日本公衆衛生看護学会誌
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研究
一人暮らし男性高齢者への民生委員が行う支援内容
青柳 玲子小林 恵子齋藤 智子成田 太一
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2022 年 11 巻 1 号 p. 37-45

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Abstract

目的:民生委員が行う一人暮らし男性高齢者への支援内容を明らかにすることとした.

方法:A市の民生委員10人に半構造的インタビューを行い,質的記述的に分析した.

結果:支援内容は,【警戒心を和らげ拒否されないよう手を差し伸べる】【生活や健康へのリスクを察知し回避するよう支援する】【孤立に寄り添い家族や地域とつなぐ】【最後の生命線の砦となり緊急時の対応を行う】【地域の暮らしの中で見守りを行う】【日頃から健康や生活の維持・継続を後押しする】【地域包括支援センター等と連携しタイムリーにサービスにつなげる】であった.

考察:民生委員は,地域住民の身近な相談相手や見守り役として行う支援を基盤にしながら,一人暮らし男性高齢者の特徴を捉えた支援を行っていた.支援内容を民生委員間や関係機関と共有することにより,支援が難しい一人暮らし男性高齢者への支援の具体的な実践や連携の場において活用できると考えられる.

Translated Abstract

Objective: We aimed to clarify the details of support provided by welfare commissioners to older men living alone.

Methods: We conducted semi-structured interviews of 10 welfare commissioners in City A and analyzed the responses by employing a qualitative descriptive approach.

Results: The details of support included the following: “reaching out in a way that reduces wariness and rejection,” “providing support to detect and avoid risks to lifestyle and health,” “preventing isolation by connecting them to their family and the community,” “being a dependable lifeline that can respond in emergencies,” “watching out for them in the community,” “regularly helping them maintain and continue a healthy lifestyle in their daily life,” and “coordinating with the Regional Comprehensive Support Center to connect them with services in a timely manner.”

Discussion: Welfare commissioners provided support to older men living alone by connecting them with their family, watching out for them in the community, and other means. The findings of this research can be valuable data for welfare commissioners and welfare organizations in providing support and cooperation for older men living alone, who are difficult to support.

I. 緒言

わが国の65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は顕著であり,1980年には男性約19万人,女性約69万人であったが,2040年には男性は約19倍の356万人,女性は約8倍の540万人となると予測され,特に男性の一人暮らし高齢者の増加が著しい(内閣府,2020).男性の一人暮らし高齢者は女性に比べて,死亡リスクが高いこと(藤原,2017)や社会的孤立のリスクが高い(小林ら,2016斉藤ら,2009)こと,セルフ・ネグレクトのリスクがある(岸ら,2011)こと等が報告されている.

このような健康や生活のリスクを抱えているにもかかわらず,一人暮らし男性高齢者は自律心が強い傾向がある(河野ら,2009)ことや,地域における交流の乏しさがある人が多い(田高ら,2017)ことなどの特徴が明らかになっている.さらに,一人暮らし男性高齢者は支援を拒否することが多く,保健師や地域包括支援センターなどの専門職による介入や支援を困難にしている課題も指摘されている(ニッセイ基礎研究所,2011).このように,サービスや支援に拒否的な一人暮らし男性高齢者は,支援の優先度の高い対象であり,彼らへの効果的な支援のあり方の検討は急務である(岡本ら,2017).

一方で,高齢者支援の課題として介護や日常生活上の支援等を担える家族や親族がいない世帯が増加しており,それを補うために,公的サービスだけでなくボランティア等の日常的な生活支援の充実が求められている.このようななか,民生委員は地域の高齢者支援において,常に地域住民の見守り役や相談相手として大きな役割を果たしてきた(谷川,2018).

民生委員は,厚生労働大臣の委嘱によって選出される非常勤特別職の地方公務員(本多,2016)である.行政の協力機関としても位置づけられていることから公的機関と連携しやすく,そのため,地域の高齢者支援においてやや踏み込んだ対人支援を行いやすい(杉原,2018)という利点がある.また民生委員は,同じ地域に住む「良き隣人」として住民に信頼され,身近な相談相手として訪問を基本に活動していることから,自ら支援を求めにくい一人暮らし男性高齢者への支援も大きく期待されている(全国民生委員児童委員連合会,2017).実際に民生委員活動調査によると,高齢者支援は民生委員の分野別活動実績の上位を占めている(日本総合研究所,2013全国民生委員児童委員連合会,2017).A市において民生委員は,一人暮らし高齢者を重点対象者として定期的に訪問等を実施しており,全国でも同様の活動をしていると推察する.

