1. ササゲおよびアズキにおいて,種子伝染性ウイルスと非種子伝染性ウイルスを用い,ウイルスの種子伝染と配偶子感染との関係を調べた。
2. 花粉伝染と胚のう伝染は種子伝染の起こるアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV)とアズキ,ササゲ・モザイク・ウイルス(CAMV)とササゲの組合せでだけ起こり,種子伝染の起こらないキュウリ・モザイク・ウイルス-アズキ,CAMV-アズキ,サブクロ-バ・モットル・ウイルス-ササゲの組合せでは起こらなかった。
3. ササゲを親植物とした場合,種子伝染の起こるvirus-hostの組合せの場合だけ,検定植物への汁液接種により花粉からウイルスが検出された。しかし葯,子房からは,種子伝染しないvirus-hostの組合せでもウイルスが検出されることが,ササゲ,アズキのいずれを親植物としたときにも認められた。
4. 各種ウイルスに感染したアズキ,ササゲの雌しべ,雄しべ,花弁,葉につき,ウイルス濃度を比較した。一般に雌しべ,雄しべのウイルス濃度が花弁,葉より低い傾向がみられたが,種子伝染の有無とはとくに関係はなかった。次にCAMVに感染したササゲ,アズキの葯,子房のウイルス濃度を比較した。葯ではササゲの方がアズキよりもウイルス濃度が高かったが,子房ではその逆で,種子伝染の有無と葯,子房のウイルス濃度の間にとくに関係は認められなかった。
5. CAMV-ササゲ,AzMV-アズキの組合せで,開花期にウイルスを接種し,開花日別に分けて種子を集め,種子伝染の有無を調べた。その結果,ともに接種日から約20日以後に開花し,結実した種子だけに種子伝染が起こった。一方,CAMV-ササゲの組合せで接種後一定間隔の期日ごとに花粉,葯,子房,花弁からのウイルスの検出を試みた。子房,花弁では接種4日後から,葯では接種10日後から,花粉では接種17日後からウイルスが検出され,種子伝染にはウイルスの配偶子感染が必要であることが示された。
抄録全体を表示