日本植物病理学会報
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アカクローバ茎割病に関する研究
第3報 抵抗性を異にした寄主組織への病原菌の侵入過程
佐久間 勉島貫 忠幸
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1970 年 36 巻 4 号 p. 250-253

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抄録

K. caulivora菌のアカクローバ植物への侵入過程を抵抗性および罹病性個体間の比較において顕微鏡観察を行なった。
1. 抵抗性および罹病性個体葉柄上における病原菌分生胞子の発芽率には明瞭な差異は認められなかった。
2. 侵入の際に付着器および菌糸塊の形成は認められなかったが,若干先端が太くなる傾向にあった。
3. 侵入後菌糸は細胞間げきを迷走するが,吸器を細胞内に挿入したり,直接菌糸が細胞内に侵入することはなかった。
4. 菌糸は篩部内でさかんに増殖したが,導管内にはごくまれにしか認められなかった。
5. 抵抗性個体,罹病性個体間で次の点において差異が認められた。
罹病性個体:水浸状進展性の病斑が接種6日以降に発現する。切片観察によると菌糸は篩部組織内に侵入したのちさかんに分枝し,多くの隔膜を形成する。この時期になると菌糸の太さは2.5-4μから8-12.5μと約3倍になり篩部を崩壊する。
抵抗性個体:黒褐色止り型病斑を形成する。切片観察によると2-3細胞層が黒褐色となり凝固している。抵抗性個体の特徴の一つとして,小葉柄が罹病する場合がある。これらは黒褐色止り型病斑であり,篩部内に太型の菌糸が認められたが,その周辺は黒褐色の組織に囲まれ急速に進展することはなく小葉柄部分に極限される。
6. 進展性,止り型病斑の別なく,病斑組織周辺の健全細胞間げきに菌糸の存在が確認された。

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