2024 年 13 巻 1 号 p. 2-12
目的:乳幼児を子育て中の共働き夫婦のワーク・ファミリー・コンフリクト(以下,WFC)に影響する関連要因について,特にソーシャル・キャピタル(以下,SC)との関連を明らかにする.
方法:保育園・認定こども園に在籍する子どもの保護者720世帯を対象に無記名自記式調査を実施した.調査項目は,基本属性,WFC尺度,SC,労働環境,育児環境,性別役割分業意識とした.
結果:127世帯を分析対象とした.重回帰分析の結果,夫のWFCは,人々への信頼,親戚への期待・信頼,職場の同僚への期待・信頼,隣近所とのつきあいの程度,職場の同僚とのつきあいの頻度,労働時間,伝統的性別役割意識が,妻のWFCは,人々への信頼,親戚への期待・信頼,職場の同僚への期待・信頼,職場の同僚とのつきあいの頻度,労働時間が影響することが明らかになった.
考察:乳幼児を子育て中の共働き夫婦のWFC軽減に向けた支援策には,SCの醸成と活用を促すことが重要であると考える.
Objective: This study aims to clarify the factors related to work-family conflict (WFC) among dual-earner couples raising infants and toddlers, with particular focus on social capital (SC).
Methods: A self-administered, anonymous survey was conducted among 720 families with children enrolled in nursery schools. The survey items included basic attributes, the WFC scale, SC, working environment, childcare environment, and attitudes toward the division of labor according to gender roles.
Results: A total of 127 households were included in the analysis. Multiple regression analysis revealed that husbands’ WFC was influenced by trust in other people, expectations and trust in relatives, expectations and trust in work colleagues, degree of socializing with neighbors, frequency of socializing with work colleagues, working hours, and traditional gender role attitudes. On the other hand, wives’ WFC was influenced by trust in others, expectations and trust in relatives, expectations and trust in work colleagues, frequency of socializing with work colleagues, and working hours.
Conclusions: Our results suggest that fostering and encouraging the use of SC is important to support measures to reduce WFC among dual-earner couples raising infants and toddlers.
わが国では,就労する女性の増加に伴い共働き世帯の増加が進み,仕事と家庭を両立する夫婦が増加している(内閣府男女共同参画局,2020).労働力を維持し,また少子化の進行を抑えるためには,子育て中の就労者のワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)を充実させることは重要な課題である.そのため様々な労働政策や子育て支援が行われているが,依然として子育て期の男性の仕事負担が重く,家事と育児の負担が女性に偏っている現状が報告されている(内閣府男女共同参画局,2020).
WLBがうまくいかないときに,就労者はワーク・ファミリー・コンフリクト(Work-family Conflict:以下,WFC)を感じる.WFCとは,仕事上の役割と家庭・育児・介護などの家庭役割など複数の役割がぶつかり合うことで生まれる葛藤のことである(Greenhaus et al., 1985).このWFCは,乳幼児を持つ男女の場合に最も高まることや(Allen et al., 2014),WFCが高まると精神面に悪影響を及ぼすことが明らかになっている(福丸,2003;小泉ら,2003).また,子育て中の男女のWFCに影響を及ぼす要因として,労働環境,育児環境,性別役割分業意識,末子の年齢,親族によるサポート等があることが明らかになっている(中川,2015;太田ら,2018;鈴木ら,2015;富田ら,2012;山崎ら,2015).このように,WFCに影響を及ぼす要因についていくつか報告されているが,これらはWFCの定義にある仕事と家庭に着目したもので,子育て中の夫婦を取り巻く環境,つまり子育て世帯が生活している地域社会においての検討はされていない.
現代の子育て環境は,少子化や核家族化の進行,地域のつながりの希薄化など,地域社会において子育てが孤立化している(内閣府,2022).子育て中の夫婦のWLBを議論する際に,仕事と家庭の環境だけでなく,夫婦が生活している地域の環境について見直すことが必要である.さらには,家族を個の存在ではなく,地域の一員として捉えて,希薄化してしまった地域社会とのつながりを再構築する必要がある.
地域社会を再構築する上で,ソーシャル・キャピタル(以下,SC)の活用が期待されている.SCとは,人々の協調行動を活発にすることによって,社会の効率性を高めることのできる,「信頼」,「規範」,「ネットワーク」といった社会組織の特徴,と定義され,SCの有無が健康の社会的決定要因の一つとして注目されている(Kawachi et al., 2007).WFCを低減する資源として,親族からのサポート等の家庭資源と,職場でのサポート等の労働資源が考えられ,これらをSCとして捉える必要がある.
これまでの子育て中の共働き夫婦に関する研究には,このSCの視点が足りていない.地域の中に働きやすさと子育てに影響を与える現象や,地域に密着した活用できる資源があると推測されるが,地域(要因)に着目した調査は十分されておらず,明らかになっていない.
そこで本研究は,乳幼児をもつ共働き夫婦のWFCに影響する関連要因について,特にSCとの関連を明らかにすることを目的とした.共働き夫婦のSCがWFCに影響を及ぼすことが明らかとなれば,WLB実現に向けての新たな支援につなげることができると考えた.
