抄録
1) カボチャ・モザイク・ウイルスは Lindberg ら (1956) の melon mosaic virus に該当すること, および同ウイルスは, 日本カボチャ, 西洋カボチャ, ペポカボチャ, シロウリ, トウガなどのモザイク症状株から分離されることをすでに報告した (小室, 1957)。今回, キュウリの葉脈えそ症状株およびモザイク症状株 (キュウリ・モザイク・ウイルスによるモザイクよりも粗い大型のモザイク) からも, カボチャ・MVが分離されることが明らかになつた。岩手, 埼玉の材料では葉脈およびそれに沿つた部分に褐~黒褐色のえそをつくり, 後この患部は枯死してしまう。植物体は節間が短縮し, 葉は葉脈えそとともに若干奇形になる。高知の材料ではこれら葉脈えそとともに小さな ringspot 状のえそ斑点を示していた。これら材料ではモザイク症状はみられなかつた。東京および埼玉の材料では, えそ症状はみられず, 粗い大型のモザイクの病徴のみであつた。埼玉の一部材料では葉脈えそとモザイクの両者の病徴がみられた。
2) キュウリ (新埼落, 新T号) にカボチャ・MVを汁液接種するとカボチャ・MVに特異な粗い大型のモザイクの病徴が得られた。これらモザイクとともに葉脈に褐色~茶褐色のえそ症状を示す株もみられた。しかし, 高知の材料にみられるような小さな ringspot 状のえそ斑点の再現には成功しなかつた。
3) 沖繩でスイカのモザイク株が畠で多数発生しており, これからもカボチャ・MVが分離された。
4) カボチャ・MVはソラマメ, エンドウ, オクラに寄生性があり, これらはいずれも veinclearing, mosaic の病徴を示す。ソラマメ, エンドウでは夏期には接種による感染が困難である。