日本植物病理学会報
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植物ウイルスの感染と増殖に関する研究
(1) キウリモザイクウイルス感染葉に見られる呼吸の異常
田杉 平司三沢 正生加藤 盛
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1963 年 28 巻 3 号 p. 109-113

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抄録
ウイルスに感染した葉が示す呼吸状態を, CMVを使用し, 全身感染葉 (ブライトエロー種) と局部感染葉 (ササゲ-黒種三尺種) について比較した。
1. 全身感染葉・局部感染葉ともCMVに感染すれば, 直ちに呼吸は増加するが, その程度は全身感染葉の方が高い。
2. 全身感染葉においては感染直後から呼吸が増加し, 24時間で最高となりその後漸次減少して健全葉の呼吸に接近した。この呼吸の急激な増加の開始時期は葉内ウイルス量の急速増加期もしくはその直前に当たる。
3. 局部感染葉においては感染9時間後に呼吸が著しく増加しその後低下するが, 再び13∼17時間に急激に増加した。すなわち呼吸の経過は第1, 第2の2種の山を持つ曲線となつた。
4. 局部感染葉にみられた呼吸増加の第1の山は,全身感染葉にみられる呼吸増加と同じ意味を持つと思われる。第2の山は酵素阻害剤の作用からみて, ウイルスの増殖に伴うものではなく, 局部病斑の褐変に関係する polyphenol oxidase の活性増大に基づくものと考えられる。
以上のように, 全身感染葉と局部感染葉の呼吸経過には相違がみられるが, その相違は局部病斑の褐変に起因するものである。
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