一方で,民生委員活動は個人の力量や判断に委ねられていることが多く,その職務内容が不明確である(嘉陽,2011)こと,活用できる情報や知識として共有化されていない(本多,2016)ことが課題となっている.そこで,民生委員の支援内容を明らかにするとともに,活用できる情報や知識として整理し,共有していく必要がある.

本研究によって,一人暮らし男性高齢者への民生委員の支援内容を明らかにすることにより,民生委員個人で工夫していた実践知を民生委員間で共有することができ,効果的な支援方法を見出す手がかりとなると考える.

以上のことから,本研究では,一人暮らし男性高齢者への民生委員が行う支援内容を明らかにすることを目的とする.

II. 研究方法

1. 用語の操作的定義

本研究では,支援内容を「本人が在宅生活継続のために,民生委員が必要であると判断することやその判断に基づき提供する行為,具体的手法」とする.

2. 研究デザイン

本研究では,一個人に内在している民生委員の一人暮らし男性高齢者への支援に着目し,その具体的な支援内容を明らかにするため質的記述的研究デザインとした.

3. 研究協力者及び選定方法

研究協力者は,A市において民生委員の就任期間が5年以上で,一人暮らし男性高齢者への支援活動の経験がある者とした.

研究協力者の選定は,A市民生委員児童委員協議会連合会会長に依頼し仲介者である地区民生委員協議会会長から紹介を受けた民生委員に対し,個別に文書及び電話にて研究に関する説明を行い,調査協力の可否を確認の上,承諾の得られた10人とした.研究協力者には,一人暮らし男性高齢者に対して民生委員として必要な支援を行った1~2例を想起してもらい,事例の概要と自身が行った支援の詳細を語ってもらった.

なお,A市は地域包括ケア計画によると高齢化率が28.0%,高齢者がいる世帯のうち一人暮らし高齢者世帯の割合は21.5%であり,全国平均の高齢化率27.7%や一人暮らし高齢者世帯率27.1%(内閣府,2018)と類似した高齢化の状況である.また,A市では民生委員に担当地区の65歳以上の一人暮らし高齢者名簿を提供し,民生委員はその情報に基づき実態把握を行い支援の必要な一人暮らし高齢者を訪問対象としている.

4. データ収集方法

インタビューガイドに基づき2019年7月から10月に,半構造化面接法による個別インタビューを行った.日時や場所は研究協力者の希望に合わせて設定し,一人あたり1回,平均時間は86.3分(51分~120分)であった.

インタビュー内容は,研究協力者の基本情報(年齢,民生委員の就任期間,受け持ち地区の全年齢担当人口・世帯数,現在の継続訪問対象者数),事例の概要(年齢,婚姻状態,子どもの有無,別居家族との交流,生活環境,健康状態,日常生活状況,利用しているサービス,別居家族が行っているサポート),事例への民生委員の支援内容(把握したきっかけ,事例が抱えていた問題,民生委員の支援内容,支援の結果)である.インタビュー内容は研究協力者の許可を得て録音し逐語録を作成した.

5. 分析方法

録音データから逐語録を作成し,質的帰納的に分析した.「一人暮らし男性高齢者への民生委員が行った支援内容」についての文脈を抽出し,研究協力者の語りを意味内容を損なわない範囲で文脈を要約してコード化した.コードの類似性と相違性,意味内容について検討を重ね,サブカテゴリ,カテゴリを生成した.分析過程においては,質的研究の実績がある複数の共同研究者と分析内容の検討を重ね洗練するとともに,研究協力者には逐語録及び結果を提示して,内容に関する妥当性を確認した.

6. 倫理的配慮

仲介者及び研究協力者への依頼においては,研究の趣旨,目的,方法,研究協力による利益・不利益,研究協力・途中撤回の自由,個人情報の保護について文書と口頭で説明し,同意書への署名により同意を得た.研究開始にあたり,新潟大学「人を対象とする研究等倫理審査委員会」の承認(2019年5月24日,承認番号第2019-0044号)を得た.

