日本植物病理学会報
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Botrytis cinerea Pers.の菌糸発育,分生胞子形成ならびに分生胞子の新旧と発芽,付着器形成
白石 雅也福富 雅夫赤井 重恭
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1970 年 36 巻 4 号 p. 230-233

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抄録

本報告はBotrytis cinerea Pers.の菌叢の発育,分生胞子形成ならびに分生胞子のagingと発芽および付着器形成との関係について行なった実験の結果である。
1) キュウリ幼果から分離した菌の,PSA培地(pH 5.5)上における菌叢発育の適温は24-28°Cであって,5°Cではわずかに発育するが,0°および35°Cではほとんど発育しない。
2) ウレタンホーム細片を添加し液体振とう培養法により同調培養した場合,ウレタンホーム上の菌叢上での分生胞子形成は約24時間で最高に達し,3日目までわずかに増加するが,その後はほとんど増加しなかった。一方,PSA培地上における分生胞子形成は,24°Cで3日目から始まり,4日目には最高形成数の約90%に達し,6日目以後にはほとんど形成されない。両培地におけるこの相違は,PSA培地上における移植菌糸の発育に要する日数に基づくものと考えられる。
3) 液体振とう培養による同調分生胞子は若いものほど発芽が良好であって,形成24時間後のものでは87%の発芽率を示したが,形成後の経過日数とともに低下し,3日後では50%以下となり,6日以後のものではほとんど発芽しなかった。PSA培地上に形成した分生胞子では,培養4日目のものの発芽がきわめて良好であったが(平均92%),経過日数とともにいちじるしく低下し,7日目のものではわずかに5%の発芽を認めたにすぎなかった。PSA培地上において形成された分生胞子の発芽力も時間の経過とともに同調培養の場合とほぼ同じ程度に低下する。
4) 発芽した分生胞子の付着器形成は形成後2日目の分生胞子においてもっとも良好であった。しかし形成6日目の胞子でもなおかなりの付着器形成が認められた。

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