抄録
1960年10月秋田県大曲市で採集したダイコンモザイク症状株から未報告のウイルスが分離された。本ウイルスは径25~30mμの球状粒子で,病葉汁液での耐熱性は60~65℃, 10分。キスジノミハムシが伝搬する。ナガメによる伝染,アブラムシ伝染,種子伝染および土壌伝染は認められない。ダイコンにモザイクやえそを生じ,enationや糸状突起などの特異的な病徴を示す。多くのアブラナ科作物に全身感染するが,アブラナ科植物以外ではホウレンソウに全身感染,アカザとC. amaranticolorの接種葉にlocal lesion,センニチコウの接種葉に黄斑を生じまれにtop-necrosisを生ずる。ペチュニアでは病徴は現われないが接種葉でウイルスは増殖する。家兎に注射して抗血清を作製本ウイルスはダイコン萎縮病ウイルス10)とradish mosaic virus5,6,28)に類似しているが,ダイコンひだ葉モザイクウイルス(radish enation mosaic virus)と命名した。わが国でハムシ類が伝搬するウイルスの存在が確認されたのは本ウイルスが最初である。