Greenhaus et al.(1985)の定義に準じて,「仕事上の役割と家庭の役割とが相互にぶつかり合うことで生まれる葛藤」と定義した.そして,WFCは仕事から家庭への葛藤(以下,仕事→家庭葛藤)と家庭から仕事への葛藤(以下,家庭→仕事葛藤)の2つの方向,時間,ストレス反応,行動の3つの形態の6次元で構成されるものとした.
2) ソーシャル・キャピタル(SC)Putnam et al.(1993)は,人々の協調行動を活発にすることによって,社会の効率性を高めることのできる,「信頼」,「規範」,「ネットワーク」といった社会組織の特徴と定義している.本研究では,乳幼児をもつ父親と母親が認識する,地域の「信頼」,「互酬性の規範」,「ネットワーク」と定義した.
2. 研究の概念枠組み乳幼児をもつ共働き夫婦のWFCに影響を及ぼす要因の一つとしてSCが存在すると仮定した.
3. 調査対象 1) 対象者A市の保育園1ヶ所,認定こども園6ヶ所に在籍する子どもの保護者(父親と母親)720世帯を対象とした.認定子ども園は就労していない保護者も1号保育認定として利用可能である.そのため,本調査では2号・3号の保育認定の子どもの保護者を対象とした.保育園と認定こども園は機縁的に選定した.
2) A市の概要A市は人口約28万人の都市であり,年少人口割合は14.1%,老年人口割合は24.1%である.年少人口及び生産年齢人口の割合が年々減少しているのに対し,老年人口の割合は増加しており,少子高齢化が着実に進行している都市である(2020年3月31日現在).なお,合計特殊出生率は2017年で1.45(全国1.43)であった.地理的環境としては,大都市のベッドタウンとなっている地域である.
4. 調査方法調査には父親,母親ともに同じ無記名自記式質問紙を用いた.研究者より保育園,認定こども園の園長に調査協力を依頼し,調査の承諾を得た.質問紙は,保育園・こども園を通じて世帯ごとに2部ずつ配布し,郵送法または留置法により回収した.
5. 調査期間2019年7月~11月に調査を行った.
6. 調査項目 1) 基本属性年齢,性別,最終学歴,居住形態,居住年数を尋ねた.
2) ワーク・ファミリー・コンフリクト渡井ら(2006)が開発したワーク・ファミリー・コンフリクト尺度日本語版(以下,WFCS)を用いた.WFCSは,「仕事→家庭葛藤」と「家庭→仕事葛藤」の2方向,「時間葛藤」,「ストレス反応葛藤」,「行動葛藤」に基づく3形態の6次元,18項目で構成される.WFCSは,「全くあてはまらない」1点から「全くそのとおりである」5点の5件法で測定し,得点が高いほどWFCは高い.WFCSは日本人労働者を対象とした調査で信頼性と妥当性は確認されている.分析にあたっては,下位尺度毎に得点を単純加算し分析に用いた.「時間葛藤(W→F)」と「時間葛藤(F→W)」の2方向の総点を「時間葛藤」,「ストレス反応葛藤」の2方向の総点を「ストレス反応葛藤」,「行動葛藤」の2方向の総点を「行動葛藤」として算出した(各30点満点).「仕事→家庭葛藤」は「時間葛藤(W→F)」と「ストレス反応葛藤(W→F)」と「行動葛藤(W→F)」の3項目の総点,「家庭→仕事葛藤」は「時間葛藤(F→W)」と「ストレス反応葛藤(F→W)」と「行動葛藤(F→W)」の3項目の総点とした(各45点満点).なお,本研究における全体のCronbach’s α係数は0.90であった.
3) ソーシャル・キャピタル内閣府(2003)が実施した調査票の調査項目から,子育て世帯に関連する「信頼」7項目,「互酬性の規範」3項目,「ネットワーク」6項目についての質問項目を抽出し,独自の質問紙を作成した.作成にあたっては,公衆衛生看護学に携わっている教授2名と准教授1名の3名からスーパーバイズを受け,検討した.
(1) 信頼一般的信頼は,「地域の人への信頼」,「見知らぬ土地での人への信頼」について,「ほとんどの人は信用できる」~「注意するに越したことはない」の9件法で尋ねた.
相互信頼・相互扶助は,「近所の誰かが助けを必要とした時近所の人は手をさしのべるか」について,「そう思う」~「そう思わない」の5件法,近所の人々,知人・友人,親戚,職場の同僚への期待・信頼については,「大いに頼りになる」~「全く頼りにできない」の5件法で尋ねた.
(2) 互酬性の規範地縁的活動,ボランティア・NPO・市民活動への参加は,加入しているかを尋ねた.居住地域での地縁活動の状況は,「非常に盛んであると思う」~「そういった地縁団体は存在しないと思う」の4件法で尋ねた.
(3) ネットワーク近隣でのつきあいは,隣近所とのつきあいの程度を,「生活面で協力しあう」~「全くつきあいなし」の4件法で,隣近所とつきあっている人の数を,「かなり多い(20人以上)」~「隣が誰かも知らない」の4件法で尋ねた.社会的な交流は,知人・友人,親戚,職場の同僚とのつきあいの頻度を,「日常的にある」~「全くない」の5件法で尋ねた.スポーツ・趣味・娯楽活動については,加入しているかを尋ねた.
