日本植物病理学会報
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チュウリップモザイク病に関する研究 II
チュウリップの感染時期と花の病徴との関係
山口 昭
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1961 年 26 巻 3 号 p. 131-136_1

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抄録
花に典型的 breaking を示す William Pitt の葉汁液を, 種々の生育段階にあるチュウリップ (品種: William Pitt, 紅色花) の葉に接種して, 下記の結果を得た。
(1) 地上萌芽期接種区では, 接種当年の開花期にすべての花が花冠上半部は暗赤色, 下半部は白色の二色型 breaking を示し, これらの株に着いた仔球は, 翌年すべて典型的 breaking を示した。
(2) 出蕾期接種区では, 接種当年の開花期に, 花弁に暗赤色条線の入る増色型 breaking を示し, 翌年はすべて典型的 breaking となつた。
(3) 地上萌芽期および出蕾期の2回接種すると, 接種当年の病徴はすべて典型的 breaking になつた。
(4) 開花期接種区では, 接種当年には breaking を示さず, 翌年開花期に典型的 breaking を示した。
(5) 枯れ込み期接種区では, おのおのの株に着いたいくつかの仔球には, 二色型・増色型・典型的 breaking が混在し, 健全な仔球も認められた。
以上の事実から次の諸点が明らかになつた。
(1) 出蕾期までのチュウリップへの汁液接種によつて, Tulip mosaic virus (=Tulip breaking virus) を確実に, かつ比較的速かに検出することができる。
(2) 生育初期の汁液接種によつて, その株に生ずるすべての仔球をウイルスに感染させることができる。
(3) 枯れ込み期の接種によつても, その株に着く仔球は, 高率にウイルスの感染を受ける。
(4) 紅色花チュウリップ品種がウイルス感染によつて示す breaking 型は, チュウリップの感染時期とその品種の花色発現決定時期との相互関係によつて決定されるものと推定される。
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