日本植物病理学会報
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イネの子実発育および炭水化物含量におよぼすジヒドロストレプトマイシン散布の影響
鈴木 喬夫角名 郁郎
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1966 年 32 巻 1 号 p. 52-57

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抄録
イネの最高分けつ期,穂孕期,穂揃期にそれぞれDsm製剤400u/mlを散布し,収量解析を行なつた結果,穂揃期散布は急性薬害を生じないが登熟歩合を低下させることが判明した。次にDsm製剤の主成分であるDsm硫酸塩を穂揃期イネの開花前に散布した結果,1000ppmの濃度では急性薬害および受精障害は認められなかつたが粒重は明らかに減少した。100ppmの濃度では受精,粒重に対してほとんどその影響を認めなかつた。次に籾の発育に密接に関連する炭水化物転流に対する影響についてはイネの各部位別の糖分析の結果,Dsm 1000ppm散布は無散布に比して止葉中の還元糖,全糖,殿粉含量にはほとんど差異が認められなかつたが,葉鞘および茎中ではこれらの含量が高く,籾中では還元糖,全糖含量,とくにsucrose, fructose, glucose含量が高いが,澱粉含量は低下していた。したがつて止葉と籾との間の全糖含量の差を算出してみると,その値は無散布に比べて小さく糖濃度勾配が小さいことを暗示している。Dsm 100ppm散布の場合は,上記1000ppm散布の場合のような差異はほとんど認められなかつた。
これらの実験結果から,Dsm 1000ppmの穂揃期散布は糖の転流阻害が一要因となり,粒重の低下をきたし,減収をひきおこすものと推定される。
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