日本植物病理学会報
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30 巻, 4 号
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  • 第5報 イチゴの根腐れを起す数種 Pythium
    高橋 実, 川瀬 保夫
    1965 年 30 巻 4 号 p. 181-185
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    イチゴ根腐病の病原菌として Pythium 菌が各地から分離され, 多くの報告がなされている。しかし病原菌の同定分類は十分に行なわれていない。本報では供試 Pythium 菌のうち3種の既知種と1新種について記載した。それは P. oedochilum Drech., P. debaryanum Hesse, P. mamillatum Meurs および P. fragariae n. sp. である。
    P. oedochilumP. debaryanum は池田市, P. fragariae は八尾市において, P. mamillatum は静岡県久能山のイチゴ栽培地から, それぞれイチゴの根腐れを原因する病原菌として分離された。
    Pythium fragariae n. sp. はトウモロコシ煎汁寒天培地上に胞子のうを著しくつくり, 胞子のうは球のうを生じて遊走子を形成する。蔵卵器は球形, 平滑, 卵胞子は蔵卵器を完全に充満する。雄精器は蔵卵器に通常1個着生し, 同株生である。
  • 第6報 レンコン腐敗病を原因する Pythium
    高橋 実, 大内 昭, Romeo V. ALICBUSAN
    1965 年 30 巻 4 号 p. 186-191
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    大阪, 徳島, 愛知, 香川その外の各地のレンコン栽培地でレンコン腐敗病が発生している。レンコン腐敗病菌として数種の Pythium 菌と Fusarium 菌が分離された。
    Pythium 菌は Streptomycin 50ppm と PCNB 1000ppm で選択的に分離される。
    P. spinosum Sawada, P. ostracodes Drech. の外に新種として P. nelumbium n. sp. を同定した。P. nelumbium は胞子のうが糸状あるいは脹れたのう状体で, 遊走子および分生胞子を形成する。蔵卵器は球形, 平滑, 20.7-31.1μ, 卵胞子は蔵卵器内に充満する。雄精器は蔵卵器に8-15個着生, 異株生または同株生である。
    本菌は門真市でレンコンの腐敗病菌として分離された。
  • 田中 寛康
    1965 年 30 巻 4 号 p. 192-196
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 水稲ごま葉枯病菌の生産する炭水化物分解酵素として, α-, β-amylase, invertase ならびに maltase の4酵素の活性を, 細胞内酵素と細胞外酵素に分けて測定し, 培地の組成との関係を調べた。
    2. α- および β-amylase は菌体内酵素よりも菌体外酵素の方が活性が大であつたが, これとは逆に invertase は菌体内酵素の活性の方が大であつた。
    3. これらの酵素は, それぞれの酵素に対応する炭水化物を添加した培地で多量に生産されるので, 一種の適応酵素であると考えられる。
    4. これらの酵素の生産には, 合成培地に添加する炭水化物の中では maltose が最も適しているようである。
    5. これらの酵素の活性は, 菌体生長量や培養ろ液のpHの変化量とは必ずしも平行しない。
  • 江川 宏, 田端 信一郎, 野口 照久
    1965 年 30 巻 4 号 p. 197-202
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トリアジン (主成分2, 4-dichloro-6-(orthochloroanilino)-1,3,5-s-triazine) の散布が, 窒素欠乏, マグネシウム欠乏, 窒素およびマグネシウム欠乏の状態で栽培した水稲のクロロフィル含量に如何なる変化を与えるかを知る目的で, 窒素欠乏, マグネシウム欠乏, 窒素およびマグネシウム欠乏で栽培した水稲にトリアジンを散布し, 同時に完全肥料液にきりかえて水耕し, 2日後にクロロフィル含量を測定した。この結果, 窒素欠乏, マグネシウム欠乏, 窒素およびマグネシウム欠乏, 完全肥料区ともにトリアジン無散布区にくらべて数倍のクロロフィル含量の増加が認められた。
