日本植物病理学会報
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Botrytis cinerea Pers.の分生胞子発芽および付着器形成に及ぼす温度の影響
白石 雅也福富 雅夫赤井 重恭
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1970 年 36 巻 4 号 p. 234-236_2

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抄録

本報告はBotrytis cinerea Pers.分生胞子の発芽および付着器形成に及ぼす温度の影響ならびにそれらの形態の変化について観察した結果である。
1) 本菌分生胞子は15-32℃において良好な発芽をするが,10℃では発芽にやや時間を要し,48時間後にようやく約60%に達した。
2) 48時間後における最適発芽温度は20-30℃であるが,最高限界温度は35℃であり,最低限界温度は10℃以下にあるものと思われる。
3) 付着器形成は10-30℃で認められたが,その最適温度は15-20℃であった。10℃では発芽に時間を要したが,付着器形成はかなり良好であった。25℃以上では発芽は良好であって,発芽管はよく伸長するが,付着器形成は良好でない。30℃での発芽はまったく発芽管型となって,発芽管はよく伸長し,付着器形成はほとんど行なわれなかった。
4) 分生胞子の発芽および付着器形成の状態について見ると,形成2日目の分生胞子は20℃下において2時間後に発芽を始め,4-6時間後に付着器を形成する。しかし,8-12時間後には付着器は再び発芽して菌糸を生じて伸長し,24時間後にはさらに分枝した。
5) 15℃においては分生胞子は24時間後に発芽するが,なお顕著な発芽管の伸長および付着器形成を示さない。しかし48時間後において付着器の形成が認められた。20℃では発芽は良好であり,かつ発芽管の伸長および付着器形成もきわめて良好であった。25℃においては単一胞子から2本の発芽管を生ずる場合をしばしば認めたが,その一つには付着器が形成され,他は栄養菌糸として伸長する場合が多かった。一般に25℃における発芽管の伸長は15°および20℃にくらべきわめて良好であった。30℃における分生胞子の発芽は多くは発芽管型の発芽を示した。

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