抄録
近年,Pseudocercospora vitisによるブドウ褐斑病が西日本の施設栽培のブドウで多発している.その一因が褐斑病のみならず他の病害の防除薬剤として頻繁に使われてきたQoI剤に対する感受性の低下と考えられたので,調査を実施した.菌叢ディスクを用いた寒天平板希釈法(井上,2009b)による感受性の判定では,生物検定や遺伝子検定で感受性を示した菌株が耐性と判定されることがあったため,菌糸磨砕液を用いた検定方法に改良した結果,判定が明確になった.2007~2009年に福岡県内のブドウ栽培12圃場から106菌株のブドウ褐斑病菌を分離し,QoI剤に対する感受性をこの改良された検定方法で判定した.その結果,1圃場9菌株を除く,11圃場97菌株が耐性菌と判定された.次に,2009~2010年に簡易被覆栽培および加温ハウス栽培でQoI剤耐性菌の発生が疑われる4圃場でQoI剤およびテブコナゾール水和剤,あるいはフェンブコナゾール水和剤それぞれを開花前から幼果期に2~3回散布した結果,いずれの圃場でもQoI剤の防除効果は低かったが,テブコナゾール水和剤とフェンブコナゾール水和剤の効果は高かった.