日本植物病理学会報
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熱帯産イネ白葉枯病菌 (Xanthomonas oryzae) および条斑細菌病菌 (X. translucens f. sp. oryzae) のファージによる系統分類
後藤 正夫
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1965 年 30 巻 5 号 p. 253-257

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抄録

フィリピンで分離した7株の白葉枯病菌ファージ (Bp1-Bp7) を日本のファージと比較した結果, Bp1はOp2と寄主範囲で一致し, Bp2もこれと近縁関係が認められたが, Bp3-Bp7は何れも日本産のファージと寄主範囲で異なつていた。これらのファージを用いて, フィリピン, タイ, インドネシア産の81株の白葉枯病菌の系統分類を試みた結果, 15の lysotypes に分かれ, その分布は地域によつてかなりはつきりした違いが認められた。供試菌株の中には, 日本産およびBpファージのいずれにも全く作用を受けない菌株が19株含まれていた。日本産ファージを使つてこれら熱帯産の白葉枯病菌の系統構成を調べた結果, CおよびD系統が圧倒的に多く, A系統が極めて少ない点で日本のそれとは大きく異なつている点が注目された。白葉枯病菌ファージは供試した白葉枯菌以外の数種の Xanthomonas 属菌には作用を示さなかつた。
条斑細菌病菌の6株のファージを分離して, フィリピン産の86株の系統分類を行なつた結果, 16の lysotypes に分けることができたが, それらの分布にははつきりした地域的な差は認められなかつた。条斑細菌病菌のファージのうち, Sp3はX. campestris, X. citri, X. maculifoliigardeniae, X. oryzae, X. phaseoli, X. phaseoli-sojense, X. pisi, およびX. translucens の一部の菌株に溶菌作用を有し, Sp6も X. campestris, X. pisi, X. oryzae の一部の菌株に溶菌を起した。その他のSpファージは条斑細菌病菌のみに特異的に作用した。

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