III. 研究結果

1. 研究協力者の概要

研究協力者の内訳は,性別では男性7人,女性3人,平均年齢は69.6歳であった.民生委員の就任期間は平均11年10カ月(最短期間5年8カ月,最長期間26年9カ月)で,受け持ち地区の全年齢担当人口は約290人から1,350人,継続的に定期訪問している一人暮らし高齢者の対象者数は平均11.1人(最少5人,最多15人)であった.

2. 研究協力者が語った事例の概要(表1
表1  民生委員の支援事例(13事例)の概要
NO 年齢 把握経路 支援のきっかけ ①婚姻状態,子どもの有無,②健康状態,③事例が抱えていた問題 連携機関
1 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳,本人 本人から配食サービスの相談があり支援開始 ①既婚(5年前に妻死亡),子どもは県内に娘2人.②要介護2:脳梗塞後遺症(左半身不随)・心疾患.③頻回な転倒や心疾患の病状悪化を我慢して受診を先送りし医療につながらない.家族と疎遠で頼る人がいないため,頻回な救急搬送を民生委員が付き添う. 地域包括支援センター,居宅介護支援事業所(ケアマネージャー),訪問介護事業所,消防署,病院
2 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳 妻の施設入所により一人暮らしとなり見守り開始 ①既婚(妻は施設入所),子どもは近くに住む息子1人.②自立:腰痛あり.③腰痛悪化により,一時,外出不可能となるが支援を求めない. なし
3 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳 妻の施設入所により一人暮らしとなり支援開始 ①既婚(妻は施設入所後死亡),子どもは県外に息子と娘2人.②要支援1:歩行困難があり杖歩行レベル.老人憩の家での入浴や,買い物などは自分の運転で外出.③入浴や食事を目的にデイサービス導入を勧めるが拒否. 地域包括支援センター
4 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳,地域包括支援センター 認知症・心疾患の悪化に伴い支援を再調整 ①既婚(妻とは離婚),娘がいるが交流は全くない.②要介護1:心疾患・認知症.③認知症の進行及び病状悪化による救急搬送が頻回にあり.地域包括支援センターから本人の安否確認ができないと緊急時連絡先である民生委員に連絡あり. 地域包括支援センター,居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)
5 80歳代 近隣の親戚 妻の施設入所により一人暮らしとなり支援開始 ①既婚(妻は施設入所),子どもは県外に息子3人.②要支援2:糖尿病・甲状腺がん・肺気腫治療中.③歩行困難・尿漏れがあるためサービス導入を勧めるが拒否 地域包括支援センター,居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)
6 70歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳 歩行状態の悪化に伴い支援を再調整 ①未婚,子どもなし.②生活保護受給者,要支援2.③脚の疼痛を我慢してベッド上の生活となるが助けを求めず医療機関も未受診. 地域包括支援センター,居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)
7 90歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳 妻の施設入所により一人暮らしとなり支援開始 ①既婚(妻は施設入所後死亡),子どもは県外に娘2人.②要介護2:脳挫傷後遺症あり.③自立心が強く一人暮らしを続けていたが,交通事故に遭遇後,一人暮らしが不安になり施設入所を希望 地域包括支援センター,居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)
8 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳,新聞配達店 新聞配達店からの通報により緊急対応 ①既婚(妻10年前に死亡),子どもは県外に娘1人.②自立:車を運転して外出.③新聞配達店より,緊急時の連絡先である民生委員に,溜まっている新聞や玄関先の呼び掛けに応答がない異変の情報連絡あり. 地域包括支援センター,A市安心見守りネットワーク事業者(新聞配達店),警察署
9 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳,近隣者 近隣からの通報により緊急対応 ①既婚(妻は県外に別居),子どもは県外に息子と娘2人.②自立:車を運転し外出.③近隣者からの民生委員への通報により,郵便受けに溜まっている新聞や夜に明かりがつかない自宅の異変を把握 警察署,消防署,自治会
10 70歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳 妻の死亡により一人暮らしとなり支援開始 ①既婚(妻は3年前に死亡),子どもは県内に娘1人.②自立:週3回の人工透析のための通院や,買い物などは自分の運転で外出.③民生委員の訪問には拒否的で顔を見せない,家族や地域とは交流がなく孤立状態 地域包括支援センター
11 80歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳,本人 本人から経済的困窮の相談があり支援開始 ①既婚(1年で離婚し子ども無),②要支援2:高血圧・糖尿病,知的に低い.③生活保護の相談をきっかけに,老朽化による劣悪な住宅環境に我慢して生活していた問題も発覚,体調不良があっても医療機関は未受診 地域包括支援センター,市生活保護課(ケースワーカー),居宅介護支援事業所(ケアマネージャー),デイサービスセンター
12 90歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳,近隣者 近隣者からの通報により緊急対応 ①既婚(妻は16年前に死亡),子どもは県外の息子1人.②要支援2:サービスは拒否.③近隣者の通報により熱中症で倒れている本人の救急搬送に付き添ったことで,支援関係は改善したがサービスは拒否 地域包括支援センター,居宅介護支援事業所(ケアマネージャー),消防署
13 90歳代 65歳以上の一人暮らし高齢者台帳 妻の死亡により一人暮らしとなり支援開始 ①既婚(妻は2年前に死亡),子どもは市内の息子1人.②要支援2:歩行困難あり.③息子との交流は少なく,本人の運転により買い物等の用事を足している. 地域包括支援センター,デイサービスセンター,訪問介護事業所

