日本植物病理学会報
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80 巻, 3 号
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会長講演
学会賞受賞者講演
総説
原著
  • 松井 秀樹, 相良 由紀子, 郭 慶元, 荒川 征夫, 稲垣 公治
    2014 年 80 巻 3 号 p. 152-161
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/18
    ジャーナル フリー
    主に生育後期のイネ葉上に発生する紋枯病,赤色菌核病,褐色菌核病,および灰色菌核病の4種類の病原菌に関して,それら病原菌の生育,菌核の発芽,およびイネに対する病原性に及ぼす,6種類微量要素(B,Cu,Fe,Mo,MnおよびZn)とSiの計7種類要素類の影響を調べた.その結果,ブドウ糖・アスパラギン培地上での紋枯病菌の生育はB,Cu,MnおよびSiの4種類,赤色菌核病菌はB,CuおよびZnの3種類,褐色菌核病菌はB,Cu,Fe,Mo,MnおよびSiの6種類,灰色菌核病菌はB,Cu,FeおよびMoの4種類によって,供試した1,100 ppm濃度区のいずれにおいても抑制された.稲わら培地上で形成した菌核の発芽に及ぼす影響については要素類の1,10 ppmで調査した結果,紋枯病菌と褐色菌核病菌はB,Cu,ZnおよびSiの4種類によって抑制されたが,赤色菌核病菌はMoのみによって抑制された.灰色菌核病菌においては,菌核の発芽はB,Cu,およびZnの3種類によって抑制された.また,イネの出穂期葉鞘に要素類を噴霧施用(濃度:10 ppm)して紋枯病の発生状況を調査した結果,発病茎率がSiによって27%,病斑数と病斑面積率がSiとCuによって51~63%減少した.これらの結果から,特にSiおよびCuは紋枯病や他のリゾクトニア病の発病抑制資材として有効である可能性が示唆された.
  • 菊原 賢次, 渡邉 久能, 嶽本 弘之
    2014 年 80 巻 3 号 p. 162-170
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/18
    ジャーナル フリー
    近年,Pseudocercospora vitisによるブドウ褐斑病が西日本の施設栽培のブドウで多発している.その一因が褐斑病のみならず他の病害の防除薬剤として頻繁に使われてきたQoI剤に対する感受性の低下と考えられたので,調査を実施した.菌叢ディスクを用いた寒天平板希釈法(井上,2009b)による感受性の判定では,生物検定や遺伝子検定で感受性を示した菌株が耐性と判定されることがあったため,菌糸磨砕液を用いた検定方法に改良した結果,判定が明確になった.2007~2009年に福岡県内のブドウ栽培12圃場から106菌株のブドウ褐斑病菌を分離し,QoI剤に対する感受性をこの改良された検定方法で判定した.その結果,1圃場9菌株を除く,11圃場97菌株が耐性菌と判定された.次に,2009~2010年に簡易被覆栽培および加温ハウス栽培でQoI剤耐性菌の発生が疑われる4圃場でQoI剤およびテブコナゾール水和剤,あるいはフェンブコナゾール水和剤それぞれを開花前から幼果期に2~3回散布した結果,いずれの圃場でもQoI剤の防除効果は低かったが,テブコナゾール水和剤とフェンブコナゾール水和剤の効果は高かった.
  • 澤田 宏之, 三好 孝典, 井手 洋一
    2014 年 80 巻 3 号 p. 171-184
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/18
    ジャーナル フリー
    2010年以降,佐賀県北部地域において,キウイフルーツ(Actinidia chinensis ‘Hort16A’)の葉に黄色のハローを伴った斑点症状が発生して問題となっている.その発生園では,結果母枝の枯れ込みや発芽障害,新梢の萎凋・枯死も認められた.また,枝幹に形成された亀裂やかいよう症状から,菌泥や赤褐色の樹液が漏出する現象も観察された.罹病組織から分離された細菌は,淡黄色で不透明の円形集落を形成した.分離菌株をA. chinensisに接種すると原病徴が再現され,そこからは接種菌が再分離できた.本菌はグラム陰性,好気性で1~2本の極鞭毛を有する桿菌であり,その主要な生理・生化学的性質,ITSを標的としたキウイフルーツかいよう病菌の同定用PCR検定,および,7つの必須遺伝子(acnBctsgapAgyrBpfkpgiおよびrpoD)を用いたMLSA解析に基づき,Pseudomonas syringae pv. actinidiaeと同定できた.したがって,本菌によってA. chinensisに発生した症状は,発生状況や病徴も考慮することにより,「キウイフルーツかいよう病」と診断することができた.また,MLSA解析,病原性遺伝子(argK-toxクラスター,cfl,各種エフェクター遺伝子)を対象としたPCR検定,各種表現形質の検査の結果,本菌はP. syringae pv. actinidiaeにおける既知の4つのMLSAグループ(Psa1~4)のいずれとも異なる,新規のMLSAグループを構成することが判明した.そのため,本菌を「Psa5系統」と命名し,独立した系統として取り扱うことを提案したい.一方,比較のために,わが国で1984~2001年の間に分離されたキウイフルーツ(A. deliciosa)やサルナシ(A. arguta)のかいよう病菌50菌株も検査に供したところ,これらはいずれもPsa1系統(=ファゼオロトシキン産生系統)に属することが確認できた.以上より,わが国には,キウイフルーツやサルナシのかいよう病の病原として,Psa1系統とPsa5系統の2つの系統が分布していることが明らかとなった.
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