日本植物病理学会報
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原著
各種微量要素及びSiのイネ4種Rhizoctonia属菌の生育,菌核発芽及び紋枯病発病に及ぼす影響
松井 秀樹相良 由紀子郭 慶元荒川 征夫稲垣 公治
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2014 年 80 巻 3 号 p. 152-161

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抄録

主に生育後期のイネ葉上に発生する紋枯病,赤色菌核病,褐色菌核病,および灰色菌核病の4種類の病原菌に関して,それら病原菌の生育,菌核の発芽,およびイネに対する病原性に及ぼす,6種類微量要素(B,Cu,Fe,Mo,MnおよびZn)とSiの計7種類要素類の影響を調べた.その結果,ブドウ糖・アスパラギン培地上での紋枯病菌の生育はB,Cu,MnおよびSiの4種類,赤色菌核病菌はB,CuおよびZnの3種類,褐色菌核病菌はB,Cu,Fe,Mo,MnおよびSiの6種類,灰色菌核病菌はB,Cu,FeおよびMoの4種類によって,供試した1,100 ppm濃度区のいずれにおいても抑制された.稲わら培地上で形成した菌核の発芽に及ぼす影響については要素類の1,10 ppmで調査した結果,紋枯病菌と褐色菌核病菌はB,Cu,ZnおよびSiの4種類によって抑制されたが,赤色菌核病菌はMoのみによって抑制された.灰色菌核病菌においては,菌核の発芽はB,Cu,およびZnの3種類によって抑制された.また,イネの出穂期葉鞘に要素類を噴霧施用(濃度:10 ppm)して紋枯病の発生状況を調査した結果,発病茎率がSiによって27%,病斑数と病斑面積率がSiとCuによって51~63%減少した.これらの結果から,特にSiおよびCuは紋枯病や他のリゾクトニア病の発病抑制資材として有効である可能性が示唆された.

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© 2014 日本植物病理学会
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