薬学は幅広い高度な知識と技術を取り扱う学問領域であり,学生が主体的に学び続ける姿勢を持つことが不可欠である.本稿では,学習意欲(学習動機づけ)に関する心理学の理論や研究知見を概説し,薬学を含む医療系学生を対象に実施した2つの調査研究の結果を報告する.調査の目的は,学習動機づけの要因と学習行動および学業成績の関連を検討することであった.学習動機づけの要因として,課題価値(調査1-1),達成目標(調査1-2),努力とその結果の関係性についての信念(調査2)を取り上げた.研究の結果,学習内容に対する興味価値や獲得価値,マスタリー目標やパフォーマンス接近目標,そして努力の価値化と持続的努力への信念が,学習行動や学業成績と正の関連があることが示された.