日本植物病理学会報
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原著
鹿児島県および長崎県におけるジャガイモそうか病を引き起こすStreptomyces属菌の分布
西 八束竹内 徹鈴木 文彦菅 康弘田代 暢哉中村 正幸岩井 久
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2015 年 81 巻 1 号 p. 22-31

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抄録

全国有数のジャガイモ産地である鹿児島県および長崎県のそうか病菌の菌種と病原性およびその遺伝子的特徴を明らかにした.鹿児島県はS. turgidiscabiesS. scabieiの2種がそうか病菌の主体であったが,長崎県はS. scabieiが多数を占め,両県ともS. acidiscabiesの発生は一部であった.また,分離株の病原性とPathogenicity island(PAI)の関連を調査したところ,病原性を示した菌はS. scabieiS. turgidiscabiesS. acidiscabiesのいずれかの菌種となり,すべての菌株がサクストミン合成遺伝子(txtAB)を保有していた.ほとんどの菌株はtxtAB,トマチナーゼ遺伝子(tomA)とnecrosis-inducing protein遺伝子(nec1)を保有していたが,長崎県および佐賀県から分離されたS. acidiscabies菌株についてはtxtABのみで,tomAnec1を欠いていた.また,病原性S. scabieiについては16S-23S rRNA ITS領域で大きく2つの遺伝子型(TタイプとJKタイプ)に分けられた.また,一部の菌株では2種類のITSを保有するタイプ(B)も存在することが明らかとなった.特に,S. scabieiのメラニン非産生株はすべてTタイプに属していた.さらに,菌種ごとに菌の形態と生理学的性質を調査した結果,いずれの菌種も基準菌株およびこれまで報告された菌株とほぼ一致した.

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© 2015 日本植物病理学会
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