    肥料要素欠乏の状態で栽培して, トリアジンを散布し, その後2日たつてから完全肥料区にかえたところ, トリアジン散布と無散布との両区間のクロロフィル含量には大差は認められなかつた。このことから, トリアジンの作用は短時間の間しかないものと推定された。
    トリアジン分子中の窒素が肥料として働く場合も考えられるので, 尿素, 硫酸アンモンを対照区として, トリアジンとともに葉面散布し, クロロフィル含量を定量した。その結果, トリアジン散布区〓尿素散布区>硫酸アンモン散布区〓水散布区の順で, トリアジンを散布すれば, 窒素欠乏の場合も, 窒素が充分与えられた場合にも5∼8%のクロロフィル含量の増加が認められた。この結果からトリアジンの窒素がある程度肥料効果をしめすのではないかと推定される。トリアジン散布後の水稲クロロフィル含量の経時変化を調べたところ, トリアジンを散布すると, 2日後に8%程度のクロロフィル含量の増加が認められるが, この増加は, 散布4, 8日後においてもあまり変化を示さなかつた。したがつて, トリアジンによつて増加したクロロフィルは, ある日数の間は, 増加したままで, 全体量が減少していくものと思われる。
  • 角名 郁郎
    1965 年 30 巻 4 号 p. 203-208
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報告は zinc dithiocarbazate およびその分解物 hydrazinium dithiocarbazate, N,N'-diaminothiuram monosulfide, thiocarbohydrazide, 2,5-dimercapto-1,3,4-thiodiazole, hydrazine ならびに対照として zinc sulfide, zinc sulfate, zinc oxide および zineb のキュウリたんそ病に対する作用を検討した。
    zinc dithiocarbazate はキュウリたんそ病に対して著しい予防効果を示し, 対照として用いた zineb とほぼ同等であつた。キュウリたんそ病菌分生胞子の発芽試験では, zinc dithiocarbazate は zineb の1/4の殺菌力を示すにすぎなかつたが, 予防効果との間の矛盾は, zinc dithiocarbazate が分解して殺菌力の著しい hydrazinium dithiocarbazate を生成するという推定によつて説明される。薬量反応曲線の傾斜から, hydrazinium dithiocarbazate, 2,5-dimercapto-1,3,4-thiodiazole は zinc dithiocarbazate とほぼ同じ殺菌機作を示すものと思われる。キュウリ葉汁を供試化合物に添加して分生胞子発芽試験を行なつた結果では, zinc dithiocarbazate と zineb とは化学構造上類似した点はあるが, 殺菌作用はかなり異なるものと推定される。また hydrazinium dithiocarbazate の分解によつて thiocarbohydrazide と hydrazine が生ずるものと推定された。各種分解物のキュウリたんそ病に対する予防試験の結果では, hydrazinium dithiocarbazate, thiocarbohydrazide および N,N'-diaminothiuram monosulfide に zinc dithiocarbazate とほぼ同等の効果が認められた。
    以上の実験結果を総合すると, zinc dithiocarbazate はつぎのように分解し, 殺菌作用を現わすものと推定される。
    Zinc dithiocarbazate-→hydrazinium dithiocarbazate-
    -→thiocarbohydrazide, 2,5-dimercapto-1,3,4-thiodiazole
    -→N,N'-diaminothiuram monosulfide, hydrazine
  • 村山 大記, 小島 誠
    1965 年 30 巻 4 号 p. 209-215
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    著者らはジャガイモ葉巻病ウィルスの虫体内への機械的接種に成功し, その方法を用いて本ウイルスの諸性質を調べた。本ウイルス罹病ジャガイモ葉, 接種感染させた Physalis floridana 葉, あるいは本ウイルス保毒モモアカアブラムシ (Myzus persicae) の搾汁を低速遠沈した上清を, 無毒のモモアカアブラムシに注射することによつて, その注射虫を保毒せしめることができた。またジャガイモヒゲナガアブラムシ (Aulacorthum matsumuraeanam) も病植物汁液あるいは保毒虫の摩砕汁液を注射することによつて保毒することが認められた。
