日本植物病理学会報
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34 巻, 1 号
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  • 飯田 格, 工藤 和一, 君ケ袋 尚志
    1968 年 34 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    An investigation was made to estimate the damage of Cercospora leaf spot caused by Cercospora beticola Sacc. in sugar beet, Beta vulgaris var. rapa Dumot. The disease in field grown sugar beet plants was controlled by spraying with copper fungicide and therefore this chemical was used for establishing different degrees of damage.
    When the seeds were sown in the Tohoku district in late April, the damage was most severe at forty leaves stage of the plant. At the stage, generally, the top growth of the plants was most vigorous. When the infection was severe, the plants showed severe defoliation and reduction of the vigorous leaves. As the result, reduction of root growth yield and sugar content were corresponded.
    When the infection occurred after forty leaver stage of the plants, the damage was not so severe.
  • 小室 康雄, 岩木 満朗
    1968 年 34 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Two causal viruses were isolated from crotalaria (Crotalaria spectabilis) showing yellow ringspot and mosaic symptoms. The first virus was identified with bean yellow mosaic virus. The virus was transmitted mechanically and also by Myzus persicae. The hosts of this virus were crotalaria, broad bean, bean, soybean and Chenopodium amaranticolor. In electron microscopy using dip method, long flexuous thread-like particles were observed, and the length of them was 700-800mμ. Juice from diseased broad bean leaves reacted positively with antiserum of bean yellow mosaic virus (Komuro and Tochihara, 1964) in a slide flocculation test. The second virus was identified with tobacco ringspot virus. The virus was transmitted mechanically and also by Myzus persicae. The host range of this virus was comparatively wide, namely, aster, zinnia, Nicotiana tabacum (Bright Yellow, Xanthi), N. glutinosa, petunia, okra, broad bean, crotalaria, bean, soybean, turnip, New Zealand spinach, Gomphrena globosa, C. amaranticolor, beet and others. Characteristic ring-like pattern symptoms were observed on N. tabacum (Bright Yellow, Xanthi), N. glutinosa, and Datura stramonium, and these symptoms had a tendency