日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
イネごま葉枯病に関する病理解剖学的研究
1. 病原菌のイネ苗子葉鞘上での行動とその微細構造
堀野 修赤井 重恭
著者情報
ジャーナル フリー

1968 年 34 巻 1 号 p. 51-55

詳細
抄録

本論文においては,イネごま葉枯病に対して感受性の異なる2品種を用い,それらの子葉鞘上における病原菌の侵入前行動を比較検討した。さらに,本病に感受性品種である滋賀旭27号に対する本菌の侵入前および侵入時の微細構造を電顕的に観察した。
1. イネ子葉鞘上における本菌分生胞子の発芽,発芽管の伸長および付着器の形成は本病に対して抵抗性である亀治において,感受性品種の滋賀旭27号より明らかに抑制された。
2. 本病に対して抵抗性である亀治の子葉鞘表皮細胞壁の厚さは感受性品種,滋賀旭27号よりも約27%厚かつた。
3. 子葉鞘上における本菌分生胞子の若令発芽管は粘質の内層のみからなるが,老令の発芽管および付着器細胞壁はいずれも電子密度の高い外層と低い内層からなり,平均約0.2μである。その細胞壁周辺には粘液物質が存在し,感受体表面への付着を助けるようである。
4. 表皮細胞上に付着器が形成された場合,表皮細胞壁のクチクラ層は本菌の化学的分解力によつて変性し,ある場合には破壊されそのクチクラ層の断片が直接発芽管あるいは付着器に密着することがしばしば認められた。以上の観察結果から,イネごま葉枯病菌の子葉鞘感染はおもに付着器と侵入糸の物理的圧力によつて行なわれるようであるが,その場合寄主細胞膜の厚さおよび本菌の化学的分解力に対する寄主細胞膜の抵抗力が本菌の侵入に関係するものと考えられる。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top