4) 労働環境雇用形態,週の労働時間について尋ねた.
5) 育児環境家族構成,子どもの人数,末子の年齢について尋ねた.
6) 性別役割分業意識内閣府(2016)の世論調査の質問項目を参考に,「男性は外で働き,女性は家庭を守るべきである(以下,伝統的性別役割意識)」について尋ねた.また,国立社会保障・人口問題研究所(2018)の調査に用いられた調査票を参考に,「夫婦は仕事も家事・育児も平等に行うべきである(以下,仕事・家事平等意識)」についても尋ねた.それぞれ「賛成」~「反対」の4件法で回答を求めた.
7. 分析方法基本属性,SC,労働環境,育児環境,性別役割分業意識の記述統計を算出し,夫婦のWFCSの平均値の比較に対応のあるt検定を行った.また夫と妻をマッチングし夫婦の得点差を算出した.次に,夫婦ぞれぞれのWFCSに関連する要因を明らかにするために,Pearsonの相関係数,Spearmanの相関係数を算出した.次いで,WFCSを従属変数,各要因を独立変数として重回帰分析を行った.独立変数は,WFCSと有意な関連のみられたSCの変数(r≧0.28, P<0.01)に,週の労働時間,子どもの人数,伝統的性別役割分業意識を加え8変数とした.変数投入法は,SC以外の3変数を強制投入し,SCに関する変数にはステップワイズ法を用いた.解析はSPSS Statistics ver. 24を使用し,有意水準は5%未満とした.
8. 倫理的配慮本研究は,藍野大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:Aino2018-028,2019年4月8日).調査対象者には,研究目的及び研究内容,調査協力における自由意思の尊重,調査への回答をもって研究参加に同意したとみなすこと等を記載した文書を質問紙と共に配布した.また,夫婦間でパートナーの調査内容を知ることがないよう,調査票の提出には厳封できる別々の封筒を用意し,プライバシーの保護に配慮した.既存尺度は,開発者に尺度の使用許可を得て調査を実施した.
720世帯のうち,155世帯から回答を得た(回収率21.5%).このうち父親または母親のみ回答の世帯,欠損値の多かった28世帯を除く127世帯を分析対象とした(有効回答率81.9%).
1. 対象者の概要 1) 研究対象者の特徴対象者の基本属性,SC,労働環境,育児環境,性別役割分業意識について表1に示す.
対象者の基本属性,SC,労働環境,育児環境,性別役割分業意識
| 項目 | 夫(n=127) | 妻(n=127) | P |
|---|---|---|---|
| n(%)or Mean±SD | n(%)or Mean±SD | ||
| 【基本属性】 | |||
| 年齢 | 37.0±5.0 | 35.5±4.7 | 0.015a |
| 最終学歴 | |||
| 中学校・高校卒 | 24(18.9) | 6(4.7) | 0.000 |
| 専門学校・短大卒 | 20(15.7) | 36(28.3) | |
| 大学・大学院卒 | 81(63.8) | 84(66.1) | |
| 居住形態2) | |||
| 一戸建て | 62(48.8) | ― | ― |
| 集合住宅 | 65(51.2) | ||
| 居住年数2) | |||
| 5年未満 | 77(60.6) | ― | ― |
| 5年以上 | 50(39.4) | ||
| 【SC:信頼】 | |||
| 一般的信頼 | |||
| 地域の人への信頼1) | |||
| ほとんどの人は信頼できる | 29(22.8) | 35(27.6) | 0.672 |
| 注意するに越したことはない | 26(20.5) | 20(15.7) | |
| 両者の中間 | 59(46.5) | 61(48.0) | |
| わからない | 13(10.2) | 11(8.7) | |
| 見知らぬ土地での人への信頼1) | |||
| ほとんどの人は信頼できる | 9(7.1) | 13(10.2) | 0.224 |
| 注意するに越したことはない | 49(38.6) | 58(45.7) | |
| 両者の中間 | 61(48.0) | 45(35.4) | |
| わからない | 8(6.3) | 11(8.7) | |
| 相互信頼・相互扶助 | |||
| 近所の誰かが助けを必要とした時 | |||
| 近所の人は手をさしのべるか | |||
| そう思う | 29(22.8) | 29(22.8) | 0.466 |
| どちらかといえばそう思う | 65(51.2) | 61(48.0) | |
| どちらともいえない | 23(18.1) | 20(15.7) | |
| どちらかといえばそう思わない | 7(5.5) | 15(11.8) | |
| そう思わない | 2(1.6) | 1(0.8) | |
| 近所の人々への期待・信頼 | |||
| 大いに頼りになる | 4(3.1) | 3(2.4) | 0.011 |