インタビューで語られた事例は13例で,年齢は71歳から92歳であった.民生委員はA市から提供された65歳以上一人暮らし高齢者名簿(住民基本台帳より作成)及び近隣や関係機関との連携により,事例の情報を把握していた.事例が抱えていた主な問題は,病状悪化・体調不良があっても医療につながっていない(事例1,6,11),生活に支障があってもサービス利用を拒否する・支援を求めない(事例2,3,5,11,12),家族とは疎遠で近隣者との交流も乏しく頼る人がいない(事例1,10,13),安否不明・急激な健康状態の悪化で緊急対応が必要な状態(事例4,8,12)など健康・生活状態の悪化,サービス利用拒否,孤立,生命の危機の問題があり複数の問題を抱えている事例が多かった.民生委員が事例への支援において連携した関係機関は,地域包括支援センター,居宅介護支援事業所,訪問介護事業所,デイサービスセンター,消防署,警察署等であった.

3. 一人暮らし男性高齢者への民生委員の支援内容

データを分析した結果,民生委員の一人暮らし男性高齢者への支援内容として130のコードを抽出し,21のサブカテゴリ,7のカテゴリを生成した.

以下,カテゴリは【 】,サブカテゴリは《 》,コードは「 」,語りは斜体で記述し,意味を理解するため補足が必要な箇所は( )で意味を補った.カテゴリ,サブカテゴリ及びサブカテゴリごとの代表コードの一覧は表2に示した.

表2  一人暮らし男性高齢者への民生委員の支援内容
カテゴリ(7) サブカテゴリ(21) 代表コード例 コード数(130) 事例No
警戒心を和らげ拒否されないよう手を差し伸べる 身近な友人のように寄り添いじっくりと本人の語りを引き出す 身近な話し相手として,関心のある話題を取り入れながら生活全般の情報を把握する 7 1,5,10,11,12
さりげなくきっかけを察知し手を差し伸べる 本人が心を開き気兼ねなく相談ができるよう身近な困りごとを察知し手を差し伸べる 7 1,5
時間をかけて警戒心を和らげる 警戒心があり拒否的な態度をとる本人にドア越しの訪問を粘り強く続ける 6 1,5,10
生活や健康へのリスクを察知し回避するよう支援する 生活環境や日常生活のリスクを察知する 転倒しやすい生活環境を把握する 5 1,6,10,12
健康状態のリスクを察知する 患部の内出血や腫れを直接見て触れることにより,転倒による深刻な症状を把握する 2 1
切実な困りごとにタイムリーに支援を行う 劣悪な住宅環境での暮らしぶりを案じ,住宅改修の手続きを手伝う 12 1,11,12,13
健康維持を脅かすリスクを軽減するための行動を後押しする 悪化する病状を我慢し未受診の本人に医療機関への受診を勧める 10 1,3,5,6,11
孤立に寄り添い家族や地域とつなぐ 人とつながる糸口となり孤立に寄り添う 家族にも相談できず一人で抱え悩んでいた問題に手を差し伸べる 2 5,10
途切れさせないよう家族との関係をつなぐ 介入しすぎないよう配慮し疎遠となっている娘に連絡や調整を行う 5 1,11,12
参加を促し地域とのつながりをつくる 本人が関心を示した地域の行事への参加を促し地域とのつながりをつくる 1 10
最後の生命線の砦となり緊急時の対応を行う 緊急連絡先を引き受ける 緊急連絡先として民生委員の連絡先を登録する 4 1,4,10,12
異変を把握して緊急対応する 近隣者からの通報により緊急訪問し救急搬送を要請して付き添う 15 1,4,8,9,12
地域の暮らしの中で見守りを行う 近隣者と協力して情報把握や見守りを行う 昔から本人をよく知る近隣者からタイムリーに支援のきっかけとなる情報を把握する 8 2,3
本人の暮らしぶりに合わせて見守る 同じ地域で暮らす強みで,生活スタイルに合わせた見守りを行う 15 2,3,6,7,11
屋内外の生活環境を確認する 本人不在時は家の周囲から屋内外の生活状況を確認する 2 2,3
日頃から健康や生活の維持・継続を後押しする 日頃から健康や安全への呼びかけをする 十分な水分摂取を促し熱中症予防への注意喚起を行う 3 3,8
生活の維持・継続を後押しする リハビリ目的の散歩を見かけたときは声を掛けて応援する 4 6,10,11
地域包括支援センター等と連携しタイムリーにサービスにつなげる 地域包括支援センター等と連携し必要な情報を把握する 地域包括支援センターが民生委員定例会に同席する機会を活用して情報交換や共有を行う 3 1,5
地域包括支援センター等にタイムリーにつなげる 健康状態や生活状況を見極め,地域包括支援センターにサービス調整を依頼する 10 1,3,4,5,7,10,11,12
支援を拒否されないよう新しいサービスの導入時に立ち会う 関係性の築きにくい本人を地域包括支援センターと同行訪問する 4 1,7
本人の意図を代弁するため新しいサービス導入時に立ち会う 介護認定調査に立ち会うことにより,本人の説明不足を補い情報提供する 5 5,11,12

