日本植物病理学会報
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局部病斑植物の接種葉内でのタバコモザイクウイルスの増殖様式とえそ病斑の質との関係
大沢 淳山口 昭
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1970 年 36 巻 4 号 p. 254-259

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抄録
TMVによって局部病斑を生ずる4種の宿主を用いて,接種葉上に生ずるえそ斑点の質(色・形・大きさ)と接種葉内でのウイルス増殖様式との関係を比較した。
用いた宿主の接種葉内では,いずれもTMVの増殖が先行し,そのあとでえそ斑点が目に見えるようになった。すなわちウイルスの侵入増殖があってのち初めて細胞の褐変が起こるものと考えられる。病斑の形成に先だつウイルス検出の早晩によって,宿主は二群に分けられた。ウイルス検出時期の早いものにN. glutinosa D. stramoniumおよびN. tabacum var. Samsun NNがあり,おそいものにP. vulgarisがある。
接種葉内でのTMV増殖曲線から,増殖様式はA, B2型に分けられた。A型はTMV全身感染宿主であるN. tabacum var. Samsunにみられる型で,斑点出現後に増殖停滞期を示さず,S字状曲線を描く。B型は局部病斑宿主に特徴的な型で,斑点出現後に明瞭な停滞期を示す。B型を示すもののうち,病斑の数および大きさの増加が,病斑形成後まもなく停止するインゲン,グルチノザでは,この停滞期が長い。これに反して,停滞期の短いSamsun NN,ダチュラでは,病斑の数および大きさの増加が感染後期まで続き,ときにはA型の増殖曲線を示すこともあった。すなわち,各宿主の接種葉内でのTMV増殖様式と病斑の質との間には一定の相関が認められる(第1表)。
接種100時間前後におけるウイルス回収量は,インゲン,グルチノザ,ダチュラ,Samsun NNの順に大きく,この順序もまた斑点の質に対応していると考えられた。
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