を見て変更も可能としている.この金額で約2年が経過しているが,不足も過剰もなく進行している.この金額の中には,指導薬剤師間の情報交換会や大学・連携病院との連絡会の際に使用,会議室の室料等も含まれている.今後金額の見直しや,使途先については,情報交換会等で協議し,流動的に運営する事となっている.推移を見守りたい(図1参照).
会費に至る経緯
各薬局による実習内容の偏りを少しでも解消すべく,大阪市北区薬剤師会の会員薬局の協力を得て,実習生の短期受け入れを実施している.その内容として,学校薬剤師による検査実施時や在宅訪問時の同行,OTC販売経験等が対象になっている.これらを実施するにあたり,研修の日時・場所・内容・担当者・実習生等の情報共有を確実にするために,独自の依頼書(図2参照)を作成している.また行政が行っている休日急病診療所の施設見学や地域の健康フェアにも積極的に参加を勧めている.これらには別途2,500円を受け入れ薬局に,担当指導薬剤師から支払う事としている(図3参照).その他(一社)大阪市北区薬剤師会主催の研修会への参加,薬品卸会社の物流センター見学や卸薬剤師との懇談,多職種とのグループワークへの参加,MRとの懇談,オンライン学習成果発表会等を企画し実行している.これらには費用は発生しない.実習生からは概ね良い印象を持っている感想が寄せられている(図4参照).
同行研修依頼書・連絡票
同行研修費用あり
同行研修費用なし
以下,実習生の感想を列記する.感想を示すにあたっては,学生へ説明後,個人が特定されないように匿名化で行い,倫理的配慮を実施した.
薬品卸会社・物流センター見学の感想
・卸業者の意義を学ぶことができた.
・保管方法,ピッキング,配送,薬品の流れを学べた.
・災害時の対策も行われていることを知った.
・卸業者で働く薬剤師の姿を見て,将来の職業の選択肢のひとつとしてとらえられた.
在宅医療グループワーク参加の感想
・訪問看護師・ケアマネジャーと薬局薬剤師の関わりや役割を学べた.
・訪問看護師は入退院に際し病院との話し合いに参加できているのに,薬局薬剤師はなかなか参加できないことを残念に思った.
・薬局薬剤師が在宅医療には必要だと感じたが,自ら働きかけないと介入していけないことが,始めるきっかけとしては困難だと感じた.
・お薬手帳を通じて重複投与の予防,残薬チェック等,薬局薬剤師が介入することで,ケアマネジャーの方々から助かるとの意見が聞けて,在宅医療における薬局薬剤師の重要性を感じた.
・薬局に在宅医療を説明する掲示物や地域に説明する機会があればよいと思った.
オンライン学習成果発表会の感想
・事前に練習していたが,本当に緊張して手が震えたため,スライド発表の際に表示していたポインターを動かせなかったのが残念だった.
・質問に対して,焦っていて拙い日本語だったと思うが,対策していなかった質問にもわからないではなく,その場で考えることができてよかった.
実務実習制度が始まって15年が経過したが,その間の薬局の形態は大きく変化していないと思われる.そこには若い感性の導入が不可欠だ.未来の薬局を築くべく,新しい時代の薬剤師の誕生の一助となるよう,我々も切磋琢磨し,様々な事を企画実行していきたいと思う.
発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.