to be masked under high temperature conditions. This virus isolate showed some differences from the hitherto reported tabacco ringspot viruses in noninfectivity to cucurbitaceous plants and in the symptoms on soybean. In electron microscopy using direct negative stain methond, spherical particles of about 26mμ in diameter was observed. The virus in vitro withstood heating at 65°C for 10 minutes, dilution to 5, 000 and 7 day's aging at room temperature.
    Kahn et al. (1963) reported that bean yellow mosaic virus was isolated from crotalaria, but the disease of crotalaria by tobacco ringspot virus has not yet been reported. This is also the first report in recognition of tobacco ringspot virus in Japan.
  • 獅山 慈孝, 大口 富三, 赤井 重恭
    1968 年 34 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    感染初期におけるinducible resistanceの問題を寄主の蛋白代謝の問題にしぼつて解明する目的で,罹病によるイネ葉中蛋白の質的および量的変化を追求した。すなわち,幼苗,出穂期のイネにごま葉枯病菌を接種し,接種8, 16, 24時間後に採葉して,Danielssonの修正法により蛋白フラクションを調整し,濾紙電気泳動法,カラムクロマトグラフィーによつて分画した。その結果は以下のとおりである。
    1. 溶離剤としてトリス緩衝液を用いたDEAE-celluloseカラムクロマトグラフィーによつてイネ蛋白は6フラクションに分けられ,接種葉蛋白ではその中の3フラクションに量的変化を認めた。
    2. イネの生育時期,栽培法の相違により,蛋白パターンに多少の変化をみたが,感染によつて変化するのは0.05M, 0.5M, 1Mのフラクションであつた。
    3. 出穂期のイネでは,接種16時間後に著しい量的変化を示したが幼苗では変化なく,24時間後になつて変化を認めた。これは出穂期における水稲が生理的に変動しやすい時期にあるためと考えられる。
  • 獅山 慈孝, 大口 富三, 赤井 重恭
    1968 年 34 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    前報でのべたように,ごま葉枯病感染初期のイネ葉中にはDEAE-celluloseカラムを用いトリス緩衝液でイネ蛋白を溶離すると0.5Mおよび1.0Mフラクションが増加する。本報ではこれら増加蛋白フラクションの生化学的性質を調べるとともにごま葉枯病罹病組織における代謝生理との関係を解明しようとした。
    (1) 溶離蛋白フラクションの抗菌性を検討した結果,ごま葉枯病菌の胞子発芽阻害および発芽管の伸長抑制作用は全く認められなかつた。
    (2) 0.5Mと1.0Mのトリス緩衝液で溶離した接種葉中の蛋白フラクションにはカタラーゼ活性が認められたが,健全葉では0.5Mフラクション以外にはその活性が認められなかつた。0.5MフラクションにはFe++, Fe+++反応を検出しなかつたので鉄酵素以外の酸化酵素を含むものと考えた。また,β-アミラーゼ活性は全く認められなかつたが,接種葉0.5Mおよび1.0Mフラクションにはその活性を阻害する蛋白のあることが明らかになつた。したがつて,接種葉において増加する蛋白の一部にはβ-アミラーゼ活性の阻害作用をもつものと考えられ,それがでん粉の分解移行を妨げ,病斑周縁部にでん粉蓄積を来たす一因となるものと推定した
    (3) 0.5M蛋白フラクションのアミノ酸組成をアミノ酸自動分析機で調べたところ,接種葉の蛋白にはglutamic acidの量が少なく,aspartic acidの量が多い。
  • 井上 忠男, 井上 成信, 光畑 興二