| ある程度頼りになる | 16(12.6) | 38(29.9) | |
| どちらともいえない | 63(49.6) | 43(33.9) | |
| あまり頼りにできない | 27(21.3) | 25(19.7) | |
| 全く頼りにできない | 17(13.4) | 16(12.6) | |
| 知人・友人への期待・信頼 | |||
| 大いに頼りになる | 20(15.7) | 21(16.5) | 0.011 |
| ある程度頼りになる | 44(34.6) | 71(55.9) | |
| どちらともいえない | 44(34.6) | 17(13.4) | |
| あまり頼りにできない | 12(9.4) | 13(10.2) | |
| 全く頼りにできない | 7(5.5) | 4(3.1) | |
| 親戚への期待・信頼 | |||
| 大いに頼りになる | 28(22.0) | 36(28.3) | 0.498 |
| ある程度頼りになる | 57(44.9) | 52(40.9) | |
| どちらともいえない | 25(19.7) | 18(14.2) | |
| あまり頼りにできない | 11(8.7) | 11(8.7) | |
| 全く頼りにできない | 6(4.7) | 10(7.9) | |
| 職場の同僚への期待・信頼 | |||
| 大いに頼りになる | 9(7.1) | 8(6.3) | 0.025 |
| ある程度頼りになる | 39(30.7) | 61(48.0) | |
| どちらともいえない | 39(30.7) | 21(16.5) | |
| あまり頼りにできない | 24(18.9) | 18(14.2) | |
| 全く頼りにできない | 16(12.6) | 17(13.4) | |
| 【SC:互酬性の規範】 | |||
| 地縁的活動2) | |||
| 加入している | 70(55.1) | ― | ― |
| 加入していない | 57(44.9) | ||
| ボランティア・NPO・市民活動 | |||
| 加入している | 11(8.7) | 2(1.6) | 0.010 |
| 加入していない | 116(91.3) | 125(98.4) | |
| 居住地域での地縁活動の状況 | |||
| 非常に盛ん | 17(13.4) | 17(13.4) | 0.422 |
| ある程度盛ん | 75(59.1) | 84(66.1) | |
| ほとんど行われていないと思う | 15(11.8) | 8(6.3) | |
| 地縁団体は存在しないと思う | 0(0) | 1(0.8) | |
| わからない | 20(15.7) | 17(13.4) | |
| 【SC:ネットワーク】 | |||
| 近隣でのつきあい | |||
| 隣近所とのつきあいの程度 | |||
| 生活面で協力しあう | 6(4.7) | 12(9.4) | 0.039 |
| 日常的に立ち話程度 | 31(24.4) | 47(37.0) | |
| あいさつ程度 | 87(68.5) | 66(52.0) | |
| 全くつきあいなし | 3(2.4) | 2(1.6) | |
| 隣近所とつきあっている人の数 | |||
| かなり多い | 6(4.7) | 5(3.9) | 0.332 |
| ある程度 | 38(29.9) | 52(40.9) | |
| ごく少数 | 72(56.7) | 62(48.8) | |
| 誰も知らない | 11(8.7) | 8(6.3) | |
| 社会的な交流 | |||
| 知人・友人とのつきあいの頻度 | |||
| 日常的にある | 1(0.8) | 5(3.9) | 0.032 |
| ある程度頻繁にある | 18(14.2) | 23(18.1) | |
| ときどきある | 71(55.9) | 77(60.6) | |
| めったにない | 37(29.1) | 20(15.7) | |
| 全くない | 0(0) | 2(1.6) | |
| 親戚とのつきあいの頻度 | |||
| 日常的にある | 13(10.2) | 22(17.3) | 0.410 |
| ある程度頻繁にある | 45(35.4) | 46(36.2) | |
| ときどきある | 55(43.3) | 48(37.8) | |
| めったにない | 13(10.2) | 11(8.7) | |
| 全くない | 1(0.8) | 0(0) | |
| 職場の同僚とのつきあいの頻度 | |||
| 日常的にある | 9(7.1) | 4(3.1) | 0.073 |
| ある程度頻繁にある | 19(15.0) | 8(6.3) | |
| ときどきある | 58(45.7) | 63(49.6) | |
| めったにない | 30(23.6) | 34(26.8) | |
| 全くない | 11(8.7) | 18(14.2) | |
| スポーツ・趣味・娯楽活動 | |||
