抄録
1) 葉イモチ病斑上における分生胞子形成状況を連續的に觀察する装置を考案し,一定時間おきに顯微撮影を行つて胞子形成順序を明かにした。
2) 埼玉糯10號の葉に生じた病斑を外觀から分類して1より5までの型を圖示した。農林3號,1號に見られる病斑も大體これらの中に包含される。
3) 感受性品種に最も普通に見られる3~4型病斑では濕室に入れてから約5時間後に分生胞子梗の出現が始り,7~8時間後に胞子形成が開始される。分生胞子は胞子梗先端に小突起の出現を認めてから40分で完成され第2の胞子はそれから1時間後に完成される。1本の胞子梗上に屡々6~7箇の胞子が形成された。13~15時間後に胞子梗の叢生は最高限に達した。24時間の連續觀察中胞子の脱落するものは見られなかつた。胞子梗の分枝法は假軸分枝法と云える。
4) 1型病斑上では胞子は形成されない。2型より5型までの病斑上では胞子が形成されるが,その程度は5<4>3>2の順である。從つて,病斑の進展に伴い病斑部組織に局部的に抵抗が増して來るものと云える。
5) 病斑の周邊の褐變は胞子形成を阻止する重要な要因と思われる。