    1968 年 34 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    和歌山,愛知,岡山の各県下のエンドウやソラマメに1種の萎黄病型のウイルス病が散発し,場所によつては激発した例も観察された。病原ウイルスは汁液接種できず,モモアカアブラムシ,エンドウヒゲナガアブラムシ,ソラマメヒゲナガアブラムシでは伝搬されないが,マメアブラムシで永続的に運ばれる。エンドウ,ソラマメ,インゲン,ダイズ,アズキ,レンゲその他の多くのマメ科植物に病原性があり,黄化,縮葉,萎縮などの病徴をあらわす。Datura stramoniumにも病原性があり,タバコ類も感受性植物である可能性がある。病植物表皮細胞中にX体は認められず,dip法試料中に桿状粒子は検出されない。マメアブラムシのウイルス獲得吸汁時間は長いほど(4時間以上)効率がよいが,まれに最短5分間の吸汁でウイルスを保毒した例もあつた。接種吸汁時間も4時間以上で伝搬率が高まるが,5分間の吸汁でも伝搬される。虫体内でのウイルス潜伏期間は25℃(昼間),18℃(夜間)条件下で最短約36時間であつた。保毒アブラムシのウイルス伝搬能力には個体差があるが,おおむねかなり長期間にわたつて伝搬能力が維持され,ほぼ終生連日伝搬力を示す個体もあつた。本ウイルスは寄主範囲,病徴,媒介虫の種類,伝搬様式の特徴から,エンドウやソラマメを自然寄主として報告された既往のどのウイルスとも異なり,松浦(1953)や日野および井上ら(1967)により記載されたレンゲ萎縮病ウイルスに相当するものと同定された。
  • 堀野 修, 赤井 重恭
    1968 年 34 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    本論文ではイネごま枯病菌菌糸およびいもち病菌菌糸の微細構造を電子顕微鏡で観察し,両菌糸の比較を行なつた。
    1. ごま葉枯病菌菌糸の細胞壁は分生胞子と同様に3層からなり,厚さは平均,0.80μである。細胞内には平均,4個の核を(1.50×1.00μ)有し,さらに滑面内細胞質網状体,楕円体のミトコンドリア(0.76×0.51μ),隔膜形成に関係すると思われるperipheral bodyなどが認められる。ミトコンドリアのクリステはその外膜に平行に配列している場合が多い。
    2. いもち病菌菌糸の細胞壁は外層,内層の2層からなり,その厚さは平均,0.34μである。本菌菌糸細胞は1個の核(2.48×1.98μ)および種々の細胞質顆粒を含有する。ミトコンドリアは楕円体で,そのクリステは外膜に対し垂直に分布するものが多く,滑面内細胞質網状体には複雑によじれ合つた膜構造がみられる。また,脂肪粒(径1.50μ)は菌糸先端部近くに多数存在する。
  • 稲葉 忠興, 斎藤 康夫
    1968 年 34 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    鳥取県のムギ栽培圃場より採集したモザイク症状スズメノカタビラの病原ウイルスと土壌伝染性ムギモザイク病ウイルスとの関係を研究した。
    1. 採集したモザイクの病徴を示すスズメノカタビラ病葉からDip法により110~160mμ×25mμの桿状粒子が認めれ,葉の表皮細胞中にX体が認められた。また罹病スズメノカタビラからスズメノカタビラに汁液人工接種が可能である。
    2. 本ウイルスの土壌伝染は認められたが,種子伝染は認められなかつた。
    3. 汁液人工接種および土壌伝染によりコムギは本ウイルスに感染しムギ類萎縮病によく似た病徴を呈しX体,桿状ウイルス粒子が認められ,感染コムギからスズメノカタビラに戻し接種が可能で原寄主と同様の病徴を呈した。
    4. 本ウイルスの部分純化標品は補体結合反応でムギ類萎縮病ウイルス抗血清と高く反応した。
    5. 罹病株の根にはPolymyxa graminisが認められた。
    6. 以上の結果から本ウイルスはムギ類萎縮病ウイルスと考えられる。
    7. 本ウイルスに雑草のスズメノカタビラが感染していることは圃場における本病の蔓延を考えるにあたつて見のがせない点である。
  • 江川 宏, 吉井 和弘, 上山 昭則
    1968 年 34 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病菌Xanthomonas oryzae (Uyeda et Ishiyama) Dowson(農業技術研究所保存株H-5809)を脇本氏培地に培養した培養液中にイネ幼根生育抑制物質の存在することが明らかになつた。
    この物質を単離するため菌培養液をエーテルで抽出し,それをさらに酸性部に分け,水蒸気蒸溜してその残渣をSilica Gel Column-chromatographyによつて抑制物質を精製し,菌培養液10lから約50mgの結晶を単離し得た。この抑制物質のm.p.は76.5℃で,フェニール酢酸の赤外線吸収スペクトルと同一であつた。またフェニール酢酸との混融試験を試みたが融点降下をしめさなかつた。したがつてこの単離された抑制物質はフェニール酢酸であることが確認された。
  • 1. 病原菌のイネ苗子葉鞘上での行動とその微細構造
    堀野 修, 赤井 重恭
    1968 年 34 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    本論文においては,イネごま葉枯病に対して感受性の異なる2品種を用い,それらの子葉鞘上における病原菌の侵入前行動を比較検討した。さらに,本病に感受性品種である滋賀旭27号に対する本菌の侵入前および侵入時の微細構造を電顕的に観察した。
    1. イネ子葉鞘上における本菌分生胞子の発芽,発芽管の伸長および付着器の形成は本病に対して抵抗性である亀治において,感受性品種の滋賀旭27号より明らかに抑制された。
    2. 本病に対して抵抗性である亀治の子葉鞘表皮細胞壁の厚さは感受性品種,滋賀旭27号よりも約27%厚かつた。