注1)カテゴリ,サブカテゴリ,コード欄( )内の数字はそれぞれの総数を表す.

注2)事例Noは,表1 民生委員の支援事例Noを表わす.

1) 【警戒心を和らげ拒否されないよう手を差し伸べる】

民生委員は同じ地域に住む住民として,自尊心が高く警戒心の強い本人に《身近な友人のように寄り添いじっくりと本人の語りを引き出す》ことを行っていた.自立心があり他人に迷惑を掛けたくないという本人の思いを尊重し,「本人が心を開き気兼ねなく相談ができるよう身近な困りごとを察知し手を差し伸べる」ことを行っていた.「警戒心があり拒否的な態度をとる本人にドア越しの訪問を粘り強く続ける」など,《時間をかけて警戒心を和らげる》ことを行い,支援を拒否されない関係を作っていた.

(訪問を開始して,生活支援を促しても受け入れない理由は)簡単に言うと,警戒心ですわ.今まで付き合いないのがポンと行ったんだから,無口で,最初はなじめなかったですわ.だけど,回数行っているとだんだん分かってきて,(蛍光灯が切れていたので)「蛍光灯取り換えますか」と話をしたりして,(中略)会話がだんだん幅広くなってきたというかですね.(A民生委員)

2) 【生活や健康へのリスクを察知し回避するよう支援する】

健康問題や好ましくない生活習慣に気づきにくい本人に,日々の生活の様々な機会を捉え,屋内外の生活環境や生活動作から「転倒しやすい生活環境を把握する」など,《生活環境や日常生活のリスクを察知する》ことを行っていた.本人の訴えだけでなく,「患部の内出血や腫れを直接見て触れることにより,転倒による深刻な症状を把握する」などのように,《健康状態のリスクを察知する》ことを行っていた.老朽化により「劣悪な住宅環境での暮らしぶりを案じ,住宅改修の手続きを手伝う」など,《切実な困りごとにタイムリーに支援を行う》ことをしていた.「悪化する病状を我慢し未受診の本人に医療機関への受診を勧める」ことなど,《健康維持を脅かすリスクを軽減するための行動を後押しする》支援をしていた.

