抄録
32Pでラベルしたタバコモザイクウイルス(TMV)を作った。これをタバコ葉に接種後,感染時間を追って接種葉をすりつぶし,600g遠心沈殿(P1,核・葉緑粒など),15,000g遠心沈殿(P2,ミトコンドリア),105,000g遠心沈殿(P3,リボソーム),その上清の酸不溶(P4),同酸可溶(S)各分画にわけて,32P-TMVのとりこみをみた。接種後6時間目まで,P3分画のとりこみは増加し,P1分画のとりこみは減少する。6時間を境として,P3分画のとりこみは減少し,P1分画のそれは増加した。S分画では,6時間目までのとりこみが,それ以後のとりこみより多かった。磨砕液をRNaseで処理して同様に分画したが,本質的に同じ傾向が認められた。非ラベル磨砕液に,試験管内で32P-TMVを混合したのち分画すると,大部分の活性はP3分画にあり,感染時期による変動はみられなかった。以上の事実から,宿主細胞に侵入直後のTMVの行動について考察した。