| 加入している | 18(14.2) | 11(8.7) | 0.167 |
| 加入していない | 109(85.8) | 116(91.3) | |
| 【労働環境】 | |||
| 雇用形態 | |||
| 常時雇用 | 121(95.3) | 80(63.0) | 0.000 |
| 臨時雇用 | 1(0.8) | 43(33.9) | |
| 自営業主・家族従業者 | 5(3.9) | 3(2.4) | |
| 週の労働時間 | 49.0±10.1 | 32.5±10.1 | 0.010a |
| 40時間以下 | 32(25.6) | 108(86.4) | |
| 41時間以上 | 93(74.4) | 17(13.6) | |
| 【育児環境】 | |||
| 家族構成2) | |||
| 核家族 | 124(97.6) | ― | ― |
| 三世代世帯 | 3(2.4) | ||
| 子どもの人数2) | 1.7±0.6 | ||
| 1人 | 54(42.5) | ― | ― |
| 2人 | 57(44.9) | ||
| 3人 | 16(12.6) | ||
| 末子の年齢2) | 2.3±1.7 | ||
| 1歳未満 | 15(11.8) | ― | ― |
| 1歳以上3歳未満 | 63(49.6) | ||
| 3歳以上7歳未満 | 49(38.6) | ||
| 【性別役割分業意識】 | |||
| 男性は外で働き,女性は家庭を守るべきである | |||
| 反対 | 36(28.3) | 52(40.9) | 0.030 |
| どちらかといえば反対 | 37(29.1) | 36(28.3) | |
| どちらかといえば賛成 | 16(12.6) | 21(16.5) | |
| 賛成 | 4(3.1) | 2(1.6) | |
| わからない | 34(26.8) | 16(12.6) | |
| 夫婦は仕事も家事・育児も平等に行うべき | |||
| 賛成 | 39(30.7) | 65(51.2) | 0.001 |
| どちらかといえば賛成 | 50(39.4) | 48(37.8) | |
| どちらかといえば反対 | 15(11.8) | 7(5.5) | |
| 反対 | 8(6.3) | 1(0.8) | |
| わからない | 15(11.8) | 6(4.7) |
注)χ2検定
注)無回答は除く
a:対応のないt検定
1)9件法で1~3を「注意するに越したことはない」,7~9を「ほとんどの人は信頼できる」,4~6を「両者の中間」とした
2)世帯データを夫欄に記載
WFCSの平均値において,夫と妻の比較で有意差を認めたものは,時間葛藤(F→W)(P<0.001)と時間葛藤(P<0.05),家庭→仕事葛藤(P<0.001)で,妻の得点の方が高値であった.W→FとF→Wの2方向における比較では,夫と妻ともに行動葛藤を除いて,W→Fの葛藤の得点の方が高値であった.

夫と妻のWFCS得点(N=127)
WFCSと各要因との関係については,夫婦ともに「信頼」領域の要因と有意な負の相関が多く認められた.「ネットワーク」では,夫は隣近所とのつきあいの程度と有意な負の相関が多く認められた.週の労働時間は,夫の行動葛藤(W→F)でのみ負の相関がみられ,妻は時間葛藤(W→F),時間葛藤において正の相関がみられた.性別役割分業意識については,夫にのみ有意な正の相関がみられた.子どもの人数,末子の年齢の2要因については,夫婦とも有意な相関は認められなかった.
3. WFCへ影響を及ぼす関連要因(表3) 1) 夫のWFCへ影響を及ぼす関連要因6因子モデルにおいて結果を述べる.時間葛藤(F→W)は,隣近所とのつきあいの程度(β=–0.257, P<0.001)が少なく,親戚への期待・信頼(β=–0.243, P<0.001)が低いと,有意に高くなっていた.ストレス反応葛藤(W→F)は,伝統的性別役割意識(β=0.206, P<0.05)が強く,職場の同僚への期待・信頼(β=–0.198, P<0.05)が低いと,有意に高くなっていた.ストレス反応葛藤(F→W)は,親戚への期待・信頼(β=–0.283, P<0.001)が低く,伝統的性別役割意識(β=0.206, P<0.05)が強いと,有意に高くなっていた.行動葛藤(W→F)は,職場の同僚への期待・信頼(β=–0.337, P<0.001)が低く,職場の同僚とのつきあいの頻度(β=0.252, P<0.001)が多く,伝統的性別役割意識(β=0.195, P<0.05)が強く,労働時間(β=–0.184, P<0.05)が長くなると,有意に高くなっていた.行動葛藤(F→W)は,職場の同僚への期待・信頼(β=–0.229, P<0.001)が低く,隣近所とのつきあいの程度(β=–0.217, P<0.05)が少なく,伝統的性別役割意識(β=0.174, P<0.05)が強くなると,有意に高くなっていた.時間葛藤(W→F)は,P=0.173となり,有意な関連を認めなかった.
