日本植物病理学会報
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オオムギ縞萎縮病の伝染について
第1報 病根を浸漬した水の感染性
草葉 敏彦遠山 明
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1970 年 36 巻 4 号 p. 214-222

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抄録

(1) 殺菌土栽培オオムギ葉に縞萎縮病ウイルスを人工接種して得た発病株の根あるいは跡地土壌は感染性をもたないことを確認した。
(2) Dexon 70-140ppmを播種直前に播種溝に灌注すると発病が減少する。しかし病葉汁液にDexon 50-200ppmを加えて人工接種しても感染性に影響がみられなかった。
(3) 病根磨砕物に水を加え325メッシュで濾過した濾液は感染性を示した。この濾液にはP. graminisの休眠胞子が高濃度に含まれているが,この濾液を100倍以上に希釈すると感染性は失われた。
(4) 病根を水中に浸漬すると,浸漬4日以後の水に感染性が認められ,4-15日間浸漬のものに感染性がやや高かった。また浸漬前に病根を2週間以上土中に埋没しておくと浸漬水の感染性がやや高くなった。
(5) 根を水に浸漬すると大部分P. graminisのものと考えられる遊走子が水中に放出されるが,漬浸後の時間的経過にともなう遊走子密度の消長と浸漬水の感染性の変化とには平行関係が認められた。
(6) 以上の結果からP. graminisが本病の媒介者となっている可能性が高いものと考えられる。

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