2016 年 32 巻 2 号 p. 122-128
足関節運動を制限する装具を片側に装着した歩行訓練では,健常者と同じ歩行パタン実現は原理的に不可能となる.この際に目標となる歩行パタンとして,装具を装着した健常者の歩行が参考になると我々は考えた.本研究の目的は,装具の有無による健常者の歩行パタンを比較して対称性変化を確かめることであった.そこで若年男性10人の立脚時間と下肢関節角度の変化を3次元動作解析装置で調べた結果,立脚時間の変化はわずかであり,関節角度は装具装着側の足関節以外に統計的な差はなかった.このことから,立脚時間と足関節以外の下肢関節運動については健常者に近いパタンを期待できることが示された.一方,この結果は装具による運動制限を今回の計測対象外の部位や運動が代償していることを意味し,この代償に着目した指導訓練がより効果的である可能性がある.