    3. 子葉鞘上における本菌分生胞子の若令発芽管は粘質の内層のみからなるが,老令の発芽管および付着器細胞壁はいずれも電子密度の高い外層と低い内層からなり,平均約0.2μである。その細胞壁周辺には粘液物質が存在し,感受体表面への付着を助けるようである。
    4. 表皮細胞上に付着器が形成された場合,表皮細胞壁のクチクラ層は本菌の化学的分解力によつて変性し,ある場合には破壊されそのクチクラ層の断片が直接発芽管あるいは付着器に密着することがしばしば認められた。以上の観察結果から,イネごま葉枯病菌の子葉鞘感染はおもに付着器と侵入糸の物理的圧力によつて行なわれるようであるが,その場合寄主細胞膜の厚さおよび本菌の化学的分解力に対する寄主細胞膜の抵抗力が本菌の侵入に関係するものと考えられる。
  • 江川 宏, 益子 道生, 上山 昭則
    1968 年 34 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Czapek培地のNaNO3をちつ素として等量のアミノ酸でおきかえて数種の植物病原菌を接種した。培養初期にはその培養液中に未知ニンヒドリン陽性物質(NPS)の存在を確認したので数種の化合物と比較同定を試みた。しかしNPSは,薄層クロマトグラムの結果からは,アラニン,グリシン,トレオニン,グリタミン酸,グルタミン,グルコサミンならびにアントラニル酸とは異なる化合物であることはわかつたが,なお同定するに至らなかつた。一般に植物病原菌はこのような培養条件下では,培養初期にその培養液中にNPSをつくる代謝系をもつていることが推定された。
  • 日野 稔彦, 吉井 甫
    1968 年 34 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) タバコとN. glutinosaとを接木し,十分活着したのち(数週間後)このタバコ部分にTMVを接種するとN. glutinosaの新たに生じた側枝は全身壊死を起した。この壊死を起すまでの日数は,N. glutinosaを台木にした場合には9~16日,これを穂木にした場合には15~23日であつた。これらの壊死部分からTMVが高率に分離できた。
    (2) タバコとN. glutinosaとの接木植物の,N. glutinosaの葉にTMVを接種した結果ではその葉に局部壊死斑が生じた。
    (3) N. glutinosaを台木にしてその上にタバコを接木し,さらにその上にN. glutinosaを穂木とした二重接木植物のタバコ葉にTMVを接種した結果では,台木N. glutinosaの若い側枝の組織が10~14日後に壊死を起した。これに対し,穂木N. glutinosaには異常が認められず,TMVも検出できなかつた。
    (4) タバコを台木にしてその上にN. glutinosaを接木し,さらにその上にタバコを接木した二重接木植物の台木または穂木のタバコにTMVを接種した結果, TMVはN. glutinosa茎を通過して反対側にある非接種部のタバコに移動した。要した日数は15~24日であつた。
    (5) 接木植物のN. glutinosaの幼い側枝が壊死を起した直後および5日後に,この部分を固定し連続切片にしてその側枝内における壊死斑の分布を組織学的に観察した。生長点とその周辺の分裂がさかんな組織では壊死が認められなかつた。壊死を起したのはこれに続く下方の部分で,まず篩部が壊死し,篩部だけに壊死が認められた場合もあつた。つづいて,隣接する組織が壊死するもののようであつた。また,TMVが通過した茎の組織に壊死が認められない部分があつた。
    (6) 以上により接木接種では,TMVはN. glutinosaの成長した篩管(核をもつていない)中では増殖せずにこれを通過し,若い篩部に到達して増殖すること,また,生長点付近の分化の進まない幼弱組織では増殖しないことを示していると結論した。
  • 吉井 甫
    1968 年 34 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 1968年
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1)タバコモザイクウイルス(TMV)を接種したときのN. glutinosaの細胞内の変化は,TMVの増殖と平行しておこる葉緑体や核の変性に始まる原形質の崩壊と,褐色々素の集積で示される病変であるといわれている6,16)。(2)TMVの感染によつてN. glutinosaに生ずる壊死斑は次第に大きくなるのが常である(Fig. 1)。TMVはときには葉柄,茎の内部を通り,茎頂に移動してその部の壊死をおこし(Fig. 2),ついにはその植物の全組織にわたる枯死をおこす。(3) N. glutinosaの示すこのような壊死反応は,ムギ黒さび病菌の侵入時におこる強抵抗性コムギ品種の,過敏感に由来する壊死反応とは異質のものである。いま改めて菌類寄生病中にこの壊死斑形成の類例を求めればColletotrichum lindemuthianumに侵された場合の中等度罹病性インゲン品種をあげることができよう。
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