抄録
いもち病菌胞子形成におよぼすPCBAの影響を調査した。すなわち,野外の畑苗代試験,温室内のポット試験および室内でのin vitroにおける試験からつぎの結果が得られた。
(1) いもち病が発生した苗代にPCBAを散布したところ,それまでに観察されていた胞子の飛散が散布直後から激減し,この状態は約10日間つづいた。(その後はイネが完全にズリ込み,気温が低下して全体に胞子飛散が少なくなつたので観察を中止した)。
(2) PCBA散布区に胞子飛散がみられないのは病斑上に胞子形成が行なわれないことによるものであつた。
(3) PCBAのいもち病菌胞子形成阻害作用はイネが個体としての機能を果している場合に認められ,病葉を切り取つた場合はたとえPCBAが病斑上に付着していても阻害効果は全く見られなかつた。これに対して,PMA,およびBc-Sはいずれの場合にも胞子形成阻害作用が認められた。
(4) 人工培地上におけるいもち病菌の胞子形成はPCBA添加により著しい阻害を受けなかつた。一方PMAあるいはBc-Sの添加は強い胞子形成阻害作用を示した。