日本植物病理学会報
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Botrytis cinerea Pers.の古い分生胞子の糖類による発芽の復活
白石 雅也福富 雅夫赤井 重恭
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1970 年 36 巻 5 号 p. 297-303

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抄録

本報は形成後7日以上を経過して発芽力を失ったBotrytis cinereaの古い分生胞子に糖類を添加して,発芽,発芽管伸長,付着器形成ならびに病原性などの復活について実験した結果である。
1) 分生胞子形成後10日以上を経過し,蒸留水中における発芽力を消失した古い分生胞子も,10-2-10-3Mの各種糖類溶液中では発芽力,発芽管伸長,付着器形成ならびに病原性を復活した。かかる効果は形成後40日を経過した分生胞子においても認められた。各種糖類とも10-5M以下の濃度ではかかる効果は見られなかった。
2) 分生胞子の発芽力の復活効果は単糖類のグルコースおよびフラクトースできわめて高く,80-90%の発芽率を示し,発芽管伸長,付着器形成ならびに病原性なども促進した。マンノース,ガラクトースおよびキシロースなどでは,いずれに対する効果も低かった。アラビノースは発芽を促進したが,付着器形成は促進しなかった。
3) 複糖類においては,シュクロース,マルトース,ラクトースの順に発芽,発芽管伸長,付着器形成および病原性の復活効果が認められた。多糖類では,デキストリン,イヌリン,スターチの順に発芽,発芽管伸長,付着器形成ならびに病原性が復活したが,単糖類および複糖類に比べるときわめて低かった。
4) 発芽管伸長については各種糖類の溶液とも10-2Mでもっとも良好で,10-3Mではやや低下した。
5) 付着器形成および病原性はキシロース,ラクトースならびにアラビノースを除くと,各種糖類とも10-3Mがもっとも良好で,10-2および10-5Mよりもまさっていた。

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