WFCS得点とSC,労働時間,子どもの人数,伝統的性別役割意識との関連
夫の重回帰分析結果(N=127)
| 時間葛藤 (W→F) |
時間葛藤 (F→W) |
ストレス 反応葛藤 (W→F) |
ストレス 反応葛藤 (F→W) |
行動葛藤 (W→F) |
行動葛藤 (F→W) |
時間葛藤 | ストレス 反応葛藤 |
行動葛藤 | 仕事→ 家庭葛藤 |
家庭→ 仕事葛藤 |
||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | |
| 人々への信頼a | –0.188 | 0.030 | ||||||||||||||||||||
| 親戚への期待・信頼 | –0.243 | 0.005 | –0.283 | 0.002 | –0.175 | 0.048 | –0.259 | 0.003 | –0.291 | 0.001 | ||||||||||||
| 職場の同僚への期待・信頼 | –0.198 | 0.027 | –0.337 | 0.000 | –0.229 | 0.009 | –0.260 | 0.003 | –0.304 | 0.002 | ||||||||||||
| 隣近所とのつきあいの程度 | –0.257 | 0.004 | –0.217 | 0.015 | –0.227 | 0.012 | –0.243 | 0.005 | ||||||||||||||
| 職場の同僚とのつきあいの頻度 | 0.252 | 0.008 | 0.214 | 0.026 | ||||||||||||||||||
| 労働時間 | –0.044 | 0.623 | 0.061 | 0.480 | 0.039 | 0.659 | 0.012 | 0.894 | –0.184 | 0.029 | –0.043 | 0.614 | 0.007 | 0.937 | 0.034 | 0.692 | –0.129 | 0.136 | –0.074 | 0.387 | 0.004 | 0.959 |
| 子どもの人数 | –0.141 | 0.123 | 0.024 | 0.784 | –0.066 | 0.458 | –0.016 | 0.854 | –0.146 | 0.085 | –0.045 | 0.602 | –0.064 | 0.473 | –0.043 | 0.618 | –0.113 | 0.191 | –0.158 | 0.068 | –0.012 | 0.885 |
| 伝統的性別役割意識 b | 0.156 | 0.087 | 0.116 | 0.182 | 0.206 | 0.022 | 0.184 | 0.037 | 0.195 | 0.022 | 0.174 | 0.047 | 0.149 | 0.093 | 0.215 | 0.013 | 0.222 | 0.011 | 0.224 | 0.010 | 0.192 | 0.024 |
| R2 | 0.041 | 0.160 | 0.087 | 0.122 | 0.195 | 0.156 | 0.126 | 0.167 | 0.146 | 0.160 | 0.208 | |||||||||||
| 調整済みR2 | 0.017 | 0.124 | 0.056 | 0.092 | 0.161 | 0.120 | 0.088 | 0.131 | 0.117 | 0.124 | 0.173 | |||||||||||
| P値 | 0.173 | 0.001 | 0.030 | 0.004 | 0.000 | 0.001 | 0.008 | 0.001 | 0.001 | 0.001 | 0.000 | |||||||||||
妻の重回帰分析結果(N=127)
| 時間葛藤 (W→F) |
時間葛藤 (F→W) |
ストレス 反応葛藤 (W→F) |
ストレス 反応葛藤 (F→W) |
行動葛藤 (W→F) |
行動葛藤 (F→W) |
時間葛藤 | ストレス 反応葛藤 |
行動葛藤 | 仕事→ 家庭葛藤 |
家庭→ 仕事葛藤 |
||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | β | P | |
| 人々への信頼a | –0.205 | 0.027 | –0.261 | 0.004 | –0.215 | 0.019 | –0.230 | 0.011 | –0.248 | 0.006 | –0.229 | 0.014 | ||||||||||
| 親戚への期待・信頼 | –0.199 | 0.027 | –0.188 | 0.036 | –0.210 | 0.017 | ||||||||||||||||
| 職場の同僚への期待・信頼 | 0.171 | 0.046 | ||||||||||||||||||||
| 隣近所とのつきあいの程度 | ||||||||||||||||||||||
| 職場の同僚とのつきあいの頻度 | –3.100 | 0.000 | –0.261 | 0.004 | –0.292 | 0.001 | ||||||||||||||||
| 労働時間 | 0.380 | 0.000 | 0.165 | 0.074 | 0.063 | 0.485 | 0.029 | 0.752 | 0.050 | 0.555 | –0.033 | 0.716 | 0.326 | 0.000 | 0.071 | 0.424 | 0.020 | 0.817 | 0.240 | 0.008 | 0.093 | 0.312 |
| 子どもの人数 | 0.079 | 0.357 | 0.073 | 0.425 | 0.161 | 0.076 | 0.109 | 0.227 | 0.034 | 0.689 | 0.104 | 0.247 | 0.101 | 0.254 | 0.172 | 0.055 | 0.089 | 0.306 | 0.149 | 0.095 | 0.142 | 0.123 |
| 伝統的性別役割意識 b | 0.112 | 0.193 | –0.043 | 0.640 | 0.082 | 0.362 | –0.001 | 0.994 | 0.068 | 0.425 | –0.007 | 0.940 | 0.030 | 0.728 | 0.034 | 0.699 | 0.016 | 0.854 | 0.082 | 0.356 | –0.051 | 0.578 |
| R2 | 0.168 | 0.032 | 0.077 | 0.093 | 0.203 | 0.080 | 0.106 | 0.126 | 0.170 | 0.116 | 0.063 | |||||||||||
| 調整済みR2 | 0.140 | 0.007 | 0.046 | 0.055 | 0.169 | 0.049 | 0.084 | 0.089 | 0.134 | 0.087 | 0.031 | |||||||||||
| P値 | 0.000 | 0.280 | 0.049 | 0.041 | 0.000 | 0.041 | 0.004 | 0.007 | 0.001 | 0.005 | 0.102 | |||||||||||
注)従属変数:WFCS
注)重回帰分析:労働時間,子どもの人数,伝統的性別役割意識を強制投入法,それ以外はステップワイズ法とした.
