日本植物病理学会報
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培養液の水素イオン濃度の変化に影響を及ぼす要因とその蚕豆褐斑病菌の発育との関係に関する研究
糸井 節美
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1954 年 19 巻 1-2 号 p. 41-44

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抄録
1. 本報文に於ては, 高圧蒸気殺菌が酸並にアルカリで補正した液体培養基のpHの変化に及ぼす影響と, その後の菌の発育との関係, 並に同様に補正した modified Czapek-Dox medium を放置した場合のpHの変化について記述した。
2. 2% glucose 添加の馬鈴薯煎汁並に modified Czapek-Dox medium の高圧蒸気殺菌を行つたら, アルカリ側のものはいづれもそのpH価が5.8附近に低下した。次にこのほゞ同一のpH価を示す培養基に菌を値付け, 26∼27°Cのもとで10日間培養したら, 補正時のpHの高いものほど菌の発育は不良であつた。その原因の一部は培養基中の glucose の分解によるものと思われる。
3. modified Czapek-Dox medium を放置すると, 培養基のpHはアルカリ側に於ては, 2日目既に著しい低下を生じたが, この変化は空気中の炭酸ガスを培養基中のアルカリが吸収する結果であると思われる。
4. 以上の結果から培養基のpHはアルカリ側で非常に変化を受けやすいことが判るから, 別々に高圧殺菌する事, 殺菌後はすみやかに菌の植付けを行う事が必要である。
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