お宅へ行ったらすきま風どころか,もっとひどい雨風が吹き込んだりする部屋で寝起きしたりしていたもんですから,これは大変だということでまずは生活保護申請を出して許可を得て,それからその中で支援をしていただけるものを行政と相談して,(中略)「雨風が入らないようすき間を防いでもらえないか」,また「土台も弱っているのでその一部を入れ替えてもらえないか」とお話ししたら,予算内であれば可能ということで,(中略)それで(住宅改修の助成制度を使って,自宅を)直していただいた.(I民生委員)

3) 【孤立に寄り添い家族や地域とつなぐ】

「家族にも相談できず一人で抱え悩んでいた問題に手を差し伸べる」など,《人とつながる糸口となり孤立に寄り添う》ことを行っていた.「介入しすぎないよう配慮し疎遠となっている娘に連絡や調整を行う」ことにより,本人と家族の関係性を《途切れさせないよう家族との関係をつなぐ》支援をしていた.地域との交流がなく孤立していたため,「本人が関心を示した地域の行事への参加を促し地域とのつながりをつくる」ことを行っていた.

救急車で(本人を)病院に連れて行ったら,心不全を起こしているでしょう.(中略)それで,(連絡の途絶えていた)娘さんのほうに電話したんですよ.本当は私が娘さんのところにあまり電話すると,(民生委員が病院に付き添うことは)越権行為というような感じで,(娘さんが)いい顔しなかったんです.(A民生委員)

4) 【最後の生命線の砦となり緊急時の対応を行う】

家族等が近くにいない状況に対応し,「緊急連絡先として民生委員の連絡先を登録する」など,《緊急連絡先を引き受ける》ことを行っていた.いざという時に頼る人がいないため,本人の健康状態が急変した際には,「近隣者からの通報により緊急訪問し救急搬送を要請して付き添う」などの役割を担い,迅速に《異変を把握して緊急対応する》ことを行っていた.

Oさんのアパートの上の方から,電話が来たんですわ.Oさんが血を流して倒れていて,Aさんに電話してくれって言われたんで電話しているんですけど.今,Oさんのところにいて,救急車を呼んでいるんですが,来てくれますかって言われて,駆け付けたんです.(A民生委員)

5) 【地域の暮らしの中で見守りを行う】

民生委員は地域の暮らしの中で,「昔から本人をよく知る近隣者からタイムリーに支援のきっかけとなる情報を把握する」ことなどにより,《近隣者と協力して情報把握や見守りを行う》体制を整えていた.正確な情報を把握するため,「同じ地域で暮らす強みで,生活スタイルに合わせた見守りを行う」ことにより,直接顔を見て安否確認をしていた.近くを通ったついでのタイミングや本人不在時は,家の周囲から《屋内外の生活環境を確認する》ことをしていた.民生委員は,日々の暮らしの中で,本人の生活スタイルに合わせて様々な機会を捉えながら観察や安否確認をするという見守りを行っていた.

月1回の訪問と(本人が)外出して外を歩いているところを時々見かけていますよ,顔は見ます.もうその人の生活パターンが見えるわけですよ.単なる,直接訪問してどうこうじゃなく,日ごろの活動の中での見守りが本当は一番いいと思う.それは専門職ではできない,地域にいて近くにいなければできない.(B民生委員)

6) 【日頃から健康や生活の維持・継続を後押しする】

本人の姿を見かけたときは,「十分な水分摂取を促し熱中症予防への注意喚起を行う」など,《日頃から健康や安全への呼びかけをする》ことをしていた.「リハビリ目的の散歩を見かけた時は声をかけて応援する」ことを行い,《生活の維持・継続を後押しする》支援を行っていた.

(自宅訪問しても本人が)居ないときもありますね.居ないときもありますが,外で会ったら声を掛けています.家の中だけじゃなくて,よく外で会いますね,外出すると結構会います.「元気かね,よく歩いて頑張っているね」(と声を掛けると),「はい」って言ってね.(E民生委員)

7) 【地域包括支援センター等と連携しタイムリーにサービスにつなげる】

「地域包括支援センターが民生委員定例会に同席する機会を活用して情報交換や共有を行う」などにより,《地域包括支援センター等と連携し必要な情報を把握する》支援をしていた.「健康状態や生活状況を見極め,地域包括支援センターにサービス調整を依頼する」など,《地域包括支援センター等にタイムリーにつなげる》ことを行っていた.「関係性の築きにくい本人を地域包括支援センターと同行訪問する」など,《支援を拒否されないよう新しいサービスの導入時に立ち会う》ことを行っていた.「介護認定調査に立ち会うことにより,本人の説明不足を補い情報提供する」など,《本人の意図を代弁するため新しいサービス導入時に立ち会う》支援をしていた.

