日本植物病理学会報
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日本梨の黒斑病菌(Alternaria Kikuchiana TANAKA)に對する抵抗性に關する研究
(第3報)黒斑菌が生成する酸化酵素に就て
鳥潟 博高駒井 豊
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1952 年 16 巻 2 号 p. 63-68

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抄録

1) 黒斑菌(Alternaria Kikuchiana TANAKA)はその培養基上に於てBAVENDAMM反應陽性を示し,馬鈴薯煎汁培養の陳久濾液中にはGuaiacum tinctureにより直接青變するLaccase (Polyphenol-oxidase)を含有し,Tyrosinaseを含有しない。
2) 本菌のPolyphenol-oxidaseはPALTIZSCH'S硼酸緩衝液を使用した場合PH 8.0~8.3に至適點を有し,上記培養基の蔗糖を2%とした時,12~14日でOxidaseの活性度が最高となるが培養約30日のものでは酵素の反應は認められない。強い活性を示すのは菌糸の生長が旺盛な初期に當つていた。又培養基中の含糖量を變えた時は,菌體重量に關係なく糖分2 %の場合に活性が最も強かつた。
3) 本菌の培養濾液をCollodionの半透膜で透析すると,嚢中に殘つた酵素液は葉の組織を直接殺して黒變を起さしめる原因とはならず,嚢外に透析された液中にかかる變化を起さしめる毒物がある事を認めた。
4) 種を異にしたAlternaria屬菌では培養濾液にPolyphenol-Oxidaseの反應があるものでも梨葉に壞死を起さしめない場合が多かつた。
5) 以上の諸實驗から黒斑菌の生成するPoly-phenol-Oxidaseは梨葉及び果實の組織を死に到らしめる直接の原因ではない。併し(1951-III-15受理)病徴が進展する上には病原菌のPolyphenol-Oxidaseも無關係ではないであろうと推論した。

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