    ウイルスの諸性質についてはモモアカアブラムシを用い, 注射法によつて実験を行なつた。すなわち罹病 P. floridana の汁液を約2°Cに保つたところ, 5日後にもウイルス活性が認められたが, 10日後では失活した。同様の汁液を-20°Cに24時間凍結させた場合, 融解後にもなお活性が認められた。また同罹病植物葉を-20°Cで凍結保存したところ, 1カ月後もなお感染性が保たれていた。同罹病植物汁液をリン酸緩衝液で希釈したところ, 1,000倍希釈では感染力が認められ, 希釈限界は10,000倍であつた。さらに同罹病汁液を10分間加熱したところ, 70°Cでは活性が認められたが, 80°Cでは活性を失なつた。
  • 村山 大記, 横山 竜夫
    1965 年 30 巻 4 号 p. 216-218_1
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    BSMV粒子を切断する目的で紫外線照射したものについて寒天ゲル中沈降反応 (Ouchterlony 法) を行なつた。無照射のものと抗原性に差の見られない1時間照射のものでは, 沈降帯の形や出現位置に変化は見られなかつたが, 2時間以上5時間照射のものでは沈降帯は抗原側からかなり離れた位置に現われ, かつ照射時間の長いものほど沈降帯の曲線がゆるやかになり, 直線に近づくことが認められた。2時間および3時間照射のものでは沈降帯が最も明瞭に認められた。6時間照射のものでは混合法で抗原性が認められたにもかかわらず, 寒天ゲル中法では反応が認められなかつた。以上の結果, 紫外線照射によつてBSMVの粒子が切断され, その結果寒天ゲル中沈降反応が明瞭になるものと考えられた。
  • 第4報 R. solani に対する拮抗菌の働き
    小倉 寛典, 赤井 重恭
    1965 年 30 巻 4 号 p. 219-224
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本論文では Rhizoctonia solani が土壌中で生活する場合, 拮抗微生物とくに拮抗的な働きをする糸状菌がどのようにR. solani の生育に影響するかを検討した。
    供試拮抗菌は Coniothecium sp., Pachybasium sp., Trichoderma sp. (2菌株) であつて, これらの抗菌力は, 寒天培地上では, Trichoderma, Pachybasium, Coniothecium の順に低下する。また培地の養分が少ない場合にも, 抗菌力は低下する。拮抗菌の培養ろ液を土壌層を通過させると, 拮抗力はほとんど失なわれる。しかし, 殺菌土壌中では拮抗菌がR. solani の5倍量程度存在すれば, R. solani の生育をかなり阻害するようであるが, 無殺菌土壌中ではR. solani の5倍量の程度では, Trichoderma の1菌株を除いて, ほとんど抗菌力を示さない。また, 土壌中では拮抗菌が養分を十分得た場合にのみ, R. solani の生育が阻害される。さらに, 根面においては, 根面上の菌量が発病に影響し, 拮抗菌がR. solani の菌量以上に存在しないと発病を阻止し得ない。
    以上のことから, 拮抗菌による幼苗立枯病の阻止には, 拮抗菌と病原菌との接触しうる機会, 両菌の相対的な菌糸量, 有機質の利用能力などを併せて考えねばならない。
  • 豊田 栄, 木村 郁夫, 鈴木 直治
    1965 年 30 巻 4 号 p. 225-230_1
    発行日: 1965年
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    福士・四方・木村1)によるイネ萎縮病ウイルスの電顕像はウイルス粒子が油滴状物質で被われていることを示している。罹病イネ茎葉から分画遠心分離で得たウイルス標品はDEAEセルローズカラムに吸着されNaCl 0~1Mの濃度勾配で溶出されず, 0.5M NaOHでようやく溶出されるところからみて被覆物質は強酸性物質と想像される。蛇毒およびパンクレアチンのホスホリパーゼで5℃, 2日処理するとこの物質は完全に除去され, ウイルス粒子はDEAEセルローズカラムから0.2~0.25M NaClで溶出され, この溶出液中のウイルス粒子は電気泳動像, 沈降図型および電子顕微鏡観察から純度の高いことが示された。これを無毒ツマグロヨコバイに注射すると, ヨコバイが保毒になりイネを発病させた。このことにより純化されたウイルスが感染力を有することが証明された。同じ方法で, 0.15M NaCl溶出部を捨て0.25M NaCl溶出部をとると同様のウイルス標品を得る。生葉300gから約30mgのウイルスが得られる。
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