日本植物病理学会報
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バイラスによるニンジン黄化病に関する研究
小室 康雄山下 功
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1956 年 20 巻 4 号 p. 155-160

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抄録

(1) 1951年以来, 関東各地のニンジンに葉の yellow veinclearing, chlorotic mottle を生じ, 時に著しい矮化, 叢生, 細葉などを起す病気の発生が認められた。本論文は神奈川県で採集した材料についての実験結果である。
(2) 本病は汁液接種によつては伝搬されず, ハナウドノアブラムシによつて伝搬可能な1種のバイラスによるものである。モモアカアブラムシによる伝搬及び種子伝染の試験結果は陰性であつた。
(3) ハナウドノアブラムシは病植物を1又は24時間吸害すると略々確実に保毒し, 保毒したアブラムシは健全植物を24時間加害すると略々確実にバイラスを伝搬する。そのバイラスの媒介は所謂 persistent type で, 保毒アブラムシは保毒した翌日から実験を打切つた15日後までの間健全植物に伝染する能力をもつていた。
(4) 本バイラスはニンジン, セルリー以外の植物に伝染を認めず, 寄主範囲の狭いバイラスと考えられるが, これはハナウドノアブラムシがニンジン以外の植物に充分着生しないことにも関連するようである。ニンジン4品種の間では, 本バイラスに対する感受性に大きな差異は認められなかつた。
(5) ニンジン上の病徴, 伝染方法及び本バイラスとアブラムシとの関係等を綜合して, 供試バイラスは Australia で Stubbs (1948) が報告している Carrot motley dwarf virus に略々該当するものと考える。和名としては「ニンジン黄化病」としたい。
(6) ペチュニアから分離されたキユウリ・モザイク・バイラスを汁液接種したが, ニンジンには発病せず, かつバイラスの recover も出来なかつた。

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