今度,調査が来るらしいから一緒に立ち会ってくれと,ケアマネとYさんからも認定調査のときの立ち合いの(依頼があった).(中略)ご家族が近くにいない場合は,私,いつもそういうふうに立ち会いをよくするんですよね.(中略)大体,Yさんが,言葉足らずで説明するところもあるんで.(D民生委員)

IV. 考察

1. 一人暮らし男性高齢者への民生委員の支援内容

本研究で明らかになった一人暮らし男性高齢者の特徴は,病状悪化や体調不良があっても健康問題に気づきにくく医療につながらないこと,自立心や警戒心が強く,生活に支障があってもサービス利用を拒否することや支援を求めないこと,家族とは疎遠で近隣者との交流も乏しく地域から孤立しており,頼る人がいないことであった.これらは,自律心が強いことや好ましくない生活習慣を問題視しにくい傾向があること(河野ら,2009),サービス・支援に拒否的な傾向がある(岡本ら,2017)ことのほか,地域における関係性の脆弱さがあり交流の乏しい人が多いこと(田高ら,2017),社会的孤立のリスクがあり,いざというときに頼る人がいない傾向があること(小林ら,2016)という,先行研究で報告されている一人暮らし男性高齢者の特徴と同様であった.

そのような特徴を持つ一人暮らし男性高齢者に対する民生委員の支援は,日頃から民生委員が地域住民の身近な相談相手や見守り役(全国民生委員児童委員連合会,2017)として行っている【地域の暮らしの中で見守りを行う】,【日頃から健康や生活の維持・継続を後押しする】,【地域包括支援センター等と連携しタイムリーにサービスにつなげる】といった支援内容を基盤にしながら,自立心や警戒心が強いことに配慮し,【警戒心を和らげ拒否されないよう手を差し伸べる】ことや,健康問題に気づきにくいことを念頭に置き,【生活や健康へのリスクを察知し回避するよう支援する】ことであった.さらに,困った時の相談相手や緊急時に頼る人がいないことから,【孤立に寄り添い家族や地域とつなぐ】ことや,【最後の生命線の砦となり緊急時の対応を行う】という支援を行っていた.

1) 【警戒心を和らげ拒否されないよう手を差し伸べる】

本研究の結果から,民生委員は,同じ地域に暮らす隣人(全国民生委員児童委員連合会,2017)として,自立心や自尊心に配慮して本人との関係性を築くため,じっくりと傾聴することにより寂しさなどの本音を引き出し,不安や心配事を抱える本人に寄り添っていた.民生委員に拒否的な態度をとる本人に,反応を見ながら粘り強く訪問を続け,《時間をかけて警戒心を和らげる》ことをしていた.気兼ねなく支援につながるよう本人の意向を尊重し,身近な困りごとに《さりげなくきっかけを察知し手を差し伸べる》支援を行っていた.

このような支援は,隣人としての心配りで寄り添いながら共感して関わるという,同じ地域で暮らす民生委員の強みを活かした支援であり,一人暮らし男性高齢者の警戒心を和らげるとともにサービスにつなげる効果が期待できると考えられる.

2) 【生活や健康へのリスクを察知し回避するよう支援する】

本研究において,民生委員は,本人が健康問題に気づきにくいことや好ましくない生活習慣を問題視しにくいことを考慮し,生活リズムや行動パターンを捉えながらきめ細やかに接点を持ち,日々の変化を察知して《健康維持を脅かすリスクを軽減するための行動を後押しする》支援を行っていた.

一人暮らし男性高齢者への専門職の支援として保健師は,訪問の中でより詳細な健康状態のアセスメントと緊急性の判断を行い,対象者の意思を尊重し,長期的なスパンでタイミングを見計らいながら,より健康的な生活に向けた実質的な支援を行っていることが報告されている(岡本ら,2017).民生委員の支援は,このような専門性の高い支援とは異なるが,訪問や見守りの中で本人の日々の変化や問題をきめ細やかに把握し,リスクを推測して支援につなげるという点においては共通していると考えられる.

民生委員活動の利点は,対象者の生活にきめ細やかに入ることで,日々の変化を捉えてタイムリーな支援につなげることができることである.このような利点を活かした民生委員の支援は,健康問題に気づきにくい一人暮らし男性高齢者が,自ら健康や生活習慣の問題を認識し改善する行動につなげる支援であると考えられる.

