日本植物病理学会報
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水稲クロロフィルにたいする2, 4-dichloro-6-(ortho chloroanilino)-1, 3, 5-s-triazine の影響-2
江川 宏田端 信一郎野口 照久
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1965 年 30 巻 4 号 p. 197-202

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抄録

トリアジン (主成分2, 4-dichloro-6-(orthochloroanilino)-1,3,5-s-triazine) の散布が, 窒素欠乏, マグネシウム欠乏, 窒素およびマグネシウム欠乏の状態で栽培した水稲のクロロフィル含量に如何なる変化を与えるかを知る目的で, 窒素欠乏, マグネシウム欠乏, 窒素およびマグネシウム欠乏で栽培した水稲にトリアジンを散布し, 同時に完全肥料液にきりかえて水耕し, 2日後にクロロフィル含量を測定した。この結果, 窒素欠乏, マグネシウム欠乏, 窒素およびマグネシウム欠乏, 完全肥料区ともにトリアジン無散布区にくらべて数倍のクロロフィル含量の増加が認められた。
肥料要素欠乏の状態で栽培して, トリアジンを散布し, その後2日たつてから完全肥料区にかえたところ, トリアジン散布と無散布との両区間のクロロフィル含量には大差は認められなかつた。このことから, トリアジンの作用は短時間の間しかないものと推定された。
トリアジン分子中の窒素が肥料として働く場合も考えられるので, 尿素, 硫酸アンモンを対照区として, トリアジンとともに葉面散布し, クロロフィル含量を定量した。その結果, トリアジン散布区〓尿素散布区>硫酸アンモン散布区〓水散布区の順で, トリアジンを散布すれば, 窒素欠乏の場合も, 窒素が充分与えられた場合にも5∼8%のクロロフィル含量の増加が認められた。この結果からトリアジンの窒素がある程度肥料効果をしめすのではないかと推定される。トリアジン散布後の水稲クロロフィル含量の経時変化を調べたところ, トリアジンを散布すると, 2日後に8%程度のクロロフィル含量の増加が認められるが, この増加は, 散布4, 8日後においてもあまり変化を示さなかつた。したがつて, トリアジンによつて増加したクロロフィルは, ある日数の間は, 増加したままで, 全体量が減少していくものと思われる。

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