日本植物病理学会報
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蛋白合成阻害剤である抗生物質がタバコモザイクウイルスの増殖および宿主の代謝に及ぼす影響
片岡 正明道家 紀志平井 篤造
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1969 年 35 巻 5 号 p. 329-338

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抄録

ブラストサイジンS (BcS)とピューロマイシン(PM)は菌類や高等生物の80Sリボソームでの蛋白合成を阻害する抗生物質である。これらはTMVのタバコ葉内での増殖を阻害する。一方,クロラムフェニコル(CM)は細菌のリボソーム(70S)での蛋白合成を阻害するが,TMVの増殖は阻害しない。これらの抗生物質を作用させて生じたウイルスは,無処理下で生じたウイルスと比較して,単位濃度あたり同じ感染性をもっていた。BcSやPMはタバコ葉の細胞質蛋白へのロイシンのとりこみを阻害したが,CMはそれを阻害しなかった。CMはタバコ葉のクロロフイルの分解をBcSやPMよりもはげしく促進した。14CO2のタバコ葉へのとりこみはCMで強く阻害されたが,BcSやPMでは阻害されなかった。14C-アミノ酸を細胞質を通じて,また14CO2を葉緑体を通じて,それぞれTMVへとりこませると,BcSやPM処理では,ウイルス量の減少と比例してとりこみ量も低下した。しかしCM処理では,ウイルス量は無処理と変らないままで,14C-アミノ酸のとりこみは明暗所下ともに促進され,14CO2のとりこみ量はいちじるしく阻害された。後者のとりこみはTMVの蛋白へのとりこみが圧倒的である。そこで同じアミノ酸でも,葉緑体を通じてTMVへ入る量はCMで強く阻害されることになる。以上の事実から,TMVはタバコ葉の細胞質(80Sリボソーム)で増殖することが推定され,またTMVの増殖に対する光合成機能の役割についても論義された。

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