1966 年 32 巻 5 号 p. 251-259
水稲ごま葉枯病病斑周縁組織の各種色素による染色性とでん粉蓄積との関係を調べるために,本病り病水稲葉を種々の色素液に24時間そう入して色素液を上透させ,病斑およびその周辺各部の染色状態を観察した。
病斑え死部はわずかの色素でわずかに染色される程度であり,また中毒部の葉肉部はほとんどすべての色素で染まらない。病斑周縁組織は接種後2日以内では塩基性色素によって健全部より染色され難いが,3日以後ではそれらの間にほとんど差が見られなくなる。これに対し酸性色素は常に病斑周縁組織をよく染色し,さらにAcid fuchsinは例外的であって中毒部の葉肉部をも染色すると同時に病斑周縁組織を健全部よりはるかによく染色する。これらのことから本病病斑周縁組織はとくに感染初期において正に荷電されるものと思われる。一方でん粉の異常蓄積と色素による染色異常との間の直接的な関係を調べるために,感染初期における本病病斑周縁組織のでん粉蓄積部(St), acid fuchsin染色部(Af), basic fuchsinならびにlight green非染色部(bfならびにlg)の面積を測定し,これらを比較すると,Af>>St>bf=lgであった。したがってこれら2つの現象の間には直接的な関係は見出しえなかった。