注)β:標準化偏回帰係数
注)欠損値は除く
a:「地域の人への信頼」+「見知らぬ土地での人への信頼」の合成変数
b:賛成・どちらかといえば賛成=1,反対・どちらかといえば反対=0
時間葛藤(W→F)は,労働時間(β=0.380, P<0.001)が長く,職場の同僚への期待・信頼(β=0.171, P<0.05)が高いと,有意に高くなっていた.ストレス反応葛藤(W→F)は,親戚への期待・信頼(β=–0.283, P<0.001)が低いと,有意に高くなっていた.ストレス反応葛藤(F→W)は,人々への信頼(β=–0.205, P<0.05)が低く,親戚への期待・信頼(β=–0.188, P<0.05)が低いと,有意に高くなっていた.行動葛藤(W→F)は,職場の同僚とのつきあいの頻度(β=–0.310, P<0.001)が少なく,人々への信頼(β=–0.261, P<0.01)が低くなると,有意に高くなっていた.行動葛藤(F→W)は,職場の同僚とのつきあいの程度(β=–0.261, P<0.01)が少なくなると,有意に高くなっていた.時間葛藤(F→W)は,P=0.280となり,有意な関連を認めなかった.
WFCSは,夫と妻ともに家庭→仕事葛藤よりも仕事→家庭葛藤の方が有意に高かった.Watai et al.(2008)の研究では,仕事→家庭葛藤は男性で有意に高く,家庭→仕事葛藤は女性で有意に高いと報告しており,本研究の結果とは異なる結果となった.これは,前述の先行研究の調査年から本研究は約10年経っていることから,この間に仕事や家事分担に対する社会的な認識が変化してきた可能性が推察される.前述の先行研究の女性対象者は専門技術職の常時雇用の正社員で,本研究は臨時雇用も含まれ,週の労働時間が40時間以下の女性が大半で,対象の背景が異なっていることから,女性労働者は家庭の役割が主であったのが,労働時間の短いパートタイマーであっても仕事の役割に比重が置かれるようになったことが反映されているのではないかと考える.また,夫と妻との比較においては,妻の方が時間葛藤(F→W)と家庭→仕事葛藤が高いことが示され,皆川ら(2011)の研究と同様の結果となった.妻は仕事と家庭生活を両立する中で,依然として家事を分担する割合が夫よりも妻の方が圧倒的に高いことから(国立社会保障・人口問題研究所,2019),妻は仕事が思うようにできないと葛藤を抱いていると推察される.
2. 夫のWFCに影響する要因分析の結果,夫のWFCは,人々への信頼,親戚への期待・信頼,職場の同僚への期待・信頼,隣近所とのつきあいの程度,職場の同僚とのつきあいの頻度,労働時間,伝統的性別役割意識が影響することが明らかになった.
SCの「信頼」では,親戚への期待・信頼と職場の同僚への期待・信頼が,夫のWFCに強い関連を示した.親戚への期待・信頼が高いと時間葛藤(F→W)とストレス反応葛藤(F→W)が低く,子育てを含めた家庭生活で困難が生じた際,支援が必要な場合に家族以外の者に安心して頼ることができるためと考える.また,職場の同僚への期待・信頼が高いと,ストレス反応葛藤(W→F)と行動葛藤(W→F)が低いことから,例えば職場で抱えている業務や滞っている業務を同僚に安心して任すことができ,仕事の負担が小さくなっていると考える.
SCの「ネットワーク」においては,隣近所とのつきあいの程度が,妻ではWFCSのどの因子モデルにおいても唯一独立変数として残らなかった要因で,夫にのみ関連を示した.これは,夫については仕事・家庭領域以外の生活領域である第3の領域がWFCに影響を与えていることが示唆され,仕事・家庭領域以外の第3の領域でのネットワークが重要な要因であることが明らかとなったと考える.また,職場の同僚とのつきあいの頻度については,夫はつきあいが多いほどWFCが高く,反対に妻はつきあいが少ないほどWFCが高い結果を示した.本研究での結果から,WFCに関連する要因としてSCの「ネットワーク」に夫婦の差がみられたことが特徴として明らかとなった.隣近所とのつきあいが多いと時間葛藤(F→W)と行動葛藤(F→W)が低かった.このことから,日頃からつきあいが多いと隣近所の住民から家庭生活に対しての支援が受けられ,また地域に職業人ではなく父親としての居場所があるということになり,そのような地域でのつながりが,家事や育児の負担が減ることにつながっていると考える.職場の同僚とのつきあいの頻度は,行動葛藤(W→F)に関連を示した.職場の同僚とのつきあいが多いほど行動葛藤(W→F)が高くなる結果であった.考えられる可能性として,例えばつきあいで同僚からの相談に乗る機会や飲み会に参加する機会が増えその際にとっている職業人としての態度や行動が,家庭での役割や立ち振る舞いに影響し,つまりオンオフの切り替えができず,家庭生活への葛藤を生じさせていると考える.
伝統的性別役割意識が,夫のWFCに強い関連を示した.富田ら(2012)は,平等主義的性役割態度が高いほど,仕事→家庭葛藤が低減することを示しており,本研究も同様の結果であった.伝統的な性別役割意識が強く,仕事と家庭の両立を志向しない場合,家庭生活において困難感や弊害が生じ,それが葛藤に影響を及ぼしていると考える.
3. 妻のWFCに影響する要因妻のWFCは,人々への信頼,親戚への期待・信頼,職場の同僚への期待・信頼,職場の同僚とのつきあいの頻度,労働時間が影響することが明らかになった.