3) 【孤立に寄り添い家族や地域とつなぐ】

本研究において,一人暮らし男性高齢者は,もともと地域や家族とのかかわりが乏しいことに加え,その仲介役を担っていた妻の施設入所や死別,本人の健康やADLの悪化などにより,地域,家族との交流やつながりが縮小し孤立する傾向が見られた.民生委員は,孤立感を持ちながら人とつながることができない本人に,《人とつながる糸口となり孤立に寄り添う》ことや,《途切れさせないよう家族との関係をつなぐ》ことにより,家族や地域への橋渡しを行っていた.

田高ら(2013)によると,一人暮らし男性高齢者の社会的孤立予防には社会や人とのつながりが持てるような支援が求められると報告されている.民生委員は,孤立している本人につながり寄り添うことができる数少ない支援者となり,家族や地域とのつなぎ役として役割を果たしていると考えられる.

4) 【最後の生命線の砦となり緊急時の対応を行う】

いざという時に頼る人がいない一人暮らし男性高齢者への支援では,民生委員は《緊急連絡先を引き受ける》ことや,健康状態が急変した本人に,近隣者等との連携により《異変を把握して緊急対応する》ことなど,緊急時の地域の支え手として,重要な役割を果たしていた.

このような緊急時の対応は,民生委員が行政の協力機関として位置付けられていることにより職務として行う一歩踏み込んだ支援(杉原,2018)である.これらは,一人暮らし男性高齢者の生命や健康を守り,安心・安全な生活につなげるために重要な支援ではあるが,あくまでもボランティアである民生委員には責任が重く負担の大きい職務であると考えられる.

2. 一人暮らし男性高齢者の支援への示唆

本研究で明らかになった民生委員の支援内容については,民生委員定例会や研修会において紹介することにより,民生委員組織の中で共有できる知識や技術として活用することができると考える.また,これらの一人暮らし男性高齢者への支援内容を,関係機関と共有することにより,支援が難しい一人暮らし男性高齢者への支援の具体的な実践や連携の場において活用できると考えられる.

一方で,一人暮らし男性高齢者に行う緊急対応は,民生委員の職務ではあるが,あくまでもボランティアであるため責任や役割も不明確になりやすく,民生委員にとって負担が大きいことが課題である.このような活動を保障していく体制整備,および行政機関をはじめとする関係機関のサポートが必要であると考えられる.

3. 本研究の限界と今後の課題

本研究は,これまで明らかになっていなかった一人暮らし男性高齢者への民生委員の支援内容を明らかにした点で意義がある.一方で,本研究は,対象がA市に限定された10人の民生委員の語りであることや,A市の地域性などの社会文化要因や福祉サービスなどの影響を受けていることは否めず,一般化するには限界がある.今後は,対象地域を広げ,対象数を増やすことにより,データを蓄積していく必要がある.

V. 結語

本研究では,民生委員が行っている一人暮らし男性高齢者への支援内容について明らかにした.その結果,一人暮らし男性高齢者の特徴を捉えた民生委員の支援内容として,【警戒心を和らげ拒否されないよう手を差し伸べる】,【生活や健康へのリスクを察知し回避するよう支援する】,【孤立に寄り添い家族や地域とつなぐ】,【最後の生命線の砦となり緊急時の対応を行う】ことが明らかになった.これらの支援は,日頃から民生委員が地域住民の身近な相談相手や見守り役として行っている,【地域の暮らしの中で見守りを行う】,【日頃から健康や生活の維持・継続を後押しする】,【地域包括支援センター等と連携しタイムリーにサービスにつなげる】支援を基盤にしながら行うものであると考える.

このような民生委員の支援内容を民生委員間や関係機関と共有することにより,支援が難しい一人暮らし男性高齢者への支援の具体的な実践や連携の場において活用できると考えられる.

謝辞

本研究の実施にあたりご多忙中にもかかわらず調査にご協力を賜りました民生委員の皆様,また,調査を受け入れていただいた民生児童委員協議会連合会及び社会福祉協議会事務局の皆様に心より感謝申し上げます.論文をまとめるにあたり,示唆をいただいた新潟大学大学院保健学研究科関奈緒教授に感謝いたします.本研究は令和元年度新潟大学大学院保健学研究科研究奨励金の助成を受けて行った.

なお,本研究は新潟大学大学院保健学研究科博士前期課程修士論文の一部に加筆修正したものである.

本研究に開示すべき利益相反はない.

文献
 
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