日本植物病理学会報
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レンゲ萎縮病ウイルスによるエンドウおよびソラマメの萎黄病
井上 忠男井上 成信光畑 興二
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1968 年 34 巻 1 号 p. 28-35

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抄録

和歌山,愛知,岡山の各県下のエンドウやソラマメに1種の萎黄病型のウイルス病が散発し,場所によつては激発した例も観察された。病原ウイルスは汁液接種できず,モモアカアブラムシ,エンドウヒゲナガアブラムシ,ソラマメヒゲナガアブラムシでは伝搬されないが,マメアブラムシで永続的に運ばれる。エンドウ,ソラマメ,インゲン,ダイズ,アズキ,レンゲその他の多くのマメ科植物に病原性があり,黄化,縮葉,萎縮などの病徴をあらわす。Datura stramoniumにも病原性があり,タバコ類も感受性植物である可能性がある。病植物表皮細胞中にX体は認められず,dip法試料中に桿状粒子は検出されない。マメアブラムシのウイルス獲得吸汁時間は長いほど(4時間以上)効率がよいが,まれに最短5分間の吸汁でウイルスを保毒した例もあつた。接種吸汁時間も4時間以上で伝搬率が高まるが,5分間の吸汁でも伝搬される。虫体内でのウイルス潜伏期間は25℃(昼間),18℃(夜間)条件下で最短約36時間であつた。保毒アブラムシのウイルス伝搬能力には個体差があるが,おおむねかなり長期間にわたつて伝搬能力が維持され,ほぼ終生連日伝搬力を示す個体もあつた。本ウイルスは寄主範囲,病徴,媒介虫の種類,伝搬様式の特徴から,エンドウやソラマメを自然寄主として報告された既往のどのウイルスとも異なり,松浦(1953)や日野および井上ら(1967)により記載されたレンゲ萎縮病ウイルスに相当するものと同定された。

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