SCの「信頼」では,人々への信頼と親戚への期待・信頼が,WFCに強い関連を示した.前述の夫と同様に,支援が必要な際に人々への信頼が高いと,周囲からサポートを受けやすくなると予想される.佐藤ら(2014)は,乳幼児の母親の孤独感と内的作業モデルとの関連を明らかにしている.安定型の母親は必要時に他者を信頼し,誰に援助を頼るのが適切かを認識できる傾向があると述べている.このことから,人への信頼が低い者は孤立しやすく,WFCが高くなると考える.また川島(2018)は,結合型SCと橋渡し型SCの双方が子育てのしやすさと関連があることを明らかにしており,WFCを軽減するためには,SCの「信頼」の構築が必要なことが示唆された.職場の同僚への期待・信頼は,時間葛藤(W→F)に関連を示した.ただし,職場の同僚への期待・信頼は,期待・信頼が高いほどWFCが高くなるという結果であった.これは,職場の同僚への期待・信頼が高いということは,自らも同僚から頼りになる存在となるよう仕事に力を注ぎ,その結果,仕事への負担が重くなり葛藤が生じるものとなっているのではないかと推測される.時間葛藤(W→F)は,労働時間が長いと,有意に高くなっていたことも相互に関係していると考える.例えば,「職場の同僚とは互いに期待され信頼される関係でありたい」と望む場合,当然精力的に働くことになり,仕事の負担が大きくなり,家庭生活への葛藤を生じさせる可能性があると考える.また妻の場合,職場の同僚への期待・信頼は,時間葛藤(W→F)においてのみ影響しており,ストレス反応葛藤,行動葛藤には影響はなかったことが明らかとなった.これは,妻は職場の同僚に対して期待・信頼があることは,時間に関してはマイナス要因となりうるが,職場や家庭でのストレスや態度・行動に影響していないということである.妻は職場の同僚に対して期待・信頼が高い場合,時間にだけ葛藤があり,生き生きと働き,家事・育児も充実していることが想定される.
「ネットワーク」では,職場の同僚とのつきあいの頻度が妻の行動葛藤に関連を示した.職場の同僚とのつきあいが多いほど行動葛藤(W→F, F→W)が低くなる結果であった.女性はストレスに対して,人と話をする対処行動をとり,ソーシャルサポートを活用している傾向がある(浦川ら,2008).また,酒井ら(2014)は同僚や上司との関係が良好であると育児ストレスが低くなることを明らかにしている.職場の同僚とのつきあいが減ると,同僚と直接話をして関係性を良好に築く機会や仕事や子育ての悩みを相談する機会が減ることにつながり,それが葛藤に影響を及ぼしていると考える.
4. 本研究の結果より得られた知見本研究によりSCが高いほどWFCが低いという関連性が夫婦どちらにもみられ,SCとWFCのどの下位尺度間に関連性があるかは夫婦で違いがみられたことが明らかとなった.したがって,WFC軽減に向けて労働政策や子育て支援対策には,SCの醸成と活用を促すことが重要であると考える.SCを醸成し活用することによって,子育て中の共働き夫婦のWLBの実現が期待できると考える.「健やか親子21(第2次)」においても,基盤課題に「子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり」が示され,SCの醸成と活用により,すべての親と子を支えることが重要であると報告されている(山縣,2014).本研究の結果は,子育て中の共働き夫婦への支援や,地域社会を再構築し,子育て環境を整備する手がかりを考えるうえで,重要な示唆を与えるものであると考える.
5. 本研究の限界と今後の課題本研究の限界は,第1に,本研究の対象者が,乳幼児を子育て中の忙しい共働き世帯であったため,回収率が低く,サンプルサイズとしては十分とはいえないと考える.また仕事と子育てに忙しい人ほど回答できないことによる選択バイアスが生じている可能性がある.今後は,調査票の項目数や回収方法に配慮する必要がある.第2に,夫婦間で生じるクロスオーバー効果について検討できていない点である.Shimazu et al.(2013)は,夫がWFCを生じている場合,クロスオーバー効果が夫から妻にみられ,夫婦関係がWFCに影響を及ぼすことを明らかにしており,今後検討する必要がある.第3に,夫群と妻群との比較,分析にとどまっている点である.共働き夫婦を家族や世帯として一つの単位で捉え,家族や世帯としてのWFCについて今後解明していきたい.第4に,本研究で調査したSCは,研究対象者の主観によるものであり,対象者の回答の傾向は他の質問に対しても同様な傾向となる可能性がある.今後は,主観的なSCと客観的に測定されたSCとの関連についても検討が必要である.第5に,今回は特定の地域のみの調査であったため,地域特性が結果に影響した可能性がある.他の地域との比較等の検討が今後必要である.
乳幼児を子育て中の共働き夫婦のWFCに,SCが関連する要因であることが明らかとなった.
本研究にご協力いただいた対象者の皆様,保育園・認定こども園の園長ならびに職員の皆様に深く感謝申し上げます.そして終始温かい激励とご助言を賜りました波多野浩道先生に心から厚くお礼申し上げます.
本研究に開示すべきCOI状態はない.