抄録
著者らはジャガイモ葉巻病ウィルスの虫体内への機械的接種に成功し, その方法を用いて本ウイルスの諸性質を調べた。本ウイルス罹病ジャガイモ葉, 接種感染させた Physalis floridana 葉, あるいは本ウイルス保毒モモアカアブラムシ (Myzus persicae) の搾汁を低速遠沈した上清を, 無毒のモモアカアブラムシに注射することによつて, その注射虫を保毒せしめることができた。またジャガイモヒゲナガアブラムシ (Aulacorthum matsumuraeanam) も病植物汁液あるいは保毒虫の摩砕汁液を注射することによつて保毒することが認められた。
ウイルスの諸性質についてはモモアカアブラムシを用い, 注射法によつて実験を行なつた。すなわち罹病 P. floridana の汁液を約2°Cに保つたところ, 5日後にもウイルス活性が認められたが, 10日後では失活した。同様の汁液を-20°Cに24時間凍結させた場合, 融解後にもなお活性が認められた。また同罹病植物葉を-20°Cで凍結保存したところ, 1カ月後もなお感染性が保たれていた。同罹病植物汁液をリン酸緩衝液で希釈したところ, 1,000倍希釈では感染力が認められ, 希釈限界は10,000倍であつた。さらに同罹病汁液を10分間加熱したところ, 70°Cでは活性が認められたが, 80°Cでは活性を失なつた。