日本植物病理学会報
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カキ炭そ病菌の組織軟化酵素
谷 利一
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1963 年 28 巻 3 号 p. 114-120

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抄録

カキ炭そ病罹病軟化果実には軟化起因物質が存在するにもかかわらず, 病原菌 (Gloeosporium kaki Hori) はカキ果肉切片培地に液化型ペクチン質分解酵素をほとんど生産しない。しかし, その後の実験により, 本菌は希薄醤油液体培地に多量の液化型ペクチン質分解酵素を分泌することを知つたので, それらの酵素と果実に検出される軟化起因物質との異同を明らかにする一助として本実験をおこなつた。
25°C, 12日間, 希薄醤油液体培地に培養した培養ろ液を硫安塩析, 透析してえた粗酵素液は, ペクチン, ペクチン酸, Na-CMC溶液を液化するが, pectin-methylesterase の作用はしめさない。zone electrophoresis および作用型式から, 本粗酵素液中には endo-polygalacturonase, endo-polymethylgalacturonase, exo-polygalacturonase および cellulase Cxが存在することがわかつた。また, ジャガイモ切片の軟化は endo-PGおよび endo-PMG作用が最高の区分にあらわれることから, 本菌の組織軟化酵素として endo-PGおよび endo-PMGの2種を推定した。粗酵素のジャガイモ切片軟化作用は75-PMG単位/mlであらわれるが, フユウガキ切片は2,000PMG-単位/mlでようやく軟化される。罹病軟化果実にはこのような高濃度のペクチン質液化力は検出されないので, 罹病果の軟化は菌の分泌する2種液化型ペクチン質分解